「えっ、宇宙人だって。何それ?」

 

 一瞬の沈黙のうち、ケタケタと笑い声をあげる栄美です。

 

 「いや、笑いごとでもないんだよね。元旦に彼女にかけたつもりの間違い電話であることは確かなんだけどさ、数秒後にほんの短い妙なメッセージが・・・。」

 

 「それが宇宙人みたいな声だったというの。」

 

 「いや、声じゃないんだ。ウーだとかアブーなんとかだとかさ、動物のような叫びを人間が冷静に語っているような感じでね、それが途中で切れちゃったってわけさ。」

 

 「それって、彼女さんとの間で決めてる暗号かなんかじゃないの。」

 

 「暗号か・・・。」

 

 それでも釈然としない私は、暗いワンルームマンションで、突然録音メッセージの中から飛び出してきた音声の不気味さをなかなか忘れ去ることができなかったものです。

 

 自分が入院で留守中にかかってきた奇妙なメッセージに関しては、栄美としても現場で聞いたわけでもないし、私からの又聞きだったわけなのだから、さして意にも介さなかったということだろう。

 

 中肉中背、栗色のボブカットの彼女の全身を受話器の向こうに、今一度思い起こしては、電話を置いた。

 

 栄美とは、ちょうど一年位前に職場の先輩に紹介されて、それからずっと仲の良い関係を維持している。何度もデートを重ね、いろいろなところへ出かけた。

 

 しかし、当時の私と栄美とを結ぶ大事な接点というのが、この「オリビアを聴きながら」だけだったというのは、今から考えると随分と不便な話だ。

 

 彼女の住まいは隣県で電車で行くとなるや2時間近くになる。今のようにスマホどころか携帯電話もパソコンも有していなかった二人だから、必然、話すのは平日の夜固定電話でということになった。大事な話も今のようにメールで簡便にすますというわけにもいかず、その分、互いのつながりには密なるものがあったような気がします。

 

 その晩も、土曜日に横浜の中華街で私の快気祝いをやろうという約束で長い会話は終わった。

 

 どうしたものかな、その晩、私は自分と栄美との今後について思いを馳せたものです。

 

 最近どうも出会った頃のような燃える思いが沸き立たない。これは、栄美の態度からも伝わるもので、だから私も・・・。いや、卵が先か鶏が先かの論争みたいだが、愛は少しづつ成長していくものという二人の間に存した信念に陰りのようなものが生じてきていたのも事実だった。

 

 着信メロディーの「出逢った頃は こんな日が 来るとは思わずにいた♪」といった程に切ない状況ではなかったものの、私としては二人の先行きに不安めいたものを感じていたものです。

 

 自分と栄美との、そんな微妙な関係に刺激を与えたのが、偶然世界の果てから届いた、その奇妙な間違い録音メッセージだったのです。

 

 ほんの数秒間、男から女に送った短い宇宙人のような伝言メッセージ、私は、この見知らぬ二人がどういう関係にあるのか、そしてどういう

愛に抱擁されているのか非常に興味を抱いたのです。http://blog.with2.net/link.php?566450