21) ヒッピー・バイブ | BIG BLUE SKY -around the world-

21) ヒッピー・バイブ

第二十一話) ヒッピー・バイブ

2022年 6月15日、パーダーン・ホテルの先客氏とともに、近郊を一回りすることにした。

車を借りてパーテーム国立公園に行こうかと思ったが、午後は天気が怪しそうだ。
雨が降ったら、赤い崖を一回りするのは大変だ。
どこへ行こうかと思案して辺りを見回すと、ラオスとのチョーンメック Chon Mek 国境検問所が、5月23日に正式オープンとの宣伝が目に留まる。
そうだ、国境手前の湖岸リゾート地 パッタヤー・ノーイ Pattaya Noi へ行くことにしよう。

パッタヤー・ノーイまでは、217号線を東へ真っすぐ 70キロ、約一時間の道中だ。
この国では免許証が無くても車を借りることが出来るが、もしも事故を起こしたら面倒なことになる。
国際運転免許証を有する私が運転手を務めて、先客氏にはスマートフォンで車中の音楽を担当して貰った。



[洒干倘賣無/蘇芮] (1983)


一曲目から、"洒干倘賣無 (by 蘇芮)" とは何てこった。
この歌知ってる?  知ってるよ、確か古い台湾映画のテーマソングだ。
華南地区の足按摩店で、何度も聴いた揚琴演奏を思い出す。

でもどうして、フランスからタイに来て台湾の歌を聴いてるんだ?  YouTube だからですよ。
答えになってないよ、これもヒッピー・バイブなのかい ...  

まあ、日本のシティ・ポップをとりとめもなく聴くのと同じことなのだろうと思い、せっかくだから台湾ロッカー 迪克牛仔 Dick and Cowboy によるカバーを紹介する。
パッタヤー・ノーイまでの道中、そのようなやりとりが続いた。



[果てしなく続く無人の水上レストラン群,パッタヤー・ノーイ] (Jun-15, 2022)


9年振りのパッタヤー・ノーイは、閑古鳥が鳴いていた。
駐車場の車は数えられるほどで、水上レストランに人影は殆ど見えず、湖上の物売り船は一艘あるかないか ...  
これではバナナボートやパラグライダーは休業中だろう。
威勢のいい客引きもいないので、車を停めたところに程近い、比較的新しい水上レストランに入って、湖上に突き出した先端近くに席を取った。

席に着くと同時に、目ざとい物売り船がやって来た。
先客氏は、客がいなくて気の毒だからと言って、料理を一つ頼む。
コロナ禍でなければ、ただでさえ多くの客が来る場所だから、チョーンメック国境オープンの恩恵を被ることが出来ただろうに。
そう思うと何だか気の毒になり、私も料理を一つ頼んだ。



[湖上の物売り船,パッタヤー・ノーイ] (Jun-15, 2022)


他には一組の客もいなかったので、場所は使い放題、セルフィ―も撮り放題で、寂しいながらも楽しめた。
お店の数少ないスタッフのサービスも良く、今日は良い午後が過ごせたと思う。

料理を一通り食べ終えてのんびりしていると、急に風が強くなって来た。
湖とは言えども強風でウネリが生じて、水上レストランは大きく揺れ始めた。
となりの休業中の店は、強風でトタン屋根が丸まって飛ばされんばかりだ。
何だか凄いことになって来た。



[強風に煽られるトタン屋根,パッタヤー・ノーイ] (Jun-15, 2022)


雨が降る前に席を立って車に戻ることにしよう。
お店の数少ないスタッフに手を振って退散する。
帰りの道中では、また先客氏のプレイリストを楽しむことにしよう。


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