#276 商家の娘と手代の恋物語 ~「おせつ徳三郎」~ | 鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」
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鑑賞歴50年オトコの「落語のすゝめ」

1956年に落語に出逢い、鑑賞歴50余年。聴けばきくほど奥深く、雑学豊かに、ネタ広がる。落語とともに歩んだ人生を振り返ると共に、子や孫達、若い世代、そして落語初心者と仰る方々に是非とも落語の魅力を伝えたいと願っている。

大店の娘・おせつと手代・徳三郎が恋に落ちた。所詮叶わぬ恋であったが二人は花見などのデートを重ね、奉公人の女中と小僧はこれを支援した。知らぬは主人ばかりなりであったが、ようやく感付いた主人は小僧を問い詰め、二人の仲を訊き出した。小僧からすべてを聞いて激怒した主人は徳三郎に即刻お暇を出して二人の仲を引き裂き、おせつに婿を取る話を進めた(ここまでの前半部分を「花見小僧」という)

 

(はままつフラワーパーク・静岡 2010年)

 

やがて縁談がまとまり、おせつが婿を迎える婚礼の日が来た。これを伝え聞いた徳三郎は刀屋へ刀を買いに行く。刀屋は、徳三郎の思い詰めた様子に彼が人を殺そうとしているのを察知し、これを思い止まらせようと説得する。その時、表通りで人探しの声がする。訊くと、おせつが婚礼の席から逃げ出したのだと言う。徳三郎はおせつを探しに外へ飛び出す。二人は深川木場でばったり出会って心中を決意し、「南無妙法蓮華経」とお題目を唱えながら、抱き合って傍の川へ飛び込んだ。だが、そこは木場、材木が一杯浮かんでおり、飛び降りたのが筏の上だったため死ねなかった。「徳や、死ねなかったの?」「お材木(お題目)のお蔭で助かった」(この後半部分を「刀屋」という)

 

「おせつ徳三郎(おせつとくさぶろう)」という人情噺で、前半が「花見小僧」、後半が「刀屋」と呼ばれている。全編通せば長くなるので、別々に高座に掛けられることが多い。

 

この噺のサゲの「お材木(お題目)のお蔭で助かった」は「鰍沢(拙ブログ#130参照)」とまったく同じサゲとなっている。「鰍沢」の場合は逃げようとして飛び込んだのだから“助かった”がフィットするが、この「おせつ徳三郎」では死のうとしたのであるから適切とは言えない。「徳や、なぜ死ねないの?」「水がないので死ねません」「そうなの?じゃあ水をお飲み」と世間知らずのおせつの無邪気ぶりを表現した粋なサゲが昔はあったそうだが、現在には伝わっていないようである。

昔の人は信心深かったと落語を聴く度に思う。二人が飛び降りた深川木場はその頃は貯木場であった。

 

(夙川公園・兵庫 2014年)

 

 

(鶴山公園・岡山 2003年)

 

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