巨大な副腎腫瘤をみたときは、副腎癌、褐色細胞腫が鑑別に挙がると思うが、巨大な副腎腺腫というのも知られている。それぞれどの程度の頻度なのだろうか?

 

フランスのAix-Marseille UniversityとTimone Hospitalから以下のような報告がある。

 

 

2002~2011年にかけて750例の副腎腫瘤が紹介され、81例 (11 %) が6 cm超の巨大副腎腫瘍だった。このうち72例が手術され、52例 (64 %) が悪性、29例 (36 %) が良性だった。

 

悪性 (n=52) 

副腎癌 

23例* (悪性のなかで44 %) 

 

転移 

14例 (27 %) 

 

褐色細胞腫 (悪性) 

11例 * (21 %) 

良性 (n=29)  

腺腫 

9例 (良性のなかで31 %) 

 

褐色細胞腫 (良性) 

6例 (21 %) 

 

嚢胞 

6例 (21 %) 

 

過誤腫 

4例 (14 %) 

 

骨髄脂肪腫 

3例 (10 %) 

 

神経線維腫 

1例 (3 %)  

* 本文中に実数値の記載がないが、記載されている割合から逆算した。
転移の原発巣は肺癌 8例、腎癌 2例、婦人科癌 1例、悪性黒色腫 2例、悪性神経鞘腫 1例。

 

D Mege, et al. Contemporary Review of Large Adrenal Tumors in a Tertiary Referral Center. Anticancer Res. 2014 May;34(5):2581-8.

 

悪性の合計がn=52とならないが、それはまあそれで。
副腎癌や転移、褐色細胞腫が多いが、この報告では腺腫もそこそこあるね。

 

もちろん手術例の報告なので、画像で見る頻度とは異なっているかもしれないけどね。

この他にも、以下のような中国の大連医科大学附属第一医院からの報告もある。

 

 

2009~2018年かけて画像レポートで1160の副腎腫瘤を認め、このうち251例が5cm以上の巨大副腎腫瘤だった。このうち178例が手術された。良性が68.13 %を占め、両側例では悪性が71.88 %と高かった。リンパ腫 (66.67歳) と転移 (63.91歳) の平均年齢は、他の群より高かった。

腺腫、褐色細胞腫、副腎皮質癌、転移、神経節細胞腫の5群でCTの特徴を比較すると、腺腫の造影前の吸収値は低く、褐色細胞腫の造影効果は著明だった。

 

巨大副腎腫瘤の診断

 

全例 (n=251) 

両側例 (n=32) 

副腎嚢胞 

49例 (19.52 %) 

 

褐色細胞腫 

47例 (18.73 %) 

1 (3.13 %) 

腺腫 

42例 (16.73 %) 

5 (15.63 %) 

骨髄脂肪腫 

18例 (7.17 %) 

2 (6.25 %) 

神経節細胞腫 

8例 (3.19 %) 

1 (3.13 %) 

神経鞘腫 

2例 (0.80 %) 

 

奇形腫 

3例 (1.20 %) 

 

血管腫 

2例 (0.80 %) 

 

副腎皮質癌 

22例 (8.76 %) 

5 (15.63 %) 

小細胞癌 

3例 (1.20 %) 

 

リンパ腫 

3例 (1.20 %) 

2 (6.25 %) 

悪性黒色腫 

1例 (0.40 %) 

 

転移  

43例 (17.13 %) 

16例 (50.0 %) 

特定されず 

8例 (3.19 %) 

 

 

転移の原発巣の内訳は、肺癌 24例、消化器癌 5例、肝癌 5例、腎癌 5例、前立腺癌 1例、膵癌 1例、腎盂癌 1例、鼻の悪性黒色腫。

 

Z Zhang, et al. Clinical analysis of adrenal lesions larger than 5 cm in diameter (an analysis of 251 cases).World J Surg Oncol. 2019 Dec 16;17(1):220.

 

こちらは良性例の方が多くなっているね。