殺人が身近にある話① | 楽園綺譚

楽園綺譚

ホノルル在住のライターです。執筆記事やハワイの日常などをUPしています。何かありましたら hanacoshou@gmail.com にご連絡ください。


夫の実家の近所。ある平和な秋の日。


住んだことがあったり、家族に出身の人がいたりと、メインランドに縁のある方の中で「アメリカでは日本よりも確実に殺人が身近にある」と実感する経験をしたことがある方は多いかと思う。

 

今回は、私が殺人の身近さを実感した時の話をしたい。シアトル郊外にある夫の実家に滞在した時のこと。リビングで、夫の母が近所の同年輩の女性とお茶をしながら雑談をしていた。彼女たちの会話はドアを開け放しにして隣室にいた私の耳にも届いた。


内容はとりとめもないことで、日本人と同じように「近所の〇〇さんが離婚したらしい」とか、日本とは少し違うが「△△さんちの息子はヘロイン中毒を治して社会復帰できたらしい」などの噂話だった。


これは楽しいリスニングの勉強だな〜と思いながら聞いていたら、近所の女性が「1ブロック向こうの◇◇さんの娘さん、知ってる?殺されてバラバラの死体で見つかったんですって」という「噂話」を始めた。えっ・・・そんな軽いノリでそんな話を?と驚きながら耳をそばだてて聞いてみたところ、大体こんな内容だった。

 

◇◇さん宅の20代前半の娘さんが、某有名出会い系サイトである男に会った。その男とフットボールの試合を見に行った後、行方不明になったので家族が捜索願を出した。1週間後、その男に殺害され、バラバラにされた上で男の自宅の地下にある冷凍庫に入れられていた彼女の遺体が発見されたというのである。

 

夫の母はアニメ『若草物語』の母のような感じで「なんて痛ましいことでしょう・・・ご家族はどんな気持ちかしら」というようなことを言った。そしてつかの間しーんと静かになった後、「・・そういえば私の甥がこの前株で大損したのよ・・・」と、すぐに違う話が始まった。


つまり殺人が「離婚」や「株で大損」というトピックと限りなく並列の噂話として扱われていたのである。


② に続く


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