#277 釣り禁止の池で鯉を持ち帰る法 ~「昆陽の御池」~ | 鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」
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鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

1956年に落語に出逢い、鑑賞歴50余年。聴けばきくほど奥深く、雑学豊かに、ネタ広がる。落語とともに歩んだ人生を振り返ると共に、子や孫達、若い世代、そして落語初心者と仰る方々に是非とも落語の魅力を伝えたいと願っている。

大の釣り好きである甚兵衛と甲男が釣り談義をしている。と言っても、甲男は釣りに興味はなく、「釣り人は閑人の馬鹿だ」と貶す。「恵比寿さんは馬鹿か? 太公望は馬鹿か?」と甚兵衛が言い返し、甲男がぎゃふんと言わされ、話が()()(いけ)に及ぶ。

 

兵庫県・伊丹市に実在する昆陽池は鯉が水を隠す位に棲息しているが、殺生禁断の池で魚釣りは堅く禁止されている。見廻りの役人が監視しており、禁を破った者は打ち首に処するという定めがあった。ところが、釣り好きの甚兵衛は監視の役人に見咎められても堂々と釣った鯉を持ち帰ることを何度も繰り返しているという。甲男がその方法を訊き出した。

 

その方法は、役人に見つかった時は逃げないで「釣り禁止は知っていましたが、臨終の床に居る老母が最後に鯉を食べたいと言うので禁を破ったものです。母の死後、自首する覚悟でいます」と言う。役人も人の子、親孝行には文句は言えないもので、「今回は持ち帰れ、二度と釣りはするなよ」と御咎めなしとなる。しばらくして役人が月番交代となったのを見届けてこの方法を繰り返すというものであった。

甲男は鯉を一杯釣ってそれを売ってひと儲けをしようと考えた。「協力しなければ密告するぞ」と甚兵衛を脅して協力を取り付け、二人は昆陽池へ赴いた。

 

釣り糸を垂れると、腹を空かした鯉が面白い位に食いつき、素人の甲男のバケツでさえたちまち鯉で一杯になった。甲男が大騒ぎをしながら釣るので最初は一緒に釣っていた甚兵衛は少し離れた場所へ移った。

 

しばらくして、見廻りに来た役人が甲男を見つけてこれを咎め、ひっ捕らえようとした。甲男は甚兵衛から教えられた通りに言い訳をし、役人はこれを見逃してくれた。甲男は甚兵衛を放っておいて、早々に嬉々として家路に就いた。

 

役人は次いで、近くで釣りをしている甚兵衛を見つけ、摘発しにやって来た。離れた所から、甲男の言い逃れを聞いていた甚兵衛、「あのアホと同じ手は使えない、どうしたもんか?」と独り言を言う。さて、どのようにしたでしょうか?…私の持ち時間が来たようです。

 

 親孝行と神信心には誰も文句が言えないのが人情である。釣り人はこれを利用したわけであるが、特に江戸時代においては両方とも価値があるものとされていた時代背景があった。

さて、甚兵衛はどんな対応をしたのか? 聴き手で考えろというちょっと変わった噺である。

 

 

 

昆陽池は奈良時代に農業用のため池として作られたもので、今は動植物が観察できる伊丹市営公園となっている。池の中に日本列島を模した人工の島があるが航空機からでないと観ることはできない。散策用の公園としては趣が少なく、今一つの感がある。

 

 

 

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