先日、頭痛がするような記事がまぐまぐニュースから流れてきて、書き手が大村大次郎氏だったので、なるほどガセネタというのはこうやって流れるのだなあと思いました。


 一応魚拓は貼っておきますが、時間の無駄なので読む必要はないかもしれません。


(魚拓)恐ろしい電力会社の闇。日本から電柱がなくならない酷すぎる理由
https://web.archive.org/web/20181002010340/https://www.mag2.com/p/news/372140

 確かに電柱の地中化は進めたいところではありますが、進まない理由は「電力会社の闇」でもなんでもなく、コストが高く、道幅が狭く、トランスを多数路上に置かなければならないという事情です。


 また、大村某氏の内容はコスト負担についての解説も間違っており、日本で電力価格が高い理由も事実と違います。どこから間違いを糺していいかもわからないので、すでに繰り返し議論されている内容ではありますが昨年国土交通省が国会国土交通委員会向けに作成した資料でも見ておいていただければと思います。


 なぜ電柱の地中化が進まないかの課題については、もう20年以上議論が積み重ねられており、この資料でほとんど内容は網羅されているので、ご一読いただければ理解はしやすいかと思います。

 大村大次郎氏の言説が如何に適当で間違っているかも理解できます。


無電柱化の現状(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/chicyuka/pdf03/09.pdf

 さて、本題は「なぜ電力会社はここまで悪者にされるのか」という点です。


 もちろん、東日本大震災に伴う津波で発生した福島第一原発事故は、悲惨な事故であったこともさることながら、福島県の近隣住民の生活に多大な悪影響を与え、また、日本のエネルギー行政においても原子力発電に対する否定的な国民の考えが増えたことは間違いありません。これは一重に我が国経済産業省の安全を軽視した原子力行政と、東京電力の組織的な失態であったことは言うまでもないことで、地域住民の生活に対する補償や福島県に対する風評被害の解消、さらにはLNGなどの輸入に頼らざるを得ない火力発電偏重のエネルギー行政の是正など、やらなければならないことはいまなお山積しています。


 経済産業省も東京電力も、補償は引き続き行い、事故後の処理について今なお重い責任を負っていることそのものに変わりはありません。


 しかしながら、エネルギー調達は産油国ではない日本にとって重要な安全保障の枠組みのひとつであり、同時に東京電力は首都圏ほか4,000万人の日本人に電気を供給している重要なインフラ会社です。事故の賠償や被災者への補償は進めていく必要がある一方、いつまでも事故を引きずって大村氏のような闇だ陰謀だというネタにしておいて良い会社でもないように思います。


 東京電力も負い目があるとはいえこういうガセネタを良く我慢して放置しているなあと思いますし、主に首都圏やその周辺に住む日本人が依存しているインフラ会社について、もう少しきちんと対話し、信頼し、その貢献も担う義務もきちんと理解したうえで、ニュートラルに国民社会に改めて迎え入れるべきなのではないでしょうか。


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