覚えていますか? | アラフォー霊能者 滝沢洋一の備忘録

アラフォー霊能者 滝沢洋一の備忘録

リラクゼーションサロン『竜の棲む家』オーナーセラピスト兼霊能者です。
鑑定歴は二十年以上、年間数百人以上の方を鑑定して予約サイトCoubicでは5.0の口コミ評価を200以上頂いています。

「千年前の約束、覚えていますか?」

「なに、一体全体?」

酒を飲み交わす宴会場に似つかわしくない、剣を佩いた美貌の麗人が立っていた。

年の頃は17、8歳といったところだった。

長い黒髪を後ろで一つに束ね、切れ長で細面の目は相手を射貫くようにも見える。

今は酒に酔っているのか、頬がほんのりと赤く紅を指していた。 

「あの時の約束、覚えていますか?」

「あの時の約束?はて・・・またいつか、会えたら旅をしたいか?」 

「・・・・忘れていたんですね」

人間ならば誰もが振り向くだろう美しい顔が般若の形相になった。

「忘れるもなにも・・・・もうあの頃とは何もかも違うぞ?」

「違っていません!」

その大声に反応して周囲が振り返った。

「確かにあの頃とは違い、ますけど・・・・あなたは、私達に、だけは、心を向けて・・・」

目が怪しくなってきたかと思うと、剣を抜くなり相手に斬りかかった。

「そんなのだから、そんなのだから・・・・!!」

「あ、あのなぁ!」

「良くない」

一刀両断の勢いで斬りかかる相手に対抗して、明けの明星のような輝きを纏う剣を抜こうとした。

その動きを察知したのか、背後から美貌の麗人を抑え込んだ者がいた。

「奈央!もっと早く取り押さえろ!

危うく彩に斬り殺されるかと思ったわ!!」

「・・・・そう簡単に、斬り殺されるほど、あなたは弱くない。

その気になれば私を素手で抑えられる」

酒に酔って少し様子が怪しくなっていたが、言葉はしっかりしている上に目はしっかりと相手を見ていた。

「それはそれでいいが・・・・酔ってないか?」

「・・・・彩はすぐに酔う」

淡々と言うと、手刀を落として気絶させた美貌の麗人を担いでいった。

「たくっ・・・・命がいくつあっても足りやしない。

それにしても千年前の約束か・・・忘れることはないさ」

(もう一度また会えたらその時はみんなで旅をしよう、平穏無事な世の中を歩いて行こう。

いつになるかわからないが約束だぞ。

そう言って別れた仲間のことを忘れるはずがないだろうが)

「浮かぬ顔をしてどうしたんですか?」

勢いよく酒杯を煽った彼を心配したのか、日に焼けて浅黒い肌に整った顔の男性が声を掛けた。

「なんでもないさ、陽将。

それよりも・・・・酒の席くらい剣を帯びることはやめたらどうだ?」

「そういうあなたこそどうなのですか?」

悪戯ぽく笑うと、手に持っていた盃をそっと慎重に、彼の盃に触れた。

その顔は整っていて、人間ならば間違いなく女性を惹きつけてやまない顔だった。

「あの子はともかくとして、今のあなたに斬りかかる勇気あるものはまずいないでしょうね。

それなのに剣を帯びるのはどうしてですか?」

「どうしてっなぁ・・・・やめた、飲むか!」

「それでこそあなたですよ、今夜はとことん付き合いますからね!」

「望むところだ、酔いつぶれるまで飲んでやる!!」

 

 

その後、仲良く二日酔いになったことは言うまでもなかったそうです。