濱べなるまへの川せをゆく水の早くも今日のくれにけるかな
二所詣下向に濱べの宿のまへに前川といふ川ありなが
雨降りて水まさりしかば日暮れてわたり侍りし時よめる
金槐和歌集 巻之下 雑部 (701) 鎌倉右大臣実朝
富士は、神々の座はかなたに白く、だが人が祈る場は、いまなお遠い。── 風が運ぶ潮騒は、この太刀になにを語りかけているのか。
富士は、神々の座はかなたに白く、だが人が祈る場は、いまなお遠い。── 風が運ぶ潮騒は、この太刀になにを語りかけているのか。
長く降り続いてきた雨に、川の流れは早い。── 安らげるはずの場は、対岸にある。
太刀は祈りの言葉をまとい、── だが、この身は流れの前に立ち止まり、進むことができない。
時の流れは早く、日は暮れ、── 道は遠く。
白き神々の座は、日暮れのかなたへと遠ざかり、── 立ち止まったまま、いまはここで目を閉じるしかないのか。
