松田くん(仮名)は小学校4年生の時、クラスのヤンチャな男子に毎日虐められていました。登校してくるなり飛び蹴りをされたり、使いっ走りのようなことをされたり、突然ボコボコ殴られたり、、そうすると松田くんは「止めてください、ごめんなさい、痛い、ごめんなさい」と言いながら逃げていました。
私は自分が小学校3年の時に虐められていた時期があって、それが本当にキツかったため、男子が松田くんを虐めているのを見ているのが耐えられなくて
「ちょっと△△、松田を虐めるのやめろよ!!」
と虐め男子に怒鳴ったりしていました。そして、何も悪いことをしていないのに謝る彼には
「松田、悪いことしてないのになんであなたが謝る必要あるの?謝ると舐められるんだよ。やり返したっていいんだよ!」
とはっぱをかけていました。
そしてあまりに酷い場合は担任に言いつけたりしていました。
「あの時は本当に辛かったよ。虐めていたのは△△だけじゃなかったしね。でも○○(←私の本名)さんだけが僕をかばってくれて、僕、どんなに救われたか。本当命の恩人だよ。だから今日本当に会えて嬉しいよ」
と言われたのです。
私自身は実はあの時期、全然松田くんを守れていないと感じていました。実際に私が虐めている男子に注意したからと言って、男子たちの松田くんへの虐めが全てなくなった訳ではなかったからです。
でも、あの時期松田くんの中では私の存在は確実に彼のよすべだったのだと、彼があれから40年近く経った今も感慨深く語してくれる姿を見てそれがわかったのです。
「命の恩人」
とまで言われたのは人生で初めてですが、松田くんの表情を見るとそれは決して大袈裟ではないとわかりました。
自身の正義感の強すぎる部分に生きづらさを感じることの方が多かったのですが、昨日は自分の正義感は間違っていなかったのだと、こちらも救われた思いがしました。
「松田くん、私も今日はすごい嬉しい気分だよ」
私は答えました。
こちらこそ、感謝している。
やっぱり、人は人によって救われる。
小日向るり子