「ちょっとウチでなかなか治らない
ヒトがいるからみてくれませんか？」
ドクターは正直なヒトだ。
治療家業界で、なかなか自分では
治せないから代わりに治してください。
そんな言葉を言う治療家に会ったことがない。
それは小さなプライドだったり、
恥ずかしさだったりが患者様の症状を
長引かせているのに他ならない。
治せないならば治せるところに送るか、
新たな学びが必要になった時期に来ている
と思った方がイイ。
その患者様はきっと天からの贈り物だ。
もっと次の勉強をしなさいとの無言の伝言かもしれない。
俺もときに治せない患者様がやってくると
ドクターウエムラに相談したり、帝京平成大学の
原口先生に相談したりするようにしている。
とにかく俺はLos Angelesの先生の診療所に出かけた。
一人目の脊柱管狭窄症の患者様は難を極めた方だった。
立位や歩行を見て気が付いたことがあった。
そして治し方の提案を行い一緒に治していった。
「あぁその発想はなかったなぁ」
とドクターが言った。
今まで見過ごしていたという部分が
幾つかあったらしく協力して痛みを
なくして帰すことができた。
二人目の患者様も両手の痺れとこわばりが
主訴で首の動きや肩の痛みを訴えてきた。
賢そうなヒトで、一つ一つコレは
何のためにやるんですか？
と聞かれ先生が通訳してくれた。
両手のこわばりと言うのに少しドキッとした。
変形があったら手技療法家の範囲を超えた
リウマチとかかもしれない。
細かくチェックすると肘の回旋が
うまく動かないことが分かった。
手の痺れも大腰筋からリリースを行った。
痺れも肩も首もそして手の痺れも綺麗に
抜くことができた。
「へー痛みってなくなるんだぁ」
痛くなくなる過程を体験した患者様は
感心していたけど肝心なのは日常生活だ。
普段の生活で痛くなるのだから
生活を改善させなければいけない。
ドクターの仕事は痛みを取り去り
そしてこのように生活してくださいと
アドバイスを行うことであり、その後
アドバイスを聞くか聞かないかは本人次第だ。
その件に関してはロスのドクターも苦労していた。
とにかく俺達は終業すると和食レストランで乾杯した。
先生は最近大吟醸にハマっているらしく日本酒で乾杯した。
治療の話は尽きることがなく帰宅したのは深夜だった。
治療室で戦った俺達は既に親友のような関係になっていた。
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