●甲州高尾山・棚横手

 山梨県甲州市 2011年4月16日 快晴

 甲州高尾山(1106m)・棚横手(1306m)

 <参考コースタイム>

 JR中央線勝沼ぶどう郷→(タクシー15分)大滝不動尊→(45分)分岐→(20分)棚横手→(15分)分岐→(35分)甲州高尾山→(1時間)五所神社→(5分)大善寺→(1時間5分)ぶどうの丘→(20分)勝沼ぶどう郷駅 


参考歩行時間:4時間25分

 参考歩行数  :22,000歩

  日帰り温泉:「天空の湯 」(ぶどうの丘)
山   写真 温泉

甲州高尾山は、大菩薩嶺の南南西に連なる尾根の端に位置し、眼下に甲府盆地を俯瞰する景観地。

高尾という名前は、地形語で、長く延びた尾根が平坦地に接するところから名付けられたそうだ。

4月上旬から中旬にかけて、甲府盆地に桃の花が一斉に開花し、山頂付近からは、冠雪した南アルプスの連山が見渡せるという。



山頂へは勝沼ぶどう郷駅から登山口の大滝不動尊まで徒歩で行けるが、2時間近くかかるというから、マイカーかタクシー利用の登山者がほとんど。われわれも、今回ばかりはタクシー(2060円)を活用することにした。



桜はすでに1週間ばかり前に盛りを過ぎたようだが、かろうじて遅咲きの桜の大本が駅前に咲き誇っている。

正面にぶどう畑に囲まれた、小高い「ぶどうの丘」が手の届きそうな距離にある。
山   写真 温泉 駅前の桜

山   写真 温泉 正面にぶどうの丘
ガイドブックには、大滝不動尊の仁王門をくぐり、石段を登ると大滝があり、本堂右脇から登山道に入る道があるようだが、案内板に「崩落があるため、現在この道は通行止め」と書いてある。そうとも知らず、団体の登山者が石段を登って行くので声をかけてみた。

少し遠回りのようだが、トイレの右脇の通行止めの林道から、棚横手山を目指すことにした。
山   写真 温泉
この山腹には、キブシやアブラチャンの黄色い花が群生し、まだ早春の趣がある。

このキブシを植物図鑑で調べると、漢字で「木五倍子」と書く。五倍子を「フシ」と読ませるのはなぜだろう、という疑問が湧いてくる。

調べると、フシとは、一般的に虫などの刺激で植物の一部が肥大、増殖したコブのよう(実の形)なもので、なかでもウルシ科のヌルデの木にできた「フシ」を、「五倍子(ふし)」という。五倍という漢字を用いたのは、そのコブが五倍の大きさに膨らむというのが由来とか。タンニンを多く含んでいるため染料に使われ、江戸時代には”お歯黒”にも用いられていたようだ。いつしか五倍子を、一般的な「フシ」と呼ぶようになったのだろう。
山   写真 温泉 キブシの花
ところで「キブシ」は、木の五倍子と書くが、五倍子とは直接関係がない。その葉が、タンニンを多く含んでいるため、希少な五倍子の代用として使用されていたことから、そう名付けられたそうだ。



棚横手山に向かう途中、見慣れない花がある、枝も花も柳のように見えるが、そうでもない。帰って図鑑で調べると、ヤナギ科の「バッコヤナギ(跋扈やなぎ)」という。
山   写真 温泉  バッコヤナギ
登山道入口から40分ほど歩いて、棚横手山と甲州高尾山の分岐の稜線に出た。

この分岐の左斜面を登ると棚横手(1302m)に、右手の平坦な道は、甲州高尾山に続く。ここから富士山がかすかに見えるが、春霞がかかって全貌が見えないのは残念。

かつてこの山は、松やヒノキに覆われていたようだが、1997年に辺りを焼きつくす大火が発生し、その後、ヒノキやコナラを植林したそうだが、その後も山火事が続き、いまでは無残なハゲ山と化している。

登山道には、2009年の山火事で焼けた松の木が残っているのは、痛々しい。山   写真 温泉  

それにしてもこの山の乾燥は、はなはだしい。

実は、この山へは先週登る予定だったのだが、天気予報では、甲府も含め関東地方全域が低気圧に覆われ、雨予報だったので延期したのだが、運転手さんいわく、この辺りは先週一滴の雨も降らず、絶好の登山日和だったという。

山   写真 温泉  山   写真 温泉  

分岐から棚横手山までは結構な急坂で、歩き始めて1時間10分後に棚横手山頂に着。

途中、頂上間近の松の樹間から、眼下にモザイクのようにピンク色に染まった甲府盆地や、遠く、地平線の霞の上に、北岳、甲斐駒ケ岳など南アルプスの主峰も見渡せる。
山   写真 温泉  山   写真 温泉 棚横手山頂
棚横手(1,306m)は、山梨百名山に数えられ、南面の眺望が開かれているから、富士山の絶景が楽しめるのだろう。


棚横手山頂からの展望をそうそうに切り上げ、いま来た道を引き返し、分岐から本日の目的地、甲州高尾山を目指す。

分岐から下り坂を降りると、見晴らしの良い富士見台がある。肉眼では富士山は見えるが、カメラには映り込まないようだ。

富士山の手前に、釈迦ヶ岳、御坂山、三ツ峠が連なっているのが良くわかる。

山   写真 温泉  

富士見台からの展望(正面が富士山)

富士見台からやや平坦な尾根道を辿り、やがて急坂になる。この頃になると、気温が上がり、Tシャツ一枚でも大汗。日焼けするのは間違いない。
山   写真 温泉  山   写真 温泉
富士見台から見る棚横手山

甲州高尾山への道はヤセ尾根だが、見晴らしが良い快適な尾根歩き。これで霞みがっかっていなければ、なお良いのだが・・。

山   写真 温泉
桃の花が開花する季節のせいか、団体の登山客がかなり多い。すれ違った登山者が、車で群馬から来たというから強行軍。

山   写真 温泉
登り始めてからちょうど2時間で、甲州高尾山山頂(1,106m)に着。

実はこの山頂には、山頂標識があるが、最高点はこの山の少し手前の東峰で、標高は1,120m.。ここよりわずか14m高い。確か東峰を示す標識はなかったようだが、気がつかなかっただけなのか?

恐らく東峰は展望が効かないか、山頂が狭すぎるために、標高が低い中央峰に甲州高尾山の標識を掲げたのだろう。

しかし、分らないのは、ガイドブックによって、甲州高尾山の標高と名称がまちまちであること。手元に3つのガイドブックがあり、山と高原地図(07版)には1,027m、山と渓谷社「東京周辺の山」(04年版)には1,092mとある。この1,092mは、中央峰の次にある甲州高尾山剣ヶ峰の標高を採用したものだろう。

予定よりかなり早く、時計を見るとまだ11時10分。富士山を正面に見ながら、少し早いがここで昼食。
山   写真 温泉

山頂は狭く、続々と登ってくる団体さんでごった返して、彼らが落ちつくスペースがない。それに地面が乾燥しきっているので、土煙が立ち込めてしかただない。

結局、山頂で50分ほど休憩して、下山開始。



本日は少し遠回りだが、眼下に見える桃畑を散策し、ぶどうの丘にある「天空の湯」に浸かる予定。

山   写真 温泉  

長い急坂を20分ほど下ると、甲府盆地が迫ってきて、桃畑の色が鮮やかに見えて来た。
山   写真 温泉
山   写真 温泉  

これから向かう柏尾山(写真下中央)の向こうに霞んだ平地が笛吹市街、その左手になだらかな山裾が伸びているのが、釈迦ヶ岳の麓辺りか。

来るときに乗ったタクシーの運転手さんが、桃の花とハイキングを楽しむなら、釈迦ヶ岳辺りが良いと言っていたのを思い出した。

山   写真 温泉

山   写真 温泉  

麓が近くなったせいで、淡い緑色の幼葉が目立つようになった。
山   写真 温泉
山   写真 温泉
団体さんに追いつき追い越し、予定よりかなり早く、麓の五所神社に着。山頂からちょうど1時間。

この五所神社の小さな境内の桜が、見事に満開!
山   写真 温泉  

とくに白色のしだれ桜が青空に映えて美しい。
山   写真 温泉
神社の鳥居をくぐり、国道20号線の道路に出て右折すると、奈良時代に創建された古刹、大善寺がある。境内の桜が有名だそうだが・・ゆっくり拝観する時間がない。



ここから勝沼ぶどう郷駅に行くには、本堂の左手の墓地から遊歩道を使うと近道になるという。

しかし、われわれは、せっかくの桃の花を間近で見たいという想いで、桃畑の見える方角を目指すことにした。
山   写真 温泉
桃畑を抜け、温泉のある「ぶどうの丘」に登るのは、かなりの遠回りだが、この丘の左手に手ごろな桃畑がある。


この見遥かす広大な盆地に広がる、ぶどう畑の散策が、思いのほか気持ち良い。

20分ほど道を探りながら、ようやく小さな桃畑に着いた。
山   写真 温泉
山   写真 温泉
青空と桃と緑とたんぽぽと、これほど原色に近い色合いの風景も珍しい。



さて、桃畑も堪能したところで、ここから本日の最終目的地、ぶどうの丘に向かうのだが、この道がつづら折りで、歩けば相当の距離がある。

いっそ、この丘を最短距離でよじ登る近道はないかと思案していると、人家を抜け、急勾配のぶどう畑の細道を辿り、付き当たりの石垣をよじ登れば、辿りつけないこともない。

観光客なら、決して試みないが、われわれは登山者だ・・。



というわけで登り始めてみたが、予想以上の急勾配。本日最大の難所!

やっとの思いで石垣をよじ登り、道路脇に顔を突き出した途端に、消防隊の運転手と目が会った。

ニッと笑ったその微苦笑の意味は不明だが、われながら”いい年をして”、という自責の念がないでもない。
山   写真 温泉  

女性のYさんにはちょっと酷だったか?
山   写真 温泉
左の崖を登ってきて道路に・・。
・・・・・ともかくなんとか、目的地のぶどうの丘・天空の湯の到着。

この温泉には2度ほど来ているが、湯船に浸かりながら、南アルプスが望めるという絶景のロケーション。

山   写真 温泉  

さすがに顔や首が日焼けしてヒリ、ヒリ。その分、冷えた生ビールが美味しいというわけ。
山   写真 温泉  

1時間半ほどゆっくりして、ぶどう畑をぶらぶらと歩きながら、駅まで・・。
山   写真 温泉  

本日の山行歩数は22,000歩なり。