全国の労働者、特に、中小零細企業で働く労働者の皆さん、私たちは労働することによって報酬を得、それによって社会で豊かに生活していくことが保障されているはずです。そのために労働基準法などの法律が定められており、その法律を実際に運用することで豊かな生活が実現されなければなりません。
 ところが現実には、中小零細企業の場合、豊かな生活を実現するには程遠い労働条件です。長時間労働を強いられているにも関わらず残業代が払われない、有給休暇も取得できない、といった状態です。 
 法律で定められていることは万人に適用されるものです。大企業にだけ適用されればよく、中小零細企業には適用されなくてよいなどというはずはありません。
 それでは、なぜ現実には、中小零細企業においては、労働基準法で定められている労働条件が適用されていないのでしょうか?
 それはまず、雇用されている労働者がその権利を主張しないからです。労働における権利は、労働者が主張することによって初めて獲得できうるものになります。
 しかし実際に主張したところで、使用者の側はそれに耳を傾けようとはしません。うるさがるだけです。耳を傾けなくても、その労働者が現実にこれまでの労働条件で労働を続けている限り、使用者は自分の耳を塞ぐだけで事が済んでしまいます。今の条件で不満なら自分の会社から姿を消してしまえ、というのが使用者の本音です。それを真に受けて転職しようとしたところで、どこの会社も同じような条件であれば、結局いまの会社で、これまでの労働条件に甘んじざるを得ないということになってしまいます。

 私は、この現状を打開する方策を思いつきました。
 その方策は、これまでの常識的な思考の枠組みを超えたものです。常識的な思考の枠組みにとらわれている限り、現状を打開することはできません。
 まず問題の根本は、使用者と労働者が二極化していることにあると考えます。労働条件というものは、現状では使用者が決めるものであって、労働者が決めるものではありません。そして使用者の決めた労働条件が適用されるのは、使用者に対してではなくて労働者に対してです。労働条件を決める主体が使用者であって、その適用対象たる労働者ではないというところに問題の根本があると考えます。
 使用者が事業で得た収益には限りがあり、それが会社の儲けと、そして労働者への賃金とに分配されます。その際、使用者が優先するのは、労働者への賃金ではなく会社の儲けです。使用者にとって労働者は、その本質において事業収益を得るための手段です。だから、労働者への賃金は、その労働力を再生産できるだけの最低限に抑えること、これが会社の儲けを増やす手っ取り早い方法です。労働者の生活をより豊かにするという目的で賃金の額を決めることなど、使用者が労働者の立場と同一でない限り、絶対にあり得ません。
 ところがここで、使用者と労働者とが統合された状態を想定してみると、事情が違ってきます。使用者と労働者とが同一である状態です。
 この場合の労働条件は、労働者でもある使用者が決め、使用者でもある労働者に適用されます。そしてその条件は、使用者でもある労働者の生活をより豊かにするという目的で、労働者でもある使用者が決めるということになります。
 そしてこの場合の会社の収益は、会社の儲けと労働者への賃金とに、バランスよく分配されます。会社の儲けが労働者への賃金よりも優先されるということがありません。使用者と労働者とが一体化していますから、双方を両立させなければならないことが自明だからです。
 ひるがえって、これまでの労働運動は、賃金向上など労働条件の改善だけを主張し、会社の儲けを考慮に入れることがなかったのではないでしょうか?それは、労働者の立場が使用者の立場とは分離していたからです。労働者は使用者ではありませんから、労働者にとって重要なのは労働条件のみで、会社の儲けが自らの関心事になることはありませんでした。そして労働者が使用者との間で、会社の儲けを考慮に入れないで労働条件の改善を交渉するのなら、使用者がそれに耳を傾けようとしないのは当然のことです。しかしそれに対して、労働者が使用者と一体化することになるのなら、当然のこととして会社の儲けをも考慮しなければならなくなります。

 使用者と労働者とが一体化すれば、これまでの問題が一挙に解決します。これを理屈ではなく、現実のものにすることを、私は提唱したいと思います。
 使用者と労働者とが一体化した事業体といっても、現実にそのようなものがあり得るのかと、疑問を抱かれることでしょう。私はかつて、そのような事業体に勤務しておりました。これについては、ホームページの「私のロスジェネ的半生~」というエッセイを御一読ください。
 (http://www.justmystage.com/home/uniontaro/)
 このエッセイの中で叙述されている、私がかつて勤務していた安全農産供給センターという事業体は、ワーカーズコレクティブの名に値する組織でした。ワーカーズコレクティブとは、まさしく使用者と労働者とが一体化した事業体のことです。ただ、安全農産供給センターの場合は、使い捨て時代を考える会という市民運動団体を母体とした、生産者会員と消費者会員とを結びつけるだけの閉鎖的な事業体です。私はこの事業体をモデルにして、一般社会に開かれたワーカーズコレクティブを設立することを提唱したいと思います。
 私の考えるワーカーズコレクティブは、まず労働者全員が株主として資金を出資する事業体です。 そして事業体のリーダーたる社長については、労働者の中から社長に立候補する者を受け付け、その中から労働者全員の選挙によって選出されます。社長候補者は選挙において、労働条件の更なる改善を労働者に約束します。そして選挙に勝利して社長に就任した者は、その任期中に、選挙で約束した労働条件の改善を実行しなければなりません。もし実行できないのなら、実行できる者にその座を譲らなければなりません。つまり次の選挙で社長は交代となります。このような民主的制度になれば、これまでの独裁的制度とは違って、必ずや労働条件の改善が実現される筈です。そしてこのような民主的制度は、労働者が株主となることによって初めて可能となります。労働者が株主であること、これがつまり、労働者が使用者と一体化しているということです。
 現代日本においては、政治の世界では民主主義が定着しています。しかし企業経営の世界では、いまだ独裁制のままだと云わざるを得ません。私は、企業経営の世界にも民主主義を導入することを提案します。

 しかし現状において、いかにして労働者が株主になれるのでしょうか?いま低賃金で雇用されている労働者には、事業創設に出資できるような蓄えはないと思われます。日々の生計を立てていくだけで精一杯の者が、どのようにして資金を獲得できるでしょうか?
 そこで思いついたのが、いま雇用されている会社から奪い取る方法です。これは、できるだけ多くの人数が、それぞれの会社で行なう必要があります。ここでも、団結することが武器になります。
 例えば、長時間労働なのに残業代が払われず、有給休暇も取得できていない労働者であれば、会社に対して残業代と有給休暇を要求する権利があります。この権利は過去二年分に適用されます。しかし在職中にこの権利を主張しても取得できません。在職中は、この権利を取得する手段を持ち合わせていないからです。しかし退職時には事情が違ってきます。会社に過去二年分の残業代を要求して拒否されたら、そのまま過去二年分の有給休暇という名目でストライキに突入します。おそらく会社は解雇という対応をしてくるでしょう。そこで失業保険の給付を受けながら、有給休暇分と未払い残業代と不当解雇慰謝料との合計額を要求する裁判を起こします。労働基準法で認められている権利なので、この裁判には必ず勝利します。その金額は、一人あたり最低でも百万円は超えるでしょう。そして裁判に勝訴してその資金を獲得できたら、それぞれがその資金を持ち寄って会社を設立できるようになります。その合計額はできるだけ多いに越したことはありません。それゆえ、より多くの資金を集めるために、できるだけ多くの人数で行なう必要があるわけです。

 全国の労働者の皆さん、このような民主主義的な事業体、つまりワーカーズコレクティブを、自分たちで出資して設立するというのはいかがでしょうか?
 特に京都府南部にお住まいの方は、私が加盟しているコミュニティ・ユニオンに加盟していただき、そうした事業体を設立する構想について話し合いたいです。下記に私のメールアドレスを記しておきますので、そこに御連絡いただいた方には、そのコミュニティ・ユニオンの連絡先をお教えします。そして一緒に、明るい未来を築いていきましょう。なにとぞ、御連絡をお待ちしております。
 (CYW00500@nifty.com)