毎日ではないが毎週末自室のPC前に座っては、ブログでスパイやら探偵やらに関する記事をアップしていたのは事実だ。

 

 

 だから、エントリー記事もたまっていたわけで、意外と日本全国には彼のブログに興味をもっていた人もいたということだったのだろうか。

 

 

 彼のやっていたブログでは、自分のPCメールを公開するシステムがあり、もしかしたら妙齢の美女と出くわす可能性もあるんじゃないかという気持ちから公開していたものだ。

 

 

 しかし1年間もブログをやっているが誰からも、そのブログを通してメール送信が届いたことはなかった。

 

 

 だから、夕食後、自室のPCに見ず知らずの方からメールが届いていたのを見逃すところだった。

 

 

 笹田という差出人から届いた不思議なメール内容は、いきなり、こんな文章から始まった。

 

 

 「ユウユウさま(これは芳也のハンドルネームだ)、突然、こんなメールを送りつける失礼ご容赦ください。

 

 私は札幌に在住する大のスパイマニアなのです。初めてユウユウさまのブログを読んだとき、世の中には随分と自分に似た方がいるもの

 

なんだなと感心した次第です。

 

 私もよく見ず知らずの他人を尾行したりしますよ。それ以外にもですね、素人にしてはかなり高度な探偵テクを身につけていると自負しています。

 

 今回ですね、このようなメールを発作のような気持ちでユウユウさまに送信してしまったのには理由があります。

 

 実は私来週の土曜日から10日間東京に出張することになったのです。

 

 せっかく、ユウユウさまの住む東京に行くのですからね、ここは同好の士らしく素敵な出会いをしてみたいと思ったのです。

 

 どういうことかというとですね、この東京にいる10日間の期間で、ずばり私を特定してくれないでしょうか。

 

 私のフルネームや年齢、職業、それにどういう仕事内容で札幌から東京に出張に来たのか、これらが判明したら私のメール宛送信してく

 

ださい。そうしたら、負け金として20万円をあなたの口座に振り込みたいと思います。

 

 もちろん、ユウユウさんが負けても支払いはなくていいですからね。

 

 要するに、あなたからの追跡を逃れるゲームをそれだけ真剣にしたいということと、あなたにこの遊びに協力してもらう遊興の費用でもあると思うのです。

 

 それにですね、私は今までの人生何度も趣味で他人を尾行しては成功してきたものですが、一度だけ誰かに尾行されたい、尾行されているという意識を持ちたいという願望がずっと以前から抑えきれないようにあったのです・・・・・。」

 

 

 途中まで読み進むうち、芳也の胸中には得体のしれぬ声なき咆哮があがった。

 

 

 以下の文章で、笹田を名乗る人物はこんなふうに鬼ごっこまがいの探偵ルールを記していた。

 

 

①  来週土曜日に上京した私は翌日曜日の午後4時半から5時までの間に、新宿紀伊国屋書店5階の哲学書コーナーの前で立読みをする。茶色の帽子にグレーの肩掛けカバンをさげている。

 

②  できれば私に気づかれないよう、その後の私を尾行してもらいたい、結論として翌週の水曜日までに、先ほど述べた私の特定事項をメールに送ってほしい。

 

 

 その晩、芳也はなかなか寝付かれなかったといいます。

 

 

 この不思議なメールは運命の神がくれた劇的なもののような気がするぞ。

 

 

 メールを読み終えて、すぐに芳也は、こんなメール内容を笹田のもとに返信したとのこと。

 

 

 「笹田さん、素敵な出会いありがとうございます。ホントに嬉しいです。一度もお会いしたこともなければ、どんな人かもしれないのに友情のようなものを感じました。来週の日曜日、新宿紀伊国屋書店、必ずうかがわせてもらいます・・・・・。」

 

 

 

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