前回の記事では、家族の理解を得られない、という方向でしたが、

逆のパターンもあります。


心配しすぎる、ということです。

心配自体はよくわかりますし、必要な感情です。

ですが、心配しすぎるがゆえに、あれやこれやと手を出しすぎたり、必要以上に医療者に配慮を求めてくる家族もいます。


そういう患者さんの家族を過干渉、といったりします。

(精神科では過干渉だけでなく、再発のリスクを高くする家族のことをhigh EEと呼びます。)


体感では、10代からなど若い頃からの病歴の患者さんの家族に比較的多いような気がします。


例えば、普通の発達過程だと、成長とともに徐々に親から離れていくような親子関係になっていくものだと思うんですが、発症した年齢のままの対応をずーっと続けてしまっている事が、ともすればその年齢より遡った対応を続けてしまうことが多いのかなと思います。



患者さん本人の話を聞きたいのに、様子を聞くと隣の母親が喋り続けるとか、入院の準備も手続きも全部家族がするとか。

この薬ちょっと調子悪そうに見えるので、変更してください、あの病院は看護師が悪くてうちの子調子が悪くなるので、転院先はここにしてください。

など、本当は患者さん本人が、医療者と適切な治療関係を築き、自分で相談していけないといけないんですけど、そういう隙を与えずに家族が全部やってしまう。

これが中学生、高校生の患者さんとかならまだいいんですが、20代後半、ともすれば40代、50代の患者さんに対してこういう家族もいます。


治療的な話だけではなく、日常生活全般に過干渉なことが多いです。

うちの子は好き嫌いが多いので、これ食べさせてあげてください、と段ボールいっぱいのカップラーメンを渡される、

1日一本渡してください、と大量の炭酸飲料を汗だくになりながら持ってくる、

渡すと全部食べちゃうので、ポテチを食べるときは看護師さんの方で半分にしてあげてください、

とか言われることも結構あります。

(患者さんに気持ちが行き過ぎて、そもそも病院に大量の食料お菓子を預けれるか、という考えには至らないみたいです。)

患者さんは中年と呼ばれる年齢であることが多いです。


患者さん本人も、そうやってもらうのが当たり前になってくるので、自分で出来るようになりません。出来なくなります。やらなくなります。

酷くなると、やってもらえないことに、準備されないことに、癇癪をおこして暴れる患者さんもいます。



出来ないからまたやってあげる、暴れるからまたやってあげる。

その悪循環で、とても健康的な関係とは言えません。



過干渉は両親であることが多いのですが、ここまでくると、家族が患者さんを悪化させていると言わざるを得ません。

少し厳しいことを言うと、こういう家庭は、ご両親が健在だからこそぎりぎり成り立っているわけです。


ただ、順番に行くと必ず、ご両親が先に年老い、健康ではなくなり、亡くなってしまうのです。

そうなったときに、自分では何もできない子供だけが残されるだけではなく、自分でなにもやろうとしない、もしくは癇癪を起こす、暴れまわるといった、兄弟、親戚、社会資源(施設やヘルパーさんなど)がお手上げ状態にならざるを得ない状況が残されてしまうのです。


そうならないためにも、ご家族さんにも、患者さんが自分の力で出来ることは何か、獲得できる力は何か、まっさらな状態で考えて頂く必要があるのです。