身体障害者用駐車スペース
私はアテトーゼタイプの脳性まひという障害があります。
一口に脳性まひと言っても、実にいろいろなタイプがあります。
タイプによっては、言語障害があったり、なかったり、
また自分の意志と反して手足や体が動いてしまう
不随意運動もあったりなかったりと
脳性まひの中でも、タイプが違えば、障害の現れ方も異なるのです。
また同じタイプであっても軽度か重度かでも相当の違いがあり、
一口に「脳性まひ」と言っても実に様々なのです。
ましてや「障害者」という言葉で一括りになど、絶対にできないはずなのです。
ところが世間一般には「障害者」=「車椅子」という思い込みというか、
偏見がまかり通っており、私みたいに、歩くこともできるけれども、
長距離を歩くことや、他(=健常者)の方と歩調を合わせなくては
いけないときなどには車椅子を使うという半端車椅子ユーザーには、
実に肩身が狭い、我が国日本なのです。
至る所で、この半端車椅子ユーザーの私は、
肩身が狭い思いをしなければいけないのですが、
今回は、いつも私が一人で外出する際に悩んでしまう、
身障者用の駐車場に駐めるか否かの葛藤について、
しばし、ご一緒に悩んでいただきたいと思います。
そもそも、身障者用の駐車場は、どうしてあんなに広くつくられているか、
ご存じでしょうか?
全く歩くことができない車椅子ユーザーの障害者の方が、
単独でお出掛けされる場合に、使う為に存在するのです。
車いすを自分の足として自在に操るユーザーの人達は、
運転席に乗り込み、座ったままで、自分よりも低い位置にとめてある
車いすを折りたたみ、 自分の太ももの上を滑らせて後部座席へと
車いすを積まれるのです。
かなりの手と上肢の筋肉がないと、この積み方はできないでしょう。
健常者の方でも、この積み方は慣れないと難しいほどの技と
筋肉を必要とします。
ちなみに全身にマヒがある脳性まひの障害者には、
どんなにトレーニングを積んだとしても無理でしょう。
一般的に脊髄損傷などの下半身マヒの方が、
このやり方でマイカーでの移動はなさっているようです。
「障害者」だから車椅子マーク駐車スペースに駐めていいのだ、と
思い込んでしまっているっている人が、ほとんどではないかと思いますが、
そうではなくて、この巨大なスペースが必要なのはどういう人なのか、
ということです。
たとえば、盲やろうの方も、
私たちと同じに身体が不自由な「障害者」ではありますが、さりとて、
身障者スペースと掲げるあんな巨大な駐車スペースはいらないですよね。
それは、脳性マヒである私も同じなのです。
ただやっぱり入り口までの距離が近い方がいい、というので駐めさせて
もらっていますが、その利点は「このスペースしか使えない」という人を
押しのけてまで、 身体障害者手帳を持っているからと言って
駐めてもいいものなのかどうか、とても悩んでしまいます。
身障者用駐車スペースが、無数に空いてれば悩みませんが、
1台分しか空いていない、というとき、本当に悩んでしまいます。
私の場合は、先程も書いた通り、車椅子を使わなくても歩けるので、
というか、正確に申し上げるなら、一人では積み降ろしができないので、
単独での行動のときには車椅子は使えず、 自力で歩いているのです。
ですから身障者用の巨大なスペースはいらないわけで、
そこだけ捉えるならば、ほかのところでも駐められるわけなのです。
ただ、単独故に車椅子が使えず、おぼつかない足では、
入り口近くに駐めなければ、その後の体力も持たない・・・。
だから、入り口近くの身障者スペースに駐めさせてもらいたい。
でも、そこしか使えない車椅子ユーザーの方が来られるかもしれない。
しかし、入り口に近い一般の駐車場は空いていない・・・。
しかも、これだけ混んでいると、何でもない人が身障者スペースに
駐めてしまって、 せっかくの気遣いが無駄になるかもしれない。
そうなるぐらいなら、一応ホンモノの身障者ユーザーである私が
駐めている方がまだ救われるか…などと、 駐車場内をぐるぐると
逡巡してしまいます。
逆に比較的空いている駐車場でも、同じで、
車椅子マーク駐車スペースが1台分・ポツンと二つの三角コーンの間に
バーを渡して確保してあるようなところでも、はたまた悩んでしまいます。
いつもポールがそびえ立ち、巨大な一等地のスペースが空いていると、
「どうせ使う人なんていないのにねぇ」
とか思われて、身障者の駐車スペースがなくなってしまうのも困るし、
PRを兼ねて一丁駐めさせてもらうか、と思う反面、
そこしか使えない方が来られると困るだろうしなぁ~と、
これまたぐるぐる逡巡。
思いのほか、これが結構なストレスになるのです。
身障者駐車スペースを数台確保できるならば、
従来の車椅子ユーザーの為のゆったりとしたスペースの隣に、
他の駐車スペースと同じ大きさの“身障者用”の駐車場を、
是非とも作っていただきたいと願わずにはいられません。
そんな身障者駐車場があれば、私のような車椅子ユーザではない
障害者も、葛藤することなく、安心して駐められるのに・・・と。
そもそも身障者のシンボルマークが車椅子マークであることでも
象徴されているように、「障害者」=「車椅子」という常識が
まかり通っていることが、おかしいのです!
この常識が覆されない限り、ノーマライゼーションやバリアフリーを
進めても、ごく一部の障害者にしか喜ばれない、本来の意味とは、
ほど遠いお粗末な建前だけの福祉対策に終わってしまうと思うのです。
なにも専門的な知識や難しいことは必要ないのです。
福祉に限らず 〈少しだけ相手の立場になって想像してみる〉
これができたならば、 きっと世の中ずいぶんと住みやすくなるのに、と
思うのは私だけでしょうか?
