最近馬主仲間と話すことに、クラブ馬が強すぎだねということがあります。

個人馬主がJRAで使うのに立ちはだかるのがクラブ法人の馬で、確かにめちゃめちゃ強いです。
そこで今回はどうしてこんなにクラブ馬が強くなったのか、なってしまったかを掘り下げてみたいと思います。

と言っても軽い内容ですので、お気軽にお読みください😊


常々私は競馬に対して、或いは馬主をやるに当たって考えていることが1つあります。

大前提の様なものなのですが、

それは「競馬は相対的な競争」だと言うことです。

レコード勝ちでも、凡戦と後に言われるレースだとしても賞金は同じです。

どんなレースにも勝つ馬がいて負ける馬がいる。

出走する以上、どれかの勝ちは保証されていて競馬新聞に載っていない馬が勝つことは絶対に無い。

ギャンブルでは良くこれを場の保証と呼んでいます。

馬主も同じ。

他に負ける人達がいるから、自分が勝てるわけです。


少し時間を戻して1999年。

アドマイヤベガが日本ダービーを勝つのですが、これがノーザンファームのダービー初優勝。

今から約21年前のことです。

21年前と言えば結構前なんですが、現在の状況を見るにノーザンファームはもう少なくとも50年は競馬界を支配している様に感じます。
でもまだ21年なんですね。

その後10年間はセレクトセールにキンコンカン(金子、近藤、関口各氏)と云われた強烈な個人のバイヤーが存在し、サンデーサイレンス産駒を主役に市場が育って行きました。

全員日本ダービーは勝利しています。
ノーザンファームの成功はそのままセレクトセールの成功でもありました。


そして次の2010年代。

ノーザンファームは(おそらく)考えたのでしょう。

いつまでもセレクトセールでの個人馬主に頼っていると、いつか来る不景気に生産馬が捌き切れなくなってしまう、と。

この契機は東日本大震災だったのではないでしょうか。

改革は経営に余裕のある時にしか出来ません。

そこで力を入れたのが、クラブ法人、つまり競走馬ファンドです。

セレクトセールがいわゆる富裕層ビジネスであるならば、クラブ法人は小口のコンシューマビジネス。

来たるべき馬が売れない時代を見据えての先手です。

ノーザンファームの生産頭数は1000頭以上いますので、そのうちの約半数400頭程度がこの形で売れれば経営はさらに安定します。

元々存在していたサンデーサラブレッドクラブ、キャロットクラブに加えて傘下にしたシルク、グリーンを加えればこの数は達成出来ます。
そして販売したクラブ馬達に今までセレクトセールの収益を再投資して構築した育成スキームを適用していくことでレースでの成果もどんどん挙がる。

すると会員は翌年の募集情報を求め、販売速度が上がり戦略も立てやすくなる。
いつしか需給のパワーバランスも優位になる。

極端な話、セレクトセールで仮に1頭も売れなくても(あり得ませんが笑)ノーザンファームの屋台骨は揺るがないのではないでしょうか。

これが構築されたのが2010年代です。


そうすることで何が起こったのか。

ようやくここからが本題です。
相変わらず前置きが長くてすみません。

まず、ノーザンファーム産のクラブ馬血統に詳しい一口愛好家がものすごく増えました。

一口出資という形で競馬に触れる機会が増える、このこと自体は素晴らしいことだと思います。
今では種馬の特徴から馬体診断まで、ありとあらゆる情報がこのアメブロの中だけでも数多く得られます。

セレクトセールも相変わらず売れ続けています。
何と言ってもノーザンファームの育成は優秀ですから、購入馬を育成して貰える付加価値は大きなアドバンテージです。

ノーザンファーム産ということは勿論、ノーザンファーム育成というもののブランディングが進んだ10年であったと思います。


新規の馬主も元々は一口出資経験者、という方が増えました。

そうなると馬主として馬を買うことになった時に、入口をノーザンファームに求める方も必然的に増えていきます。
逆にノーザンファーム以外の、ましてや日高の馬では買った後にどうしたら良いか分からないという馬主さんの話も聞いたことがあります。

ノーザンファーム育成は施設も人材も成果も素晴らしいのですが、1つ困ったことがあります。

それは厩舎の馬房をクラブ法人と分け合うということです。

ノーザンファームの取引先である厩舎には当然にクラブ馬がいますので、入退厩のローテーションはクラブ法人と共有になります。
そのため、自分の馬であるにも関わらずいつ次入厩出来るかは差配できない、という事態が多発します。

また育成過程や入厩の判断、レース選択といったオペレーションもおまかせになる傾向があるので、馬主として馬そのものの勉強にならないということが出てきます。


これはお金を出してオペレーションはおまかせで、それでもって勝てれば良いやと思う馬主さんにとってはデメリットではありませんから、一概にダメということにはなりません。

日高の馬を購入したり、ノーザンファームのオペレーションが及ばない地方競馬場で使っていく時にどうしたら良いか分からないということにはなりますが。

冒頭の話に戻ると、この様にクラブ馬の運営に慣れてそれが当たり前だと思う馬主が10年以上も増え続けたらどうなるか、ということに想像力を巡らせてみましょうというのがこの文章の主題です。

相対的に、オペレーションが出来ない馬主が増えていくと思いませんか。

馬自体のことについても、クラブの会員情報で得る以外のことについては中々勉強できないのではないでしょうか。

良い悪いではなく、「そういう傾向」になっているということを考えるのは大切だと思います。

クラブ全盛時代、楽しいけれど罪な話だと思っています。


クラブ出資から地方競馬の馬主免許を取って、共有からスタートするという方々もこの数年増えてきました。

私も今でも全然勉強中ですが、馬主にとって最初の壁がこのオペレーションです。

育成、厩舎、休養先と自分のホットマーケットであるラインを作って行くのが大変なんです。
しかし構築出来ると逆に新しい馬主が参入障壁になる部分なので、やはり相対的に勝ちやすくなります。

色んなことを考えて、試しての繰り返しですが自分なりのやり方を構築出来たら馬主は本当に楽しいです。

頑張って行きましょう。