『極夜の灰』 サイモン・モックラー | 固ゆで卵で行こう!

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1967年末、北極圏にある米陸軍の秘密基地にて火災事故が発生。
1名は顔や両手などに大火傷を負いながらも生還するも、2名の隊員の遺体が発見される。その遺体のうち1体は人間の形を残しているものの、もう1体は灰と骨と歯の塊と遺体の状況が違っていた。
調査依頼を受けた精神科医のジャックは生き残った兵士コナーに聞き取りを行うが、コナーは事故の記憶を失っており…。




読ませ方、実にうまいなぁ。

極北の秘密基地で起きた火災事故で2名が遺体で見つかり、1名が顔や両手などに大火傷を負いながら生還。

発見された2名の遺体は、同じ火災でありながらその遺体の状況が違っているという謎が。

果たして何が起きたのか、CIAに依頼された精神科医のジャックが、生き残った兵士のコナーから聞き取り調査を行います。

しかし事故に関する記憶は全くないというコナー。

それでもコナーの供述から少しずつ明らかになっていく事柄とそれが示唆しているものが気になりますし、コナー自身も何者かに危害を加えられるなど、謎が謎を呼ぶ展開は先へ先へと読ませます。

話そのものは読み終えて振り返ると、実はオーソドックスな展開が待っていたのが分かりますし、真相もミステリーを読みなれていれば予想しやすいものだったかも。

この辺り、一周回って(?)そんな単純なものでは無いのかもと、逆にミスリードしてしまう読者もいるかも知れませんね。

ちなみに自分は思い浮かびもしませんでしたが、これが純然たる本格ミステリーなら疑って読んでいたかもと思うのは負け惜しみでしょうか(笑)。

ともすれば地味な聞き取り調査がメインの前半も少しずつ真相に辿り着いていく様子は緊張感あって飽きさせませんし、終盤は一転して冒険小説のような趣きの熱い展開が待っていて一気読みです。

悪く言えば手垢のついたネタではあるかも知れませんが、そんなネタでも読ませ方次第というお手本のような作品で、一級品の冒険スリラーでした。