六角精児とライ・クーダー | 錦鯉春助の冒険

錦鯉春助の冒険

日常の恐ろしき風景

 テレビで見る旅番組はNHKBSの六角精児の飲み鉄(不定期)だけだ。


 初めて観た時に六角精児バンドの曲が流れたが笑ってしまった。ボーカルの六角の唄い方はライ・クーダーそのものだ。


 ライ・クーダーは僕も好きだ。特に1970年代半ばのアルバム【スキンチキンミュージック】は名盤だ。


 それに生ギターで歌うテネシー・ワルツを聴くとやたらウィスキーが呑みたくなる。ワインやビールやカクテルや日本酒でなくウィスキーだ


 番組は六角精児が電車に乗り、酒を呑むだけの単純な番組だ。名所旧跡も廻らないし、アダム・スミスの富国論も語られない。


 六角が乗る電車にJRは殆どない。地方の小さな電鉄会社の電車ばかりだ。だから過疎地ばかりになる。


 ガラガラに空いた(或いは逆に満員の)車内の座席で六角が呑む酒は缶ビールかワンカップの日本酒。肴なしで呑むから、かなりの酒好きだと分かる。


 彼は酒蔵を訪ねて途中下車するが過疎地の見事なほどに錆びれた町ばかりである(笑)


 こんな旅番組はない。今日の日本の地方の姿が垣間見れる。


 過疎地だから宿はシティホテルや一流旅館はない。江戸時代の木賃宿みたいな所だ。六角はそこで土地の新鮮な食材を肴に地酒を呑む。番組を忘れ呂律が回らぬほど飲む。


 単純な番組だが濃密で深い時間が流れる。


 近年の地上波は無意味なドタバタを繰り返し、傲慢で無作で差別的で手抜きの時間しか流れない。