人によっても異なると思うが、治療中はやはり辛い。
副作用を中心に心身ともに削られる日々が続く。
ただ、毎日24時間そういうわけでもなく、治療の休養日や体調が良い日など、時間を持て余すことは多いのも事実である。
究極的にヒマになることもある。
そんな時に少しでも楽しみを見つけられると、精神的には安定してくるものである。
私の場合の精神安定剤をいくつか紹介しよう。
まず、入院途中から書き始めたこの手記である。
文章を書くのが好きだった私だが、治療が進むに連れ確実に辛い状態が続くと思い、気を紛らわすためのカンフル剤として日々の闘病日記を書き始めた。
途中、治療がきつくて、筆が進まないこともあったが、頭を使い手を使うこの作業は、とても良い気晴らしになった。
また、家族や同僚達が喜んで読んでくれることもとても嬉しくモチベーションになった。
記録を残す意味でも良いことだと思う。
続いては動画。
動画はAmazon PrimeやYouTubeなど、有料無料問わず、様々なチャネルがあるので、いくらでも見ることができる。
幸い、病院内のWi-Fi環境が良かったので、ストレスなくインターネットは接続できた。
先に書いた通り、主にスポーツを視聴し何度も感動させられた時間も、メンタルを正常化させるには十分なツールだった。
しかし、私が狂ったように見ていた動画は、大食い・早食いの番組だった。
断食の時も、吐き気が凄い時も、不思議なことに食事の動画だけは食い入るように見ていた。
とにかくおいしいご飯が食べたくてしょうがなかったのかもしれない。
こういうヒマな時こそ、普段やれないことをやりたかった。
くだらなくても楽しめるものはないかと考えた。
若かりし頃、お金も無いからよく懸賞に応募して、当たったのが嬉しかったのを思い出した。
懸賞への応募である。
登録したり打ち込んだりは少々面倒だが、時間の数だけ応募できるので、当たった時を妄想しながら楽しく応募していた。
宛先はいつも家族。
妻や子供の嬉しそうな顔を頭に描きながら楽しんでいた。
かなりの数を応募したと思うが、今のところ当選の連絡はない・・・。
もう一つは、コーヒーとシャーベット。
これは私の大きな精神安定剤だった。
元々コーヒーが大好きだった私だが、体調が良い日は、病室を出て手作り感のある自動販売機まで歩いてコーヒーを買いに行った。
とても美味しかった。
あのささやかな苦味と甘味が治療中の辛さを香りとともに逃がしてくれた。
治療の影響によって味覚が大きく変わったり、極度の食欲不振に陥ることもあった。
そんな時は、ブドウのアイスシャーベットが最高に美味しかった。
これも同じ自動販売機に売っていた。
少々冷たいが、壊れ切った胃腸の中をさっぱりした清涼感が駆け抜けていく。
気分転換には持ってこいだった。
それ以外にも、株をやってみたり、新規ビジネスを考えてみたり、ゲームをやってみたり。
日常ではやらないことを思いっきり堪能しようと心掛けた。
42歳にして、こんなことができる人なんてほとんどいない。
ある意味では贅沢である。
治療のご褒美にやりたいことをとにかくやることが最高の気分転換になる。
今こそ、好きなことをワガママにやり尽くす時間だ。