身体疾患が原因で精神症状が出ている患者さんも多くいます。


認知症についてはまた別の機会に。

今回は私が経験した中で、多かったものを並べてみます。

精神疾患起因ではない精神病症状を知っていただきたいので、それぞれ簡単に列挙します。

詳しく知りたい方はドクター説明のサイトをご覧ください。



1つ目です。

血液中のナトリウムという成分が少なくなりすぎると、命の危険もありますが、その過程で、虚無感、疲労感が出現し、錯乱状態に陥る事があります。

急激な精神病症状だと思われていたケースがありましたが、採血で判明します。

この原因は様々で、精神科の患者さんなどでよく、水中毒と呼ばれる水を飲みすぎる方に起きることもありますが、

そうでない方も、心臓や腎臓、甲状腺の病気などでもおこったり、お薬の副作用でおきることもあります。

その他も原因は様々あります。



他に多かったのはステロイド剤の副作用です。

ステロイドってよく聞くおくすりですが、

膠原病、皮膚疾患などなど大量投与を治療とする疾患があります。

ステロイドには副作用のひとつにステロイド精神病と呼ばれるものがあり、多量投与の患者さんに精神症状が出現することがあります。

躁状態、特に多幸感や易怒性、易刺激性などが多いように感じていました。

また、うつ状態や、不眠、認知機能障害などが起こります。

治療はステロイドを減らしていくんですけど、なんせ元々の疾患があるためそのバランスが難しいこと、ステロイドは急にゼロには出来ないので、時間がある程度必要でもあり、精神科に転科せざるを得ない方もいました。




膠原病の中にはSLE(全身性エリテマトーデス)という疾患がありますが、その中でNPSLEと呼ばれる神経精神障害をきたす病態もあります。

統合失調症のような症状を見る方もいれば、うつ病や躁状態のような方もいたり症状は患者さんそれぞれでした。

SLEは難病で、日本には6万人から10万人ほど患者さんがいらっしゃるようで、半分くらいに精神症状が生じると言われているそうです。




脳炎の患者さんも精神症状を呈される方がいます。

錯乱状態のようになり、精神科に連れてこられたけれど、精査をしたら脳炎だったということはそこそこケースとしてありました。

脳炎には感染性のものと自己免疫性のものとがあるのですが、精神科治療ではなく、基本的にはもちろん脳炎治療が必要です。

特に経験したものは、抗NMDA受容体脳炎というものです。

多数は成人女性の卵巣腫瘍に関連して発症しますが、卵巣腫瘍以外の原因でも発症するそうです。

若い女性の精神病症状では骨盤MRIを撮影していました。

脳炎治療と並行して、卵巣腫瘍の手術を行います。

精神科だけの病院ではもちろん治療ができません。



こういったように、身体疾患が原因の精神症状も多くあります。

書いたもの以外にもありますし、私が知らない原因も沢山あると思います。

何が言いたいかと言いますと、本当は全身の検査をしてから精神科治療にうつってもらいたいですが、

全身の検査というと途方もなく、身体疾患を疑う症状が少ない場合には難しいことが多いと思います。

精神疾患だと思われ治療していても、治療がうまく行かない場合、本当は身体疾患が潜んでいることもある、という事を知っていただければと思います。

そういうケースの患者さんもそこそこいました。