長野県諏訪郡富士見町
入笠山(1955m)
<参考コースタイム>
JR青柳駅→(30分)登山道入口→(45分)展望台→(40分)お花茶屋→(30分)
入笠山小屋→(30分)入笠山山頂→(50分)大阿原湿原入口(一周30分)→大阿原湿原入口→(35分入笠山小屋→(15分)ゴンドラ→終点→バス→富士見町駅
参考歩行時間:5時間05分
参考日帰り温泉:ゆーとろん水神の湯
南アルプス(赤石山脈)の最北端に連なる入笠山(1995m) は、6月中旬頃から7月初旬にかけて、80万株のスズランや湿原の植物が咲き、牧歌的な雰囲気が楽しめるという。
山頂付近は伊那市と諏訪のちょうど境になる。
当日(7月10日)は、例年なら梅雨の盛りだが、タイミング良く関東地方は前日に梅雨明け。車窓からは、夏の青空を背に、なだらかな入笠山の稜線が見渡せる。
駅からバスを使わず、そのまま徒歩で山頂を目指せるのが良い。・・と言っても、ほとんどの登山者が、車かスキー用のゴンドラを使って山頂付近まで行くようだ。
われわれは、”古風”にも中央線青柳駅で下車し、林道を通って入笠山へ向かうことにした。こうした古風(=意固地)な登山者がもうひと組いて、ベテランらしい女性のリーダーが6~7人の中高年登山者を引率。
出発時間は9時30分。
ガイドマップには、「林道は荒れ気味」と記しているが、確かにめったに登山者(登り)が通らないようで分りずらい。二又に分かれた道には、ほとんど入笠山への道標もない。左、左に曲がったところで、3つ目の二又を右側に進むと、行き止まり。少し時間をロスしてしまった。
▲この二差路は左側に。しばらく行くと右手に小さな登山道の標識がある。
登山道に入ると結構な急坂が続き、暑さもあって早々に汗が噴き出してくる。
歩き初めて1時間30分(ロスタイム10分程度)経ったところで、旧茶屋のある展望台に着。展望台とは名ばかりで、実際にはカラマツ林に遮られて展望は得られない。
だが白樺林に囲まれた高原ロッジ風の建物(廃屋)の佇まいが良い。
昔、この山道は大勢の登山客で賑わったのだろう。
しばらく緩やかな道が続き、やがて急坂を登り、歩き始めて2時間15分でお花茶屋(廃屋)に着く。
途中、先頭を歩いていた相棒が鹿を見たそうだが、あっという間に走り去ってしまったそうだ。
お花茶屋
なだらかな登りとはいえ、やはり真夏の暑さにやられてか、みなバテ気味の様子。ここで小休止して、水分を補給。
笹やカラマツ林の風情は、どこか軽井沢の避暑地を思わせるが、登り坂ということもあって、散策気分とはほど遠い。おまけにひとひらの涼風さえも吹いてこない。恐らく、この辺りは暑さも峠を越えた、初秋のころに訪れるのが良いのかもしれない。
お花茶屋から30分歩いて、ようやく入笠小屋に着く。
小屋前は、ゴンドラに乗った軽装の観光客や車で入山した登山者で賑わっている。
ここから山頂まではひと登りはずだが、予想以上にキツイ登り。
途中、本日初めて、周辺の山並を見た。
30分近くかかって13時ちょうど、入笠山(1955m)の山頂に着いた。
歩き始めて3時間半の長丁場。しかし、これしきの登りに辟易するようでは、3,000m級の夏山は覚束ない?
頂上下から見上げると、夏特有のみごとな入道雲が湧いている。
この積雲や積乱雲は、綿帽子とも、雲の峰ともいう。四囲の山の反射が激しい盆地で多く発生するというから、この辺りの夏の風物詩なのだろう。
だが登山には要注意で、やがて雷を呼ぶ。しばらくすると、早くも遠くから雷鳴が聞こえて来た。
広い山頂にはかなりの登山者がいて、輪になって昼食を摂っている。われわれもやっと昼食タイム。
山頂からは、360度の大パノラマが展開しているはずだが、残念ながら雲がかかってほとんど眺望は得られない。辛うじて、斧で切り落としたような甲斐駒の威容と、八ヶ岳のいくつかの山が確認できるだけ。
北斜面の向こうに、おぼろに諏訪湖が望める。
入笠山は、「にゅうかさ」山と読む。稲穂を積み重ねた「にお」に似ているため、「におかさ」から「にゅうがさ」に転じたという。
この山域は、歴史をさかのぼると、南北朝時代、遠州と諏訪を結ぶ秋葉街道(現在の152号線)の大河原(現大鹿村)に依拠していた南朝方の宗良(むねよし)親王が、甲州から大河原に抜ける間道に使ったという説がある。
富士見町から入笠山付近に、「御所」とついた地名がいくつもあるのが、その論拠らしい。入笠山下の峠は、いまでも御所平峠という(「山の地名」谷川健一著)。
夏の積乱雲は、勇壮で遠くで見ている分には気持ちが良いか、わずかに雨粒が落ちて来て雷鳴も近づいてきた。
本日の山頂付近の天候は、午前中から午後3時頃までは晴れ、その後雨になるという予報だが、どうやら的中しそうな雲行きになってきた。
われわれはここから少し足を延ばして、大阿原湿原を往復することになっている。
片道およそ30分の行程で、そこから湿原をやはり30分かけて周遊する。
山頂を13時45分に出て、湿原に着いたころは、夏の日差しだが、30分ほど湿原の木道を巡ってくると、すっかり本降りの雨になっている。
残念ながら、この湿原の植物の花期は終わり、みるべきものはない。
かろうじて粉雪のような純白のサギスゲの草原が見られる程度。
湿原の花の最盛期が終わったため、先週でバスの運行もない。
雨具を出して、舗道を歩き始めると、みじめな気分この上ない。途中、稲光が空に走り、近くに雷も落ちたような気配。
30分ほどで雨脚も鈍り、ようやく入笠小屋に着く。ここから15分ほどのところにゴンドラがあり、それを使って下界に降りるばかり。
入笠湿原で、本日やっと色鮮やかなアヤメの群生を見る。
ゴンドラ乗り場に着くと、雷の影響で一時運行中止となったようだが、直ぐに再開して無事、麓に着。
乗り場から八ヶ岳の全容が見える
本日は、ゴンドラを降りて近場の温泉に浸かる予定だったが、ちょうどいい具合に富士見駅行きのバスに乗れたので、一路、帰途につく。
当然、駅前の飲み屋で冷えたビールが慣例だが、無情にも店がどこも開いていない。
仕方なく、電車を待つ間、路上で缶ビール片手に酒盛りを・・。
比較的、手軽な山にしては、疲労感がある。
夏山の28000歩は、応えるとしか言いようがない。