久しぶりにですね、エッセイというか短編小説というか、どちらでもいいのですが、描いてみたくなりました。

 

 この話は以前やっていたブログでアップしたものを下書きに話を構成しなおしたものです。

 

  懐かしの流行歌というものは、大体、自分史との関係で把握されることが多いと思います。

 

  例えば、テレビ等で流れてくる懐かしのメロディー、ああ、この歌は俺が学生時代初めての彼女ができた頃に流行っていたっけな、とかこの歌は小学校の高学年の頃だという感じで膝頭を打つことが多々あることかと思われます。

 

 そんな流行歌の中にあって、私には忘れられない不思議な名曲があります。

 

 それは、何か。

 

 尾崎亜美さんが作詞・作曲をして杏里さんが歌った「オリビアを聴きながら」です。

 

 この曲が私にとって不思議なのは、まず、いつ流行っていたのかなということが自分史にあって正確に把握できないところです。

 

 カラオケなんかで頻繁に歌われるベストソングなんですが、この歌って、いつの頃からだか知らないけれど、いつの間にか現在に至るまで地道に歌い継がれているという感じですよね。

 

 正確には、杏里さんの歌手デビュー・シングルとして1978年に発売されたそうですが、その後多くの歌手にカヴァーされていることは周知の通りです。

 

 しかし、この歌、私にとっては平成に入っての数年間、自分が社会人になって間がない頃に流行していたという想い出があってならないんですよね。

 

 どういうことかというと、昭和から平成へと元号が変わる頃になって社会人になった私です。社会人になるに際して、私は実家を出て東京郊外で初めて一人暮らしを始めたものです。

 

 その記念すべき初めての一人暮らしのときに備え付けた固定電話の着信メロディーが、この「オリビアを聴きながら」だったのです。

 

 携帯電話が普及する以前の話で、今では考えられないことだと思いますが、他者とのコミュニケーションというのは、この固定電話だけだったんですよね。

 

 だから出先で連絡を取り合うときなんていうのは、どうしていたんだろうな、ポケベルなんてものはあったけれどよく覚えていませんね。まあ、文明の利器が生まれる前世界という程に不便だったことは間違いないと思います。

 

 初めての一人暮らしというものは、味わってみると呆気ないもので、一人侘しい夜なんかに、この「オリビアを聴きながら」のメロディーが流れると、ほっとしたような心持になったものです。

 

 それから携帯電話を入手するようになるまでの長い期間、私はその固定電話を備え続けたわけです。

 

 自然、毎日のように「お気に入りの唄 ひとり聴いてみるの♪」「夜更けの電話 あなたでしょ♪」といったメロディーを聴き続けることになるのだから、この曲が自分にとって忘れがたい名曲になることもわかっていただけるかと思います。

 

 とりわけ印象に残っているのは、この電話の留守番電話メッセージの録音についてです。

 

 当時は仕事が忙しかったことに加えて毎晩のように酒に溺れていたこともあり、暗いワンルームに帰宅するのは遅い時間帯でした。

 

 扉を開けると、まず目がいったのが、暗い部屋中に鎮座するその電話機でして、留守番電話を録音していることを示す赤いランプが点滅していたものです。

 

 今とは違って、当時は寂しかったのかな、私は多くの人脈を築きあげることに夢中になっており、毎晩のように知人や実家からの連絡があったものです。

 

 しかし、何月何日何時何分ですというボイスレコーダーの後、肝心のメッセージを残さず、そのまま受話器を置いてしまうものも多く、無言の一拍だけが残っているといったものも多くあったものです。

 

 いずれにしろ、「夜更けの電話 あなたでしょ♪ 話すことなど なにもない♪」という盛り上がりは、孤独な一人暮らしに無限世界の入り口を示すような楽しみを見出していたものです。

 

 そんなある年の歳末の時期です。

 

 私は帰宅途中に盲腸に苦しみ自力で総合病院まで駆け付け、入院することになったのです。

 

 年末年始を病院で過ごすことになったのは、今に至るまで、あのときが初めてでした。

 

 どの位入院していたのかな、退院したのは正月明けの二週目だったかと思います。

 

 まず、実家に泊まり、それから東京郊外のワンルームへと戻ったのですが、扉を開けてみてまず目がいったのが留守番電話の録音ランプでした。

 

 そうだよな、随分と部屋を開けていたわけだから、録音メッセージがたまったいるはずだと思いながら、確認ボタンを押すと、11件のメッセージをお預かりしていますというボイスレコーダーが囁きます。

 

 一つ一つを丁寧に確認していくうちに、職場の上司からの事務的連絡やら仲間や身内からの心配メッセージが多くあるのに気づきました。

 

 メールなんてものが存在しない時代だけに隔世の感がありますね。

 

 しかし、11件の録音メッセージの中にですね、非常に奇妙なものが録音されているのに気づいたのです。

 

 ボイスレコーダーは、1月1日午後7時30分です・・・・、とあります。

 

 正月三が日に残されている録音メッセージは、その1件だけでした。

 

 その奇妙なメッセージを基に私は、今でいうネット世界ならぬ無限なる電話回線世界に導かれることになるのです。

 

 

オリビアを聴きながら

https://www.youtube.com/watch?v=TgRQP9C1M4s&list=RDTgRQP9C1M4s

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