フォールズカウムに足を踏み入れると、
怒りのような、悲しみのような・・・
謎の感情が押し寄せてきた。

 

フォールズカウムの中には、予想通り大量のモンスターが生息していた。

残らず撃破しなければ、先に進めそうにはなかった。

 

サカを撃破する。

 


スカークを撃破する。

 

私には、このガイストヴァルトを守る義務がある。
皆が毎日笑顔で暮せるようになるまで・・・私は戦い続けるわ


フォールズカウムの最深部に到着した。

また、雷桜は誰かに見られている感覚に襲われた。
しかし、振り返っても誰もおらず、おかしな点は見つからなかった。

???


雷桜、どうかした?


なんか、さっきから、誰かに見られているみたいな・・・
視線のような気配がするのだけれど・・・。
アルフィナは、何か感じない?


確かにそう言われてみれば・・・。
ここに来たときから、視線を感じるわね・・・。
・・・いえ、今は気にしている暇はないわ!
今は急いでメルを見つけることが先よ! 行くわよ!


ここより奥は今とは全然違う雰囲気ね・・・。
先が暗くて良く見えないわ。
油断せずにいきましょう


ふと、前方の暗闇の中にメルのような少女がいるのを見かけた。

メル!? メル!! お前なのか!?


シュウはメルを見て、一気に走り出した。

辺りが一瞬暗転すると、目の前には、メルにシュウ、それに、センナにアンナもいる。
これは、メルが見せている過去の記憶だろうか?

 

暗転が解け、現実に戻ると、モンスター化したメル『インヴィーメル』が襲ってきた。

雷桜は、唇を噛み締め、インヴィーメルを撃破した。

 

パパ・・・ママ・・・私は間違っていない。
アイリのことは私のせいじゃない・・・。
あっちが先に・・・。
なんで信じてくれないの・・・。
パパ・・・ママ・・・。


ようやく最深部でメルを見つけたが、結果は不幸なものになってしまった。


さらに自らを『救済者』と名乗るものに、宝珠を奪われてしまった。

 

メ、メル・・・そんな・・・


シュウはメルの身体が、既に冷たくなっていることを感じて、悲しみのあまり涙を流した。

メル・・・。
小さな女の子一人の命も守れないなんて・・・!
邪神の宝珠・・・取り戻すわ!

それに・・・救済者・・・ですって?
嘘や欺瞞・・・クリアを信用しない方がいい・・・?
いえ、きっと私たちを惑わせるための言葉に決まっているわ!

とりあえず考えるのは後よ!
私たちも早くこの場所から離れたほうがいいわ!

雷桜・・・宝珠が奪われてしまったことについて、
エマに報告する必要があると思うの。
仮に救済者のあの言葉を信じるとすれば・・・。
きっとクリアはなにかを知っているかもしれないわ
救済者・・・あいつが言った言葉の意味って一体・・・。
それにどうしてかしら・・・なぜか嫌な予感がするのよ・・・


アルフィナは真面目な様子で告げた。

そうね、分かったわ。
エマ様のところへが私が報告に行ってくるよ。


雷桜は、自分もアルフィナに同意見であると言ったうえで、エマへの報告を請け負った。
そして、救済者と名乗る男があなたたちに告げた話は、冗談には聞こえなかった。
もしかしたら、クリアは本当になにかを隠しているのかもしれない。
クリアへの疑心がよぎったが、それは、口にしなかった。

私は先にケンタロ族の国、フォルティスラントへと向かい、エリノア姫に会いに行くわ。
次会う時は、フォルティスラントね。
また会いましょう、雷桜!
今回は本当にありがとう!


アルフィナは言い終えると、いつものように花びらに乗ってこの地を後にした。

雷桜・・・俺からもお礼を言わせてくれ。
本当に助かった。


シュウは雷桜に深々とお辞儀をして礼を述べた。

頭を上げてください・・・
私は、何もできなかった。
メルを助けることができなかったの・・・ごめんなさい。


雷桜は、なんの役にも立てていない事と、
メルが助けられなかったことに対して、申し訳ない気もちでいっぱいであると告げた。

いや、謝ることなど何もない。
お前がいなかったら・・・そもそも俺はこの場にいることすらできなかった。
メルのことは・・・俺のせいだ。
またいずれ、お前に会えることを願っている。
雷桜、ひとまずはお別れだ。


シュウは再度、雷桜にお辞儀をした。

 

雷桜は、メルの傍にたたずむシュウに、あまり長居はしないで、とだけ声をかけ、

フォールズカウムを後にした。