「土地の味わい、そして頻便と勤勉との因果関係」…外来化学療法12クール目 | 駱駝ん町のブルース食堂

駱駝ん町のブルース食堂

お酒と音楽とカレー

序、

状況:大腸がん第4期。いわゆる「ステージ4」。

転移先:原発巣そばリンパ、肝臓2か所、肺。

2016年06月、大腸原発巣及びリンパの開腹手術。大腸管30センチ摘出。

07月の療養期間を経、08月より化学療法=抗がん剤治療開始。

プロトコル:mFOLFOX6+アバスチン。2週間で1クールを繰り返す。

初日の通院にて半日日帰り入院で吊るし点滴、終了後、風船点滴を装着し、帰宅する。

3日目夕方に風船点滴終了、通院にて針を抜く。

開始から一週間後の8日目に、検査と診察を行う。

 

現在、12クール目突入。

 

8クール中に行った効果測定が良好で、腫瘍マーカーは正常値圏内に下降。CTやPET-CTでは新たな転移~再発も認められず、転移先の肝臓と肺の残存腫瘍3か所も明らかに縮小が観察された為、現在の治療法の有効性が結論付けられた。

先ずは小さい方の肺の転移癌腫瘍を抗癌剤で潰す事を目標に、同治療法の継続を決断。

気持ちを新たに休まず、9クール目から続行開始。

 

一、

年末年始は、丁度、前11クール目の計画療養期間中。

北国の実家に帰省した際、町内会隣組の大先輩方の催す定例飲み会兼忘年会にお呼ばれした。

 

勧められた地酒「鷲の尾」、杯を傾ければ、此れが何故かやたらと美味い。

「あれ…?此の酒、こんなに旨かったっけ?」

 

全国区的には全く有名ではない銘柄なのだが、価格的にも安い淡麗辛口の庶民の味わいは、持ち合いの飲み会では定番的な存在だろう。

 

一方、私は4合瓶で1500円程の東京の土産物の純米吟醸の地酒を持って行ったのだが、どう云う訳だか、この1升=10合で同じく1500円程度の普通種の地酒「鷲の尾」の方が、東京の純米吟醸を遥かに凌ぐ旨さなのである。

 

「どうだい?」

鷲の尾の方が全然美味いです。スミマセン…。

「ハハハ」

 

値段が倍以上異なる酒で、何で安い方が旨いのか。

そして散々飲み慣れている酒なのに、如何してこんなにも美味いのか。

 

二、

此処で、11月に赴いたシンガポールでの出来事を思い出した。

向こうで飲むシンガポールブランドのビール、「アンカー」や「タイガー」、此れが猛烈に美味くて本当に嬉しくなる程であった。以前はアンカーの方がお気に入りであったが、今回はタイガーにやられてしまった。在住の友人が、

「癌ステージⅣの人間がこんなに飲んで大丈夫なのか?」

と心配した程に、ガブガブとタイガーを飲み続けた。それだけ美味いのだから仕様がない。

 

日本でもタイガーは輸入ビールコーナーで売っているお店も多く、そんなに旨いのなら、日本でも飲めば好さそうなものだが、体験的にキリンやサッポロの方が旨いと知っているので、わざわざ買っては飲まない。

そうなのだ。東南アジアの、シンガポールの気候風土と料理あってこその、其の土地の味わいなのである。

知人がやはりシンガポールに飲食店を出店しており、其処でキリン一番搾り生ビールを頂いたのだが、如何したってやっぱりタイガーの方が旨い。

 

7月には四国は徳島を初めて訪れたのだが、徳島の「すだち酎」の美味さに吃驚仰天。やはり東京でも普通に売ってるのだが、これまでピンときたことは一度もなかった。

そこで、東京に帰ってきてから、スーパーで買って来て飲んだのだが、やっぱり徳島で飲むほどの味わいを感じられず、1本で自然と止めてしまった。

 

そして北国では、北国の地酒なのだ。

 

「鷲の尾」…かつて帰省の度に、土産で買って東京に帰り、自宅で何度か飲んだのだが、此れが思ったよりも美味くない。家人の反応もあまりよくない。次第に買って帰るのを止めてしまった。まあこんなものかと思っていたりしたのだが、いやいやそうではない、逆にそんなものだったのだ。

東京で飲んだって、北国で飲むのとは味わいが変わるから、美味くなくて当たり前なのだ。

 

此れぞ正に、土地の味わい。

 

三、

と云う訳で、勤勉と頻便、全く関係ありません。

頻便と関係があるのは、其の土地の味わいの方です。

 

シンガポールでは最終日にも、観光の休憩中と云い食事時と云い、随分とタイガービールを飲んで、朝着の深夜便成田行の飛行機に乗ったのだが、此の移動中が最悪だった。

頻便が訪れたのである。

 

座席は真ん中のブロックだったのだが、1/3の確率的不幸な事に通路側ではなかったのだから、さあ大変。6時間の渡航で6回…平均で一時間に一回の割合だから堪ったものではない。

スチュワーデスの方にお願いして、席を変えてもらえば好かった。

 

さて、飛行機の便座に腰掛け、考える。

 

実は頻便、前夜も宿で寝ている間に何度も目が覚め、起き出してはトイレだった。

共通項はがぶ飲みしたタイガービール。

決して下痢ではない状態なのだが、ガスが溜まり、此れが便を小分けに追い出そうとしている感じなのだ。必ず栓となっている固体がスポンと押し出されると同時に、気体が固体を遥かに凌ぐ量でアウトプットされる。

 

ビール=炭酸=お腹に炭酸原料のガスが溜まる

 

大腸管摘出手術以降、頻便が起こり易くは為っていたものの、此処までに体質が変化した事を初めて自覚した瞬間だった。

手術の賜物?だったのだ。

 

其れ以降も、調子に乗ってビールを飲んだ其の晩や翌日に、「ガス栓頻便現象」が確認されている。やはり其の様である。

これまでにも起こっていた筈だが、普通の頻便と見分けがつかなかった。頻便自体がそんな感じでかなり身近な存在だったのだ、入院中から退院以降しばらくは。

今でも頻便自体は日常的な現象だ。退院直後に比べれば大分起こり難くは為っているし、随分馴れたとも云える。

 

「ガス栓頻便現象」は、まあ逆に云えばビールも炭酸も体を冷やすから、癌患者には元々好くないので、身体が「やめときなさい」と云って呉れている様なものだろう。

 

現在は、炭酸ではない氷無しの割ものや、焼酎お湯割り、日本酒や赤ワインと云った感じで…だけど途中でどうしてもビールを飲みたく為っちゃうんだよなぁ。

と、云った感じで、この正月帰省Uターン前日の同級生との新年会で、酔っ払って途中からビールに変えてしまったものだから、困ったものである。就寝前も缶ビールを買って飲んでいるから、尚更、如何仕様もない。

 

翌日の移動中に、やっぱり懲りない我が性分を反省する羽目に陥ったのであった。

 

と云う訳で、頻便と勤勉は無関係ですが、近便、と云えばかなり近いニュアンスかも知れませんね。日々精進致します。