重層下請構造の実態を踏まえた建設業において、担い手確保と持続可能な建設業を実現するための課題を説明せよ。

 

■回答

建設業が持続的に発展していくには、新規入職を促進し、将来の担い手の確保・育成を図っていくことが不可欠。

同時に、現下の課題である資材価格高騰や時間外労働規制に適切に対応しつつ、適正な請負代金・工期が確保された請負契約の下で、適切に建設工事が実施される環境づくりも欠かせない。

 

解決の方向性

①請負契約の透明化による適切なリスク分担

②適切な労務費等の確保や賃金行き渡りの担保

③ 魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性の向上

 

具体策

1.請負契約の透明化による適切なリスク分担

(1)契約における非対称性の解消 

①受注者によるリスク情報提供の義務化 ・見積り時等に、建設工事に関するリスク情報の受注者から注文者への提供を義務化

②請負契約に予備的経費等に関する事項を明記

③オープンブック・コストプラスフィー方式の標準請負契約約款の制定

 

(2)価格変動等への対応の契約上での明確化

①請負代金の変更について規定された民間工事標準約款の利用促進

②価格変動に伴う請負代金の変更条項を契約書上明確化 ・法定記載事項として「価格変動等が生じた場合に請負代金額等をどのよう に変更するかについての定め」を明記

 

(3)当事者間のコミュニケーションと請負契約の適正化

①当事者間での誠実協議

 ・請負代金や工期に影響を及ぼす事象が生じた場合に契約の当事者間で誠実に 協議を実施 

②民間事業者への勧告等

 ・不当に低い請負代金での契約締結について、国土交通大臣等の勧告対象に、 公共発注者だけでなく民間事業者も含める

 ・不適切な契約是正のため許可行政庁の組織体制を整備

 

2.適切な労務費等の確保や賃金行き渡りの担保

(1)標準労務費の勧告

 ・適切な工事実施のために計上されるべき標準的な労務費を中央建設業審議会が勧告

 

(2)受注者における不当に低い請負代金の禁止

 ・労務費を原資とする廉売行為の制限のため、受注者による不当に低い請負代金での契約締結を禁止し、指導、勧告等の対象とする

(3)適切な水準の賃金等の支払い確保のための措置

・建設業者に、労働者の適切な処遇確保に努めるよう求める 

・標準約款に賃金支払いへのコミットメントや賃金開示への合意に関する条項を追加

 

3.魅力ある就労環境を実現する働き方改革と生産性向上

(1)適正な工期の確保

①受注者による著しく短い工期の禁止 

②WLBを実現する働き方改革に関する施策検討 

・工期に関する基準等の周知に加え、先進的取組の普及方策を検討

 

(2)生産性の向上

 ①建設工事現場を適切に管理するための指針の作成

 ・ICTの活用等による現場管理のための指針を国が作成、特定建設業者に同指針に 即した現場管理に努めることを求める

 ②監理技術者等の専任制度等の合理化

 

※今後、重層下請構造の実態を踏まえた建設業許可の合理化、繁閑に応じた労働力の需給調整や多能工の評価のあり方、建設業の許可を要しない小規模工事の適切な管理についてもさらに検討。

 

■自己評価

中央建設業審議会・社会資本整備審議会基本問題小委員会中間とりまとめ(R5.9)の内容です。

施工計画でというより必須Ⅰで、出題されそうな感じです。

 

建設業の持続可能性の確保については、時間外労働規制の開始により、下請けの役割が多い中小建設業者は、経営が厳しくなっていると聞きます。

でも、大規模災害が発生して、迅速が対応をとるには、こういった地域に密着している中小建設業者が存続していないと、ダメなので、こういった業者への対策が必要ということなんだと思います。