ソーセージ考 | オーバー環の音楽人生

オーバー環の音楽人生

役職定年になった途端にコロナ禍、料理人も続けつつ音楽活動にハマっています。

夏に冷たいビールとアツアツに焼けた、または茹でたソーセージの
組み合わせは格別ですね。

朝食やお弁当などに活躍する大手メーカーのものは置いといて、
今はスーパーなんかでも各地ご自慢の地ソーセージがけっこうな
種類置かれてたりします。

最近はちょっとご無沙汰してますが、私もけっこうなこだわりを持って
ソーセージを手作りします。
基本的にウィンナーでもフランクフルトでも、豚肉の粘り気が一番強い
喉肉や腕肉をできるだけ新鮮なうちにミンチ状にして、それをまた更に
ペースト状に練って塩やシーズニングやお酒などを加えて腸に詰める、
ただそれだけの作業なのですが、一切添加物を使わずに「パキッ、プリッ」
なんて食感のソーセージを作るのは至難の業。

「パキッ」は皮を噛み切る擬音ですが、大手メーカーの人工コラーゲン
ケーシングだからこその人為的噛み応え。
ウィンナー系は羊腸、フランクフルト系は豚腸を使用しますが、皮が破れるか
破れないかの絶妙な詰め加減だとしても「ブチッ」がせいぜい。

「プリッ」は中身の噛み応えの例え、これは肉の蛋白質と脂肪分が上手く
飽和状態に保たれて初めて実現する食感。

挽肉をさらに練る時に温度が上がったら即アウト、茹でる時にお湯の温度が
80度近くまで上がってもアウト。
ボソボソパサパサのあまりに悲しいものになっちゃう。

大手メーカーがそれを解消するために使ってるのが結着剤や増粘剤、
もちろん手作りでもそれを使用するのは可能だけど、だったら何のための
手作りよ、って話。

度重なる失敗によるソーセージの死屍累々を乗り越えて、なんとか人様に
喜んでいただけるソーセージを作れるようになりましたが・・・

ある日、花巻の白金豚を使用した「ハンズクリエイト社」さんのソーセージを
いただいて、「まんまオレの目標!」と目からウロコが落ち、それ以来
自らソーセージを手作りするという苦行からしばし開放されております。

工場も見学させていただきましたが、工場長に「これ1.1%ですよね」と
聞いたら「そうなんですよ、教科書はみんな1.3%なんですけどしょっぱすぎて・・」
そう、塩分濃度の話で意気投合。

もちろん液薫(スモークフレーバーの液に漬けて香りを移す)じゃなくて
温度管理の行き届いたスモーカーで燻し、昔は惜しいことにこのままで
生ソーセージとして出荷してたのですが、やっぱり加熱の失敗による劣化を
懸念しておりました。

で、社名を変えた現在は下茹で加工して出荷なさってますので、ご家庭で
少々手荒く茹でようが焼こうが、劣化は最小限抑えられるはず。

我々料理人もそうですが、こういう出来るだけ本場の仕事に近づきたい
人たちがよく受けるのが「添加物使ったって美味けりゃ、日本好みの
味付けでいいじゃん」というものですが、それに対する答えは、
「それは我々が日本人だからそうするのだ」って逆説的なものになっちゃう。

モノを作ってる人だったらもれなく膝ポンしてくれると思うんだけど。