2005年5月11日 朝日新聞
仕事「考」
日本旅行西日本営業本部 販売部マネージャー 平田 進也さん
「4時間の家出」。
いきなりですが、これ、私が引率するツアーの名前なんです。
子育てが一段落した女性たちが大阪の歓楽街・北新地へ繰り出して楽しむ。
接待だ、付き合いだと飲み歩いた夫への鬱憤を晴らす、別名「あだ討ちツアー」
まずは座っただけで一万円札がとぶ高級クラブへ。
「ちくしょー、こんなええとこで遊んでんのか」。
ひとしきりだんなさんの悪口を言うて、ママにも鋭い質問を浴びせます。
それからムードたっぷりのレストランで夕食。
閉めはニューハーフショーのマツケンサンバでストレス発散です。
どう思います?
なぜこんな企画を思いついたのか。
ある日電車で、義母を介護している女性の会話が耳に入ったんです。
「私な、毎日同じことの繰り返しでほんまに疲れる。主人の母親なのに、きつうあたってしまう。私は罪人やろか」。
私は思わず口をはさんでました。
「罪人やないです、心の余裕がないだけやと思います。」
こういう「おばちゃん」たちが日常を忘れ、心の底から楽しめるツアーを考えるのが僕の務めや。
そう思いました。私は頭をひねりました。
この女性はその後、「4時間の家出」ツアーに参加してくれました。
「平田さん、これで帰ってお母さんにええ顔できそうです」。
この一言が僕の宝物やと思っています。
お客様はいつも「私を満足させてや」「楽しませてや」と心で言ってます。
それに真剣に耳を傾けたらお金も使ってくれるんです。
サービスは無限。
期待以上のことをしようとアホもやりました。
どんなことで喜ばれ、怒られたか。
ゆっくりお話します。
著者:
57年生まれ
会員一万4千人のファンクラブを持つ。
「浪速のカリスマ搭乗員」。テレビ出演も400回を越す。著書に「出る杭も5億稼げば打たれない!」
朝日新聞生活部 hataraku@asahi.com
面白いと思ったのは
①電車の中の会話に関係ないのに割って入ってしまう社交的な性格+それを実際に企画にまで高めて、当事者に参加してもらうという決定力が面白い。
②4時間という時間設定が、看病している人にも参加が実現可能な範囲でよい。
③ネーミングがいい。「家出」「あだ討ち」が面白い。
④「うっぷんを晴らす」「悪口を言い合う」というのは初対面の人でも共有しやすいことなので、参加者同士の連帯が生まれる。
チャンスを見つけられる感性+ゴールまでつねげられる決定力=カリスマ
なんですね。