●九鬼山・馬立山・御前山 2014年1月12日(日) 快晴

 山梨県都留市 九鬼山(970m)、馬立山(797m)、御前山(730m)
<参考コース時間>

 富士急行線禾生(かせい)駅→(20分)愛宕神社→(35分)分岐→(50分)九鬼山頂→(10分)馬立分岐→(25分)紺屋休場→(30分)札金峠→(35分)馬立山頂→(45分)御前山→(15分)神楽山→(25分)登山口→(10分)JR中央線猿橋駅

 <参考歩行時間>5時間
3連休の中日の新年初登りは、なぜか寂しい単独行!



メンバー4人のうち、二人が次々と参加できなくなり、最後の砦の相棒が前日になって、風邪でダウン。すでに登山モード一杯で、「3連休を家でボーと過ごすのもな」と、メンバーには申しわけないが、延期せず単独行に踏み切った。



それにもうひとつ、3連休はこの冬最大の寒波来襲とかで、ひょっとすると目指す山頂で雪山気分を味わえないかという、モクロミもある。

前日、ロングスパッツはもちろん、アイゼン持参で準備に怠りはない。



目指す山は、大月駅南方に位置する九鬼山。標高970mながら、富嶽十二景の一峰で、この山の真下をリニア実験線のトンネルが通っているという。



最寄駅の富士急行線「禾生(かせい)駅」に降り立ったのは、朝まだ早い8時半。家で水を入れ忘れたので、ホームの水道の蛇口をひねると凍結して出てこない。しかたなく洗面所の水を給水して、駅前の国道(甲州街道)に出た。

見上げると、道路案内板に「路面気温-4度」とある。



道は国道を左折(大月方面)して、リニア線高架の手前の落合橋に差しかかるところに、古いレンガ造りのアーチ橋が見えてくる。


案内板によると、明治30年(1907年)に、東電(現在の)が電力供給用に作った3連アーチ型の発電水路という。こんな場所に100年以上前の遺構が残っているのはちょっと意外でもある。

橋を横目に見ながら九鬼山への道標に沿って歩を進めると、やがて愛宕神社経由と杉田新道経由の分岐に出る。前者は急峻な直登で、後者は時間はかかるが楽ちんコースとか。

ここは、正月気分でなまった身体を酷使しようと、急途のコースを選んでみる。

少しづつ高度を稼ぐと、眼下にリニア実験線が見えてきた。
予想通りの急坂で、神社から40分ほど歩くと、枯れ枝の間から本日初めて富士山が垣間見えてきた。


本日は、出発が早かったせいか、駅に降り立った登山者は自分一人で、登山道に入ってからも、あと先に全く人影はない。

坂を30分ほど登ると、コンバ休場(ヤスンバ)という明るい、尾根の肩に出た。ここが田野倉駅からの分岐になる。

コンバとは、漢字でどう書くのだろう。

謂れは分らないが、この山域(九鬼山の南方)には、同じような名前の場所があり、「山梨県の山」という本には、そちらの方が間違った表示と書いてある。

その標識には「紺屋(コンヤ)休場」と書いてある。



しばらく緩やかな道を辿ると、樹木に遮られることのない富士山が正面に見えてきた。

さらに10分ほど歩くと、ご丁寧にも「ここから急坂、要注意」との標識がある。

確かに、雪や凍結時期の下りは要注意。



しかしそれにしても、この山には雪の名残すらなく、当初のモクロミと違って、ちょっと期待はずれの感もがある。



急坂を登りつめた辺りに「展望よし 天狗岩」と、大きく赤字で書かれた案内板がある。

道から少し外れるが、1~2分で本日最高の絶景ポイントに出くわすことになった。どのガイドブックにも天狗岩に関する記載がないが、お薦めポイントであることは間違いない。

 

富士山方面に突き出した天狗岩の足場は悪く、大きな岩の下は真っ逆さまに切り立つ断崖で、近寄るだけでちょっと腰が引けてくる。



富士山の手前に、杓子岳、御正体山、菰釣山の道志山塊が連なり、富士急行線と中央自動車道沿いの街を隔てて、北側に(写真右手)に、檜の梢で見えないが 三ツ峠の長いスロ―プ状の山裾が広がっている  

先月、同じ山域の倉見山に登った際、出発がちょっと遅かったせいで、太陽が中天に差しかかって富士山が霞んでしまった。今回はその轍を踏まず、早出した甲斐があったようだ。

道を引き返すと、最後の急坂が待ち構えているが、それもほんのわずかで、やがて楽コースの杉田新道と合流する尾根に出る。少し、尾根道を新道方向に戻ると、富士見平という展望のよい場所がある。ここが九鬼山の絶景ポイントらしい。



この辺りから、1000m近い山頂に近付いたせいか、ほんのわずかだが残雪がある。

山頂とこの山道が、本日せい一杯の雪景色!

緩やかな坂道を登り詰めると、あっけなく本日の第一目的地、九鬼山の山頂に着いた。

途中寄り道をしても、駅から1時間45分程度だが、かなりの大汗をかいた。

九鬼山山頂

山頂は、薄暗く、秀麗富嶽十二景とはいうものの、富士山の展望はほとんど得られない。

ただ北面が開けていて、地図を広げて、居並ぶ山を同定する楽しみがある。



左から滝子山、大蔵高丸、黒岳などの南大菩薩山塊、右に雁ヶ摺原山、飛んで飛竜山から雲取山に至る秩父山塊が一望できる。

まさに秩父のオールスター勢揃いといった感がある。

 

九鬼山の名前の由来については、富士山にいた10匹の鬼が逃げ出し、1匹が大月方面に、そして9匹がこの界隈に逃げん込んだという伝説があるそうだ。

まあこの手の伝説はともかく、昔、九鬼山は特定の山を指すのではなく、九鬼集落の東側の山域を指していたそうだ。別名「鈴入ノ峰」ともいう。

そう言えば、九鬼集落の反対側の東側に、鈴ヶ尾山とか、鈴ヶ音峠など、「鈴」にまつわる地名が多い。山の形だろうか、あるいは鈴にまつわる伝説でもあったのだろうか?


山頂で時計を見ると、まだ10時ちょっと過ぎなので、ほんの10分ほど休んだだけで、次の馬立山を目指して急坂を下ることにした。

坂は北側斜面で、凍っていて、尾根も痩せているので、用心深く下りざるを得ない。積雪期より、春先のアイスバーンになる季節が、危険を伴いそうだ。



狭隘な尾根道を10分ほど下ると、朝日小沢集落に下りる分岐があり、ここから道は西側に大きくトラバースしながら山腹を巻いて行く。

このザレて、もろい斜面を20分ほど進むと、本日初めて、下から登ってくる60代夫婦の登山者と会った。

今日は、この山で、誰ひとり会わないかもしれないと思った矢先なので、何となくほっとした気分になる。

 

狭いザレ道を抜けると、クヌギやケヤキの落ち葉が堆積した冬山特有の道になる。

すっかり葉を落とした裸木の間から、淡い陽光が降り注いで、なんとも言えず心落ち着く気分になる。

これが冬山の楽しみのひとつでもある。

九鬼山の山頂から、30分ほど下ると、「紺屋の休場」と書かれた明るい伐採地に出る。

 

透明のアクリル板に「紺屋の休場」と書いてある

ここに来る途中、本日初めて冠雪した南アルプスの峰々を垣間見ることができた。

紺屋のヤスンバは、北面が大きく伐採されて展望も良く、広く平坦な道がプロムナードのように続いて気持ちが良い。

こんなところで、ゆっくりコーヒーを淹れて飲んだら最高の気分だろう!



ザックを下ろして、つかの間、冬木立ちの森閑とした佇まいをひとり堪能した。

種田山頭火の、「咳をしてもひとり」という名句を思い出した。  

再びザックを背に歩き始めると、これまでに見たことのない、緑の実?を見た。近寄ってみると、どうやら植物のようで、上から見ると口のようなものが閉じている?果たして食虫植物のように見えるが、一体何だろう?



しばらく枯葉で埋まった冬道を歩くと、富士山の見える見晴らしの良い場所に出た。 しきりに写真を撮っていると、本日二人目の登山者に遭遇。耳にヘッドホンをつけ、黙々を歩いてくるが、一向に景色を見る風でもない。

田野倉駅に下る分岐を経て、札金峠に差し掛かると、3人目の登山者とすれ違ったが、挨拶をしても無言で立ち去って行った。



札金峠から、いよいよ第2の目的地、馬立山(799m)の急途が待ちかまえている。

馬立とは、恐らく馬が二本足で立ち上がったように険しい山、という意味で名付けられたのだろう。

名前の通り、かなりの急坂が続き、日差しが強くなったこともあって、シャツ1枚でも暑いくらい大汗をかいてきた。



急坂を30分ほどあえいで登りきると、稜線の肩に出た。

枯葉にくるまれた緩やかな道を辿ると、ようやく馬立山の山頂に着。

ちょうど12時になったので、見晴らしは全く効かないがここで昼食。

駅を出発してから3時間30分を経過。


馬立山山頂(799m)
山頂には、老夫婦の登山客が一組。これで本日4組目の登山者になる。

その後、単独行の女性が登ってきたと思ったら、反対側からまた老登山者が登ってくる。

挨拶すると、「全部で18人います」と申し分けなさそうに、挨拶を返して来た。



この団体は、60代から70代の男女半々くらいのメンバーだろうか、山頂の隅っこに陣取り、幹事さんの音頭で、新年の乾杯のあいさつ。

今朝のあの静けさ信じられないほどの、まるで花見の宴を思わせる、にぎやかな山に様変わりした。



山頂で30分ほどくつろいだ後、これから第3の目的地、御前山を目指すことになる。この山頂は展望に恵まれ、富士山が見えるという。



急坂を下りかかったところで、ちょっと問題が発生。

地図にはない分岐がある。分岐と言っては大げさだが、真っ直ぐの道と、左に黄色いテープのある細い道がある。

さっき、単独行の女性が、かなり長い時間をかけて地図とにらめっこしていた理由がようやくわかった。



赤いテープなら分かるが、黄色いテープの意味が分らず、ここはそのママ真っ直ぐの道を選んで下ってみた。ところが5分ほど下ったところで、大きな岩にぶつかり、行きどまり。

そんなはずはない、と思いながら、何度か行きつ戻りつしていると、大岩の右手に赤い目印を見つけた。しかしそのしるしの先は藪こぎ同然の道で、いま一つ腑に落ちない。強引に藪こぎして下ると、またささやかな赤い目印を発見。

ただ、道は途中で途切れては再び現れるという具合で、登山道という確信がない。

15分ほど強引に下ったが、結局、さきほどの黄色いテープのところまで引き返すことにした。

やはりこれが正解で、黄色いテープの先を辿ると、踏み跡のしっかりした道がある。山では通常、目印は赤テープと決まっているのに、なぜ黄色なのか、今持って不思議。



このミスで30分の時間と体力のロス。くれぐれも要注意!



御前山への山頂に行く途中、菊花山を経て大月に至る沢井沢ノ頭の分岐に出る。山頂の団体は、きっとこの道を下って行ったのだろう。



緩やかな尾根道を経て、ひと登りすると御前山の山頂に着。
 

御前山山頂

730mの低山だが、見晴らしが良く、ほぼ360度の展望が効く。

杓子岳か御正体山辺りの道志山塊の向こうに、富士山を正面に見ることができる。

残念なことに、陽が高く昇っているので、富士山はほとんど霞んでいるが、それがかえって気高くも見える。

 

ここまで、九鬼山、馬立山、そして御前山とアップダウンの激しい山を縦走してきたが、残るは、最後の神楽山。展望は全く効かない山だが一応立ち寄って、あとは一気に猿橋駅を目指して下るのみ


 

大月市のマンホールの蓋には猿橋と富士山のモチーフが

万歩計は持っていないが、本日はロスした分を含めて、25000歩近くは歩いているはず。珍しく太ももが張ってきた。



そのせいか、いつもなら藤野駅で下車して、日帰り温泉に向かうところだが、本日はその気力もない。

かろうじて、高尾駅の駅前の居酒屋に寄って、ひとり、生ビールと肴の晩酌セットで祝杯を上げるのみ。


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