歳上の友人の息子さんが結婚した

花嫁の着ている衣装は、友人の奥さんが着ていたもの…
結婚当時、かなり苦しい経済状況の友人が自分のできる精一杯で奥さんに贈ったものだ
それをお嫁さんが自分に合わせてリメイクしたのだが、決して華やかとは言えない…
主役である新婦が、お呼ばれされた女性客よりも地味なのだ
なかには出で立ちに関する意地悪な質問をする女性もいるが、微笑みを絶やさずサラリと流し、
「来てくれてありがとう」
の一言と、幸せオーラ全開でそれ以上の質問は受け付けない

友人の奥さんは、新婦が
「お義母さんの花嫁衣装を着たい」
と申し出たとき、一旦は反対した….

あまりに地味だからだ

それでも新婦は着たいと言った
「わたしは苦労を知りません…恵まれていると思います…そのことは両親に感謝しています
お義母さんの花嫁衣装を受け継ぐことで当時のお二人の気持ちを感じたいですし、なにより、彼のお嫁さんになるという覚悟のあらわれです」

友人と奥さんは式も、披露宴も挙げていない…
婚姻届を出したあと、記念に写真を撮っただけ…
見せてもらったことがあるが、正直とても結婚を記念しての写真とは思えない

式での新婦の姿に、友人は人目も憚らずに号泣した
「あの時…俺が贈…息子のお嫁さん…着て…」
当時のことをあまり語ることはなかったが、かなりの苦労をしてきたらしいことは聞いていたし、その涙で察することもできる

友人の奥さんはそんな夫を見て泣き笑いをしている…



式を終えた新郎新婦はサプライズを用意していた
フォーマルな服装に着替えると、訝しがる友人夫妻を半ば強引に拉致(笑)

 「今日は父と母の結婚記念日でもあります…
が、二人だけの式を挙げただけで指輪すらなかったそうです
改めて父と母にちゃんとした式を挙げてもらおうと思い、悪だくみを企てました」

旧郎(笑)の待つところへ、息子にエスコートされた花嫁がやって来た
衣装の長い裾を持っているのは義娘だ

二人の花嫁は終始泣いていた
旧郎と新郎も泣いている(笑)



花嫁のお父さんの婿惚れは凄いらしい…
娘が嫁に行く寂しさよりも、息子ができる嬉しさに泣いているようだ
が、当初は花嫁の父のお約束

反対しまくっていた…

花婿の本質を見抜いていた花嫁の母が説得し、渋々折れたと言っていたが、実は息子が欲しかったらしい…
キャッチボールやスポーツ観戦に連れ回し、キャッチボールのためだけのグローブを花婿に買ったとも聞いた
今では「二人だけ」で飲みにも行っている
 
友人夫婦の「二度目にして本当の結婚式」を提案したのは花嫁の母である
娘に結婚の覚悟を問い、
「その覚悟を彼の両親にも示しなさい…言葉だけでなく、行動が伴って伝わることがあります…結婚に責任と義務が伴うのは男の人だけではないの…女にも当然生じます」
母からの問いに、娘は一生一度かもしれない晴れ舞台での華やかさを封印した…
この母にしてこの娘あり
彼女の覚悟の程が伺える

この両家は必ずうまくいく
困難を困難とも思わずに乗り切っていくに違いない


後日談
友人夫婦はお嫁さんにとても綺麗なウエディングドレスを贈り、写真館で写真を撮ったそうだ
息子を差し置いて、夫婦でお嫁さんとどっちが先に写真を撮るかとバトったと言っていた