こちらは過去の出来事になります。



両親を囲んでの家族ディナーが終わり、翌朝。

この日は、午前中に両親が私たちのマンションを訪問することになっていました。

同棲を始めてから2年半、籍を入れてからは1年経過していましたが、実はまだ両親を招待したことは一度もありませんでした。

本来なら、同棲開始か入籍後の程よいタイミングで、私たちから両親を招待すべきだったのですが、何となく時間が経過してしまったのには、いくつか理由がありました。

このマンションは、元々夫が10年近く住んでいる部屋です。家具も家電も全て以前からあるところに、私が入居しただけ。ピカピカの2人の新居、という趣ではなかったこと。

全ての部屋は夫の私物であふれており、私にとっては、人様(親でさえも)を呼ぶのは躊躇したこと。

そして、1番の理由は、夫が他人を自宅に入れたがらないことでした。

夫の名誉のために申し上げておきますと、夫は、

「らぶかの両親を家に入れたくない」

と言ったことはありません。


私が忖度していただけです。
夫が不機嫌になるのを見たくなかったし、それで揉めたりするのが面倒だっただけです。


そんなこんなで、うだうだしているうちに、


「らぶかとガキ夫君の家を見てみたい」


と父から言わせてしまう結果になりました。


恥ずかしいです。


夫に聞けば「嫌だ」とはさすがに言わないでしょう。それくらいの思慮は夫にもあります。


1週間程前に、父にこう聞かれて、私は答えました。

らぶか「ああ、もちろん遊びに来て。ところで日曜日の何時ごろくる?」

「朝食終えたら、ホテルをチェックアウトして、その後向かうよ。そうだなあ。9時半でどうだ。」

らぶか「ええっ!9時半!?? ちょっと早くない?」

「だってお父さん、毎朝5時起きだから、朝食食べてチェックアウトしたら、することないしなあ。」

マイペースな父です。。。悪気なく遠慮がありません。。。年のせいか我も強くなりました。

とはいえ、両親は初めての訪問ですし、ここに来るのは今後年に1回あるかないか。今回もお茶を出して1時間ほど滞在するだけです。

高齢の父に対して、こちらの都合を敢えて押し付けるほどの無理難題ではありません。

私としては全く問題はないのですが、夜型人間の夫が何ていうだろう。。。

父には申し訳ないが少し譲歩してもらおう。

らぶか「お父さん、せめて10時半くらいにしてもらえない?最近私仕事キツくてなかなか起きられないのよ。」

「そうか。。。でもランチは早めの時間に〇子(姉)家族と食事することになっているし、その後新幹線で帰るから、お尻が決まってるんだよ。じゃあ、10時くらいならどうだ?」

(うう。まだちょっと夫には早い。。。絶対嫌がる。。。)

母は既に何かを察したのか、電話越しに、
「お父さん、あまり無理言っちゃだめよ。」という声が聞こえてきます。

これ以上時間を遅めるようお願いするのは、歓迎していないみたいで嫌でした。

両親が来るのは私は歓迎なのです。誤解されたくない。

らぶか「。。。分かった。じゃあ10時ね。」

こんな経緯があった後、夫におそるおそるお伺いを立てました。

「ええっ!! 10時、ありえないんだけど。」


やはり、予想通りの反応が返ってきました。

以前なら、もう少し大人の対応ができたはずなのに、不倫相手に夢中なせいなのか、いつの頃からか、すっかり本音全開です。

らぶか「でも元々9時半って言われていたのを、10時にしてもらったんだよ。」

「普通、そんな早い時間に来たいって言うか?」

そんなことは分かっています。
父は少しマイペースなのが困りものなのです。


しかし、自分の父のことをそんな言い方されてカチンときました。

そんなにハードルの高いことなのか?
そこまでして自分のペースを守りたいの?


らぶか「。。。そうだね、確かに訪問するには早い時間だと私も思うけど、父は朝早いのよ。ほら、お年寄りは朝早いでしょ?」

「。。。大体、この日の午前は中古CDショップのセール初日なんだよ。午後からじゃダメなの?」

らぶか「。。。姉家族とランチの予定があるし、午後新幹線で帰るそうだから。」

「年に一度あるかないかのことだし、1時間程度の滞在だから、ここはちょっと、こちら側が我慢して迎えてあげたいんだけど。。。」

結局、夫は渋々朝10時の両親の訪問を受け入れました。



そして、当日になりました。


平日大残業続きで全く整理整頓ができませんでした。朝から急いで掃除を始めます。

まず、リビングテーブルのCDの山。それに付随したビニールケースの山。

本棚に平積みになった文庫本の山。

よく分からないデパートの手提げ袋の山。

捨てると怒られるので放置状態で、私が根をあげたものたちです。

らぶか「どこかに押し込みたくても入れるところがないよ。」

「別に親なんだし、そんなに無理して綺麗にすることないじゃん。」

それって、両親の実の娘である私が言うセリフじゃないの?

「そんなに隠したいなら、寝室に入れておけば?」

らぶか「でもお部屋お披露目するんだから、寝室も見るよ、きっと。」

「寝室はプライベートな部屋だから見せるなんてありえない。」

もう勝手に言ってろ、という感じです。
夫の屁理屈でいくと、リビングはパブリック空間ということになります。ではこの散らかりようは何なのだ??

結局、寝室は絶対見せたくない、とのこだわりで、溢れんばかりの夫の私物は寝室へ押し込むことになりました。

「お母さんのためにBGMで何か音楽流しておこうか。」

母はクラシックが好きなので、夫なりの配慮のようです。

そこで、私はつい余計なことを言ってしまいました。

らぶか「BGMなら、父的にはテレビを何かつけておいた方がいいと思う。ちょっと変だけど、話の間がもてるし父もリラックスするかも。」

母、姉、私、3人共に共通する、昭和の頑固な父を何でも優先させる、父ファーストの癖が出てしまいました。

すると、夫の返した言葉は。


夫「あ、そう。じゃ、長居されると困るから、尚更音楽かけておいた方が。。。」


と言って、CDをプレーヤーに入れようとしました。

ここで、さすがに私の堪忍袋の緒がブチッと切れました。

らぶか「あのさ。逆の立場だったらどう思う?貴方の両親が例えばここに来て、私が『長居されたら困る』って言ったらどう思う?大人になって。」

夫、全く怯まず、返してきました。

「あ、そう。だったら10時に来たいってどうなの?常識ないんじゃないの、そもそも。」

らぶか「1年に1度あるかないかのことじゃない?お年寄りなのよ?確かにちょっと早めの時間かもしれないけど。そんなに我慢できないことなの?」

どうして、自分の都合しか考えないのか。


歓迎しようという気持ちになってくれないのか。


私は、夫の両親のことを夫に悪く言ったことは一度たりともない。

妻に対してだって、言っていいことと悪いことがある。

いつから夫はこんな人になってしまったのだろう。

ヒートアップしそうになった時、チャイムが鳴った。

両親が来たのだ。


荒くなり始めた呼吸を必死に整えて、両親を迎えました。喧嘩などなかったかのように、仲の良い夫婦として、対応します。

1時間ほどして、両親は帰っていきました。


私の父は、別れる時、必ず握手します。


いつものように父はニコニコして、私の手を取り握手します。

いつもの儀式なのに、涙が出そうになります。


父は、夫にも固く握手して、深い意味なく言った。

「至らない娘ですが、これからもらぶかをよろしくお願いします。」

胸に痛みが走りました。


ごめん、お父さん。


両親と別れた後、夫は14時ごろCDショップ巡りに行くと言って出かけていきました。

ふと、姉からLINEが届いていることに気づきました。

"お父さんたち、新幹線乗って帰っていったよ。お疲れさまでした。"

両親が新幹線に乗ったら、連絡が欲しい、と姉にお願いしてあったのです。

このタイミングで、姉に、夫とのことを告白しようと思っていました。


私は、姉に返信しました。