収載カートリッジ

1.F-8 (GRACE)

2.FR-6SE (Fidelity Research)

3.ピカリングとスタントン

4.M-2100 (MICRO)

5.PC-200 (PIONEER)

6.オーディオテクニカ AT-15系本体にAT-14系の針

  +(追記) AT-150にATN-DS3針

 

アナログレコード再生用のカートリッジ針は消耗品であり、諸説あるものの使用時間が数百時間レベルになると寿命を迎えてしまう。

4~50年前に生産完了した太古の?カートリッジの場合、とくに針の問題は切実だ。

 

MM型カートリッジ用の針はMI型やIM型なども含め、JICOやナガオカなどが今も互換針を出してくれていて有難いのだが、もちろんすべてのカートリッジに対応しているわけではない。

もし互換針がなければ、たとえ音質が気に入っているカートリッジであっても、針が駄目になれば使用不可能になる。

 

しかし、それで泣き寝入りするなど、ありえない。

カートリッジ用の針は、多くの場合その機種専用で、他機種との互換性はまずないのだが、他社の針でも「たまたま」寸法が合って取り付くことがある。この場合、泣き寝入りせずに済む。

かどうかは、わからないが。

 

ネットでも異機種カートリッジ針の互換情報を見かけることがあるのだが、ここでは針の入手が困難なカートリッジをメインに、これまでに判明した互換情報をご紹介しようと思う。

もちろん、オリジナル針とは異なるわけだから、 VTA(Vertical Tracking Angle) が大きく変わってしまうこともあるし、適合して近い音が出るにしても、音の傾向は変わってくる。

 

だが、JICOのSAS針などラインコンタクト系の針まで使える場合も出てくるから、音が変わることによって、カートリッジが増えた感じもしたりする。実にナイスと言える。

というか、針がない状況ではそう考えるしかない。

 

 

1.F-8系カートリッジ (GRACE)

グレースF-8の音は、芯が明確で彫りが深く、艶やかでしなやかだ。間違いなく国産MM型カートリッジの、代表格の内の一つに挙げられるだろう。

きわめて評価の高いカートリッジなのだが、程度の良い純正針の入手が難しく、さらに、社外の互換針が見当たらない。しかし次の針が使える。

 

STS-455E (ELAC)用の針

やや前のめりになるが、取り付く。写真の状態はカンチレバーの付け根を見てもわかるように、やや入り込み過ぎかもしれない。ここが接触すると音が歪む。

少し前に出すと良いと思うが、モノラル盤をかけて左右の音圧レベルが合えば、そこがほぼ適正位置と考えて良いと思う。

 

外れるリスクが心配なら、大技だがプラのノブとカートリッジ本体を微量の接着剤(セメダインスーパーXなど)で固定すると良いだろう。

あくまでも「微量」だ。接着剤をつけ過ぎると外れなくなるから注意。

 

 

 

次のYouTubeがSTS455E針との組み合わせによる実際の音だ。

弦の強奏部の高域で音がかなり混濁するので、音としては聞き苦しい。混濁はこのカートリッジに限らず、なにで再生しても収まらない。リマスターCDにおいてさえ同様だから、原盤レベルのものなのだろう。

弦楽セクションが101人と多人数で編成されているからだと思う。

 

LPレコード音源による101ストリングス ”愛よ永遠に”他 全4曲

- 101 STRINGS - POP CLASSICS - [ Vinyl record ]

 

 

V15 TypeIII, IV, V (SHURE)用の針

超有名なシュアV15の針もいちおう取り付くが、あくまでも「いちおう」だ。欠点が多い。

プラのノブがカートリッジ本体と離れていて、構造的にもノブ先端がレコード盤面ギリギリになる。

また、嵌め合いがやや緩い。ノブがカートリッジ本体と離れているので、抜け止めをするならカンチレバースリーブに微量の接着剤を使うしかない。

 

しかし、MM型カートリッジの代表格であるV15の針はバリエーションが多い。丸針からラインコンタクト系の針、木製カンチレバーの針に至るまで選べるのが魅力だ。
 

 

 

2.FR-6SE系カートリッジ (Fidelity Research)
グレースに在籍した技術者の池田勇氏が独立して作った会社がフィデリティリサーチだ。
このカートリッジは発電系にトロイダルコアが採用されるという、他社にない独創性が光る。音質面では非常にクリアで、高域の繊細さと低域の厚みや押し出しが特徴だが、これも互換針が見当たらない。
 
FR-6SEにも、前項のF-8と同様に、STS-455系やV15系の針が付くが、欠点も同様だ。STS-455用の針は、使い勝手の上でまだマシだと思うが。
 
PC-200系の針
ラインアップの多いPC-200系の針が取り付くが、プラのノブが干渉するので、仕方なしにニッパーで切って短くしている。
次項3.の写真を見れば、どのようにカットしたかわかるだろう。ネットでは無問題で取り付けられるという写真付きの情報もあるのだが謎だ。個体差だろうか。

 

 

 

※ Forceさんのコメントによると、FR-101、6SEに、ナガオカの88-150が合うとのこと。

情報多謝です。ナガオカの「88」はSONYですね。

 

 

3.ピカリングとスタントンのMM型カートリッジ

アメリカのカートリッジメーカー、ピカリングとスタントンは兄弟会社であり、針も相互乗り換えができる。もちろん本体がMM型だから、針もMM型対応でなくては音が出ない。

ピカリング/スタントンには、寸法だけは互換のMI型が多いから要注意だ。

 

写真のカートリッジはスタントンの「881S」だが、扱いは同じMM型のピカリングXSV、XUVシリーズでも同じだ。

しかしこれらのカートリッジも、古い機種の純正針がなかなか見つからない。

 

下記の2例は、いずれもカートリッジ本体の穴に対してカンチレバースリーブが細く、隙間が大きくてかなりゆるい。これだけで諦めたくなる。

音質に悪影響を及ぼしそうなのだが、プラのノブが「きつめ」で、カートリッジ本体をしっかり押さえているからなのか、音がもろに歪むというようなことはない。

 

つまり使える。これらの針はいずれもバリエーションが多く、何かと楽しめる。

むしろ傾向の異なる音が出てくるなら、それの方がオリジナルより好みだとなることだってあるかもしれない。

 

PC-200系 (Pioneer)の針

 

Z-1系 (Victor)の針

 

 

ビクター針と組み合わせた音は次のYouTubeの通り。

カートリッジの差し込み穴が大きくてスリーブが緩い場合、歪んだ酷い音しか出てこないだろうとお考えの方も多いと思うが、いたって普通に鳴る。まあ、「百聞は一聞にしかず」?だ。

 

スタントンのオリジナル針は音がシャープだが、この組み合わせは音が柔らかく厚みがある。

スリーブの緩さの影響が出ているからなのだろうか、倍音がすさまじいまでに豊かなのだ。しかし、これはこれで悪くはないと思う。

 

LP音源による映画音楽 ”モア” ”黒いオルフェ” 他 全5曲

- The World of Great Screen Themes - [ Vinyl record ]

 

 

4.M-2100系カートリッジ (MICRO)

こだわりのアナログプレーヤーで知られるマイクロ精機によるこのカートリッジは、特に贅沢なスペックを誇るカートリッジではないが、音にパンチや厚みがあり、なかなか人気がある。1960年代後半を代表するカートリッジの内のひとつとする人もいるほどだ。

しかしこれもまた針が入手困難だ。めったに見かけない。

 

取り付けられる針は複数種あるのだが、以下の組み合わせもカンチレバースリーブがカートリッジ本体穴に対して細く、隙間が大きくてかなりゆるい。

これも音質に影響を及ぼしそうだが、前項3.と同様にプラのノブが「きつめ」で、カートリッジ本体をしっかり押さえているからなのか、なぜか問題がない。

 

下記3例の針はいずれも潤沢に出回っているから、M-2100も長く使うことができるだろう。

 

PC-200系 (Pioneer)の針

 

Z-1系 (Victor)の針

 

270C系 (Technics)の針

 

 

5.PC-200系カートリッジ (PIONEER)

パイオニアのこのカートリッジは、音の立体感は希薄だと思うが、細身でシャープな、ペン画のような音が独特だ。

互換針はJICOからも入手可能だ。つまり、これまでにご紹介したカートリッジのように、針が見つからなくて困るようなものでもないのだが、音質面で特筆すべきものがあったのでご紹介する。

 

X1/II系 (VICTOR)の針

ビクターのシバタ針がPC-200に問題なく取り付く。もちろん、音が変わる。

この組み合わせによる音は驚きものだ。音の立体感は大きくは変わらないと思うが、超高域まできめ細かく伸び、しかもトゲがない。「美麗そのもの」の音になる。

 

 

 

次のYouTubeがPC-200 (PIONEER) + DT-X1Ⅱ(VICTOR) の組み合わせによる音だ。

他の事例においても同様だが、交換針の互換性を探すことによって、「より、好みの音」を見つけることも可能なのかもしれない。

このPC-200編?は、それを言いたくて書いた。(^^;

 

LPレコード音源によるレイモン・ルフェーヴル 「オー・シャンゼリゼ」他 全5曲

-Raymond Lefèvre et son Grand Orchestre - [ Vinyl record ]

 

 

ちなみにこちら、同じパイオニアのPC-330。これにも問題なく取り付く。

 

 

 

F-8系 (GRACE)の針

グレースの針自体が希少だが、定評ある針が複数種、選択肢に入る。これもまた、音質面で格段にメリットが出る。

プラノブがやや前のめりなので、ダンパーがへたっている場合、怪しいか?

 


 
6.オーディオテクニカ AT-15系本体にAT-14系の針
AT-15系の音の評価は非常に高い。イチオシする人もけっこう見かけるのだが、純正針はとっくに生産終了している。
 
このカートリッジはMM型ではなくVM型だ。VM型はオーディオテクニカ独自のものであり、他社針との互換性はなく、探しようがない。
さらに、AT-15系の針はAT-14系など同一ラインアップ上の他機種とも互換性がない。
まさに孤高の位置付けになるのだが、こういうことで孤高でも困る。
 
ネット情報で、互換性がないのはプラノブ部が干渉するだけだから、干渉部分を切削加工すれば乗り換え可能という書き込みを見かけた。試しにやってみたところ、問題なく取り付いた。音質的にも遜色はない。
これは金属製の平ヤスリなどでの切削加工になる。ミスするとカンチレバーを破損するから要注意だ。
 
次の写真の本体はいずれもAT15Eaなのだが、左がオリジナル針。右がAT14Eaの針だ。具体的にはリードワイヤー近くのプラ部を平やすりで切削している。
もし取付け固定がゆるくなった場合、「微量」の接着剤で固定すればよいだろう。
 
AT-14の針はAT-13,AT-12まで互換だから、替え針調達の選択肢が広がる。少なくとも、AT-15が使えないままになる心配はなくなるだろう。
もちろん、同様の加工で、AT-14系の本体にAT-15系の針を取り付けることもできる。
 
 
 
【追記】
最近ネットで、対応針の多い「AT-150」にDJ針である「ATN-DS3」を付けるとなかなか良いという記事を見つけた。面白半分にAT-150MLXでやってみたら確かに良かった。
次のYouTubeは、録音が1950年代後半から60年代前半の古いレコードによる。
この針の組み合わせはこういうレコードに合うと思う。

 

LPレコード音源によるメラクリーノ楽団 ”雨の朝パリに死す” 他 全4曲

- George Melachrino Strings "The Last Time I Saw Paris"- Vinyl

 
 
■■
 
組み合わせを変えると音もいろいろ変わるのが楽しいが、いくらなんでも「無理に押し込んで、やっと互換」というのは、カートリッジ内部破損のリスクがあるので避けたい。
ご紹介した組合せに、無理に押し込まなければならない組合せはなかったから、非常時の選択肢にはなるだろう。まあ、個体差はあると思うが。
 
もちろん、保証は一切なしだ。
「やってみたらカートリッジが壊れてしまった。慰謝料として、オルトフォンのSPU新品と茨城の乾燥芋、常陸蕎麦の詰め合せセットを、元払いで送付してほしい」などとコメントされても、「いやです」としか回答できない。(^^;
 
 
 

これ↓はここまで読んでいただいた方へのおまけ。針が純正のまま、スタントンの681EEで採音している。

 

"The Windmills of Your Mind" - Percy Faith and His Orchestra

- "風のささやき" - パーシー・フェイス・オーケストラ - [Vinyl]