こんにちは。
渡邉ひとしです。
第257話のテーマは
『2026年3月期までの課題』です。
(ブログ=月水金の平日投稿です)
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積極的に進めてきたM&A(合併・買収)
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「にっしんぼう(日清紡)」という名で
呼ぶことが多い<日清紡績>ですが
その創業の歴史は
明治にまで遡ることができます。
1907年2月(明治40年)に
<日清紡績>が設立され創業しました。
その後は
1915年に<高岡紡績>を買収
1921年に<岡崎紡績>と合併
1924年に<東京紡績>と合併
1937年に<川越紡績>を買収
1942年に<愛知物産組>を買収
1944年に<湖東紡績>を統合
1945年に<南進製機明治工場>を買収
と矢継ぎ早に同業の会社を
M&A(合併・買収)しています。
その後は自社内の工場の新設や
工場の操業停止などを繰り返していますが
2004年から再び
M&Aを積極的に進めています。
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<日清紡HD>のビジネスモデル
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2017年3月期の連結純利益が
前期比54%減の見通しと発表しました。
子会社の<日本無線>による
消防無線談合を巡る課徴金納付に備えて
特別損失16億円を計上したことや
円高が進んだことで
ブレーキ事業の採算が悪化しました。
第2次世界大戦中の1944年に
ブレーキ摩擦材事業に参入しましたが
2011年には
ブレーキ摩擦材大手である<TMD>を
買収して世界シェアの首位になりました。
しかし
売上高は大きく増えましたが
5期連続で営業赤字になりました。
この要因は「のれん償却費用」が
年間約57億円発生したからですが
2017年3月期で完了しています。
<日清紡HD>は世界の自動車メーカーと
幅広く取引があり世界シェアも首位のため
今後の収益がおおいに期待できます。
2017年4月には
家庭紙を中心とした製紙事業を
<大王製紙>に250億円で売却しました。
これは
<日清紡HD>が事業の選択と集中を
加速しているためで
1945年以来70年以上の歴史のある
製紙事業を売却して撤退を決めました。
河田正也社長は2016年度から
約10年間で3000億円を
M&Aと設備投資に当てて
エレクトロニクスや自動車関連分野に
重点的に資金を投下する方針です。
2005年に
マイクロ波電子管や半導体などを製造する
<新日本無線>を子会社化しました。
2010年には
無線通信システムを製造・販売する
<日本無線>と<長野日本無線>を
子会社化しています。
これにより
無線通信機や半導体などの
エレクトロニクス事業が
<日清紡HD>の売上高全体の
約40%を占めるようになりました。
自動運転車向けの車載センサーや
車間通信に使う機器などの自動車市場に
無線事業の経営資源を集めていきます。
<日本無線>は<日本郵船>の
航海士からの意見を踏まえて
画面に書き込める書き込み可能な
電子海図システムを開発しました。
開発した電子海図システムは
他の海運会社からも評価が高く
この電子海図システムの対象市場は
世界で1万隻程度あるとみています。
単なる機器の販売ではなく
気象予測システムの構築や
集めたデータを使った運航支援サービス
などへの展開も視野に入れています。
「繊維から無線へ。
エレクトロニクスの集団に
なるという意識付けだ」と
<日本無線>などの子会社化について
河田正也社長は説明しています。
つづいて
ブレーキ摩擦材事業は
売上高全体の約30%を占めていますが
アメリカでは摩擦材に使われてきた
銅を対象とする環境規制が強化されるため
<日清紡HD>が開発・生産してきた
銅をほぼ使わないブレーキ摩擦材の
需要の拡大が大きく見込めそうです。
そのため
200億円を投資して中国とアメリカで
ブレーキ材の生産を増強します。
2017年7月には
中国で新会社を設立して
山東省に新工場を建設します。
アメリカではブレーキ材の能力を増強し
環境規制に対応するため
100億円で生産設備を入れ替えます。
その一方で
祖業である繊維事業の売上高は
売上高全体の約10%程度になっています。
2017年10月にアナログ半導体事業の
<リコー電子デバイス>を
子会社化すると発表しました。
<リコー電子デバイス>の買収で
売上高が800億円弱になりますが
数年で売上高を1000億円までに
引き上げることを目指します。
<日清紡HD>は2026年3月期に
1兆円の売上高を目指していますが
その時点での事業構成は……
◉エレクトロニクス事業で40%
◉自動車関連事業で30%
◉その他の事業で30%
という構成比率で考えています。
その他の事業とは
⑴ 繊維などの素材・生活関連
⑵ 新エネルギー
⑶ スマート社会関連
の3つの事業になります。
しかし
現状の売上は約5000億円のため
1兆円にするためには
さらに売上として5000億円の
上乗せが必要になります。
河田正也社長はその上乗せ分を……
◉既存事業の成長で2500億円
◉企業のM&Aで2500億円
と見込んでいますが
5000億円の売上高の既存事業を
150%まで高めることは
それほど容易なことではありません。
さらに
自動車とエレクトロニクス関連を
M&A(合併・買収)することで
2500億円を新たに上乗せするのも
簡単なことではありません。
というのも
M&A(合併・買収)の効果が出るまでに
早くても数年かかるからです。
もちろん
毎年の売上高が2500億円になるように
企業を買収すれば達成しますが……。
したがって
2026年3月期の目標達成までと
それ以降のビジネスモデルは変わります。
いずれにしても
既存事業の成長とM&A(合併・買収)が
<日清紡HD>の当面の課題です。
(次回ブログ=4月18日水曜投稿です)
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このことから何を学べるでしょうか?
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祖業や本業が衰退傾向にある企業は……
自社の持つ技術やノウハウなどを
有効活用できる事業を
開発する必要がある。
その時には
勇気と覚悟と智慧をもって
トップダウンで実行しなければ
成功させることができない。
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