ハワイ州立大学医学部人体解剖学実習室レポート
『大腰筋は触れるかについて』
KenYamamotoテクニックアメリカセミナーと
医学部人体解剖学実習室に参加した30人は
一斉に日本に帰ってしまった。
ずーっと一緒にいたから俺、
なんだか寂しい気なってきちゃったよ。
1日何時間一緒にいたんだろうか?
3日間の人体解剖実習時間17時間半以外にも
1日2時間程の実習後のシェア会も開催したので、
3日間で懇親会も含め30時間近く一緒にいたことになる。
それに加えてKYTセミナーから参加したメンバーとは、
もう何時間か数えられないほどの時間を共に過ごした。
俺達はマルでクラスメイトの様な存在になり、
何というか日本に帰っていく先生方のことがクラスメイトが
去っていくかの様な何だか切ない気持ちに感じてしまった
。
俺とジャーマネ藤田以外は全員今朝帰って行ってしまったんだ。
今日1日オフで明日はハワイ大学の大学院で講義を頼まれている。
アスレチックトレーナーのマスターコースだ。
ソレを終えるとまたロサンゼルスに戻るか
日本に戻るかまだ決めかねているところだ。
ロサンゼルスでハリウッドの映画監督が
酷い腰痛と聴いていて施術を頼まれているんだ。
ソレに末期ガンのMr.Leeの容体も気になっていた。
オフになると急に現実が戻ってきた。
腰痛研究以外にも様々な作業をこなさなければならない
溜まっていたメールに一つ一つ返事を書くが、
でも、やっぱり眼を閉じると
解剖学実習室の新鮮な勉強が蘇ってくる。
驚きしかないびっくり箱の様なそんな世界だった。
脂肪腫を見つけた。そこには血管が付いていた。
だから脂肪腫は大きくなり続けることができるんだね。
とか
ドクターによる女性器や男性器の解説もあった。
ダグラス窩(直腸子宮窩)って意外に面積が小さいな。
とか子宮って思ったより小さいでもしっかり付いている。
とか
膝の関節の中の前十字靭帯や後十字靭帯はそれぞれが
二重の靱帯組織からなっていて捻れながらついていた。
とか
前十字靭帯が切れるのはほぼ剥離骨折であり再建術は
大腿骨に穴を開けて剥離したところを引っ張り固定する。
とか
そんなのは何ていうか、
もういちいち感動するレベルではなくなっていた。
それよりもショックが多すぎて大きすぎて
容量が完全にオーバーしてしまうレベルだった。
仙腸関節の話や肩関節の95%はストレッチで治る
という事実だとか大殿筋や脊柱起立筋の走行や厚さに
ショックを感じていた受講生はそのショックを
大分引きずっている様子だったんだ。
分からなくはない。だって俺も通ってきた道だから。
86歳の婆さんの脊柱起立筋の幅は片側で4センチ
以上あったし深さだって相当になもんだった。
俺はどうかと言うと、人体解剖はコレで23体目と
記憶しているけど今回もまだまだ経験不足を痛感したよ。
100体以上みなければ解剖学が分かったという
レベルには到底追いつかないなと感じてしまった。
知った気になっていた鼻を今回も
ペキペキとへし折られた気分だった。
人体解剖の今回のメインは再び大腰筋は触れるかだった。
側腹から背骨に向かって指を最大限に挿し入れて行き
股関節を屈曲していくと動いている筋肉に触れるだろう。
この筋肉は大腰筋ではないのかな?
コレをどうしても確かめたかったんだ。
御検体の背部の解剖が終わると俺達は3体とも
仰向けでの解剖に取り掛かったんだ。
胸郭を開き肺や心臓についての講義を受ける。
腹部の筋肉の講義の後、俺達はいよいよ大腰筋の
位置を確認するために腹部の筋肉を取り外したんだ。
そこに現れた消化器系統を見て俺たちは思ったんだ。
完全に前から触れるはずがない。
大網、腸の厚み、後ろの腹膜に向かうまで相当な量の
腸の存在が前から大腰筋に迫る危険性を感じてしまった。
もしも腸に閉塞があり押し下げることにより腸を
傷つけてしまったらどんな事故になってしまうのだろうか?
自覚がない腹膜炎があったとして炎症を
助長してしまった場合はどうなるだろうか?
ディープな位置にはドデカイ大動脈タチがいるわけで
今回の御検体でも大動脈が石灰化していて押すと
パキッと音がして血管がモロくも割れてしまった。
誰もが前から押すのはやめた方がいいと
思ってしまったし腸の後ろにある膜を取り除き
腹膜後器官である腎臓とほぼ同列の大腰筋を触れたんだ。
前からも後ろからも試してみた。
位置的にディープ過ぎる。
横から触れた場合腎臓がありかなりの
リスクを覚悟しなければいけないと感じた。
大腰筋が触れられるということは
腎臓も触れられることになる。
だって腎臓の方が外側だからだ。
様々な方法を思案した。
側臥位にすれば腸が下方へ行ってくれて
スペースが出来るんじゃないか?と誰かが言った。
ところが全ての内容ブツはアンカーが付いており
ほぼ位置を固定されているのを知り誰もが諦めて
しまったんだ。
答はやはり触れないで終わりかけていた。
目視すれば誰でもそう思わざる終えない。
おばあちゃんの大腰筋は腸骨稜から
7センチ強の位置にあった。
この測定は脂肪や皮膚は乗っていない状態での話だ。
皮膚も脂肪組織も既に取り終えた後だったからだ。
コレが事実だった。
去年の人体解剖実習はココまでで終わってしまった。
だから触れない。と前回文章を書いた。
俺は誰もが諦めた中、助教授に確認しに行った。
「大腰筋の位置も深さもよく分かりました。
ところで先生、僕のお腹を触ってください。ココです」
そう言って先生の指を俺の側腹に突っ込んだんだ。
「この奥の筋肉は何という筋肉だと思われますか?」
股関節の屈曲伸展を繰り返しながら押させたんだ。
「この動きで動くのは大腰筋だね」
先生が言った。
俺達はその後大腰筋の話を聞いた。
指先で触れられるこの大腰筋に辿り着くまでに
様々な臓器がありその先にある大腰筋を触れる
リスクも充分に解説を受けた。
揉むとかツンツン押し込むコトとか非常に危ないなと感じた。
後面から鍼を刺すのはどうだろうか?
鍼灸師の先生は鍼を当て、クビを斜めに振った。
固い胸腰筋膜から鍼を差し入れ腰方形筋を通過して
ギリギリ届いた。
しかしコレにも皮膚や脂肪は乗っていない。
つまり鍼灸師の先生が持ってきた鍼では
脂肪組織や皮膚が乗っていない状態で
ギリギリ届いたという首の振り方だったのだ。
もっと長い鍼ならば可能かもしれない。
鍼灸師の先生は細かく角度をメモっていた。
触れられると言っても皮膚を押し込み脂肪や
筋膜や臓器を押してその先に大腰筋を感じた
というレベルであり、それでも大腰筋は
触れられない部位にあるという訳ではなく
触れられるけど触れると危ない位置にある。
という見方に変わった。
俺達はやったぜ触れるじゃないか!
とガッツポーズを取るヒトは誰1人いなかった。
むしろ、危ないなという事実を知り、
大腰筋をマッサージするなどという考え方は
誰1人思わなくなってしまったんだ。
次回のハワイ州立大学医学部人体解剖学実習日程が決定しました!!
7月8・9・10日です。
KYTベーシックセミナーは7月6・7日開催です。
申込は来週月曜日18日(月)の13時にメルマガ、アメブロでおしらせします。
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