藍瓶 | qqwwzxcのブログ

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 玄関の格子戸(こうしど)がずりずりと開(あ)いて入って来た者があるので、順作は杯(さかずき)を持ったなりに、その前に坐った女の白粉(おしろい)をつけた眼の下に曇(くもり)のある顔をちょと見てから、右斜(みぎななめ)にふりかえって玄関のほうを見た。そこには煤(すす)けた障子(しょうじ)が陰鬱(いんうつ)な曇日(くもりび)の色の中に浮いていた。
 何人にも知れないようにそっと引越して来て、まだ中一日たったばかりのところへ、何人がどうして知って来たのだろう、まさか彼ではあるまいと順作は思った。と、障子がすうと開(あ)いて黄(きい)ろな小さな顔が見えた。