「日本人は太りやすい」と言うことを聞いたことある人いると思います。
 
日本人(モンゴロイド系)は、農耕が始まる以前は「狩猟」や「採集」の時代を生きていました。
ですので、食料となるものがたくさん取れる時もあれば少ない時もあり、状況に応じて栄養を取らなくてはいけません。
日本人の3人に一人には「倹約遺伝子」というものを保持しています。
「倹約遺伝子」は50種類くらい存在し、『肥満遺伝子』とも言われています。
たくさん食べることのできるときには栄養を蓄えるため体内に『脂肪』として貯蔵・飢餓の時に供え、飢餓の時にはその『脂肪』を分解しエネルギーとして使う・少量のカロリーで高い血糖値を維持することができる、というシステムが日本人の体に埋め込まれています。
そのため、今の食事の質の向上や運動不足、不規則な生活などにより「日本人は太りやすい」ということになるわけです。
 
体内に『脂肪』を蓄えるのは「脂肪細胞(全身にあるが特に多いのは皮下組織と内臓周辺)」や「肝臓」などの仕事で、皮下組織にたまりやすいのは「女性」、特に下半身に脂肪はたまりやすくその体型は『洋ナシ型』と言われています。
「男性」は内臓の周りに脂肪がたまりやすく、『リンゴ型』と言われています。
『洋ナシ型』の脂肪は取れにくく、『リンゴ型』は肥満・糖尿病・高血圧・高脂血症を併発しやすい特徴があります。
 
「脂肪細胞」には2種類あります。
『白色脂肪細胞』と『褐色脂肪細胞』です。
『脂肪』を蓄えることができるのは『白色脂肪細胞』で、『褐色脂肪細胞』は逆に『脂肪』を燃やして熱に変えてくれます。
『白色脂肪細胞』の数は、通常300億個ほどで、過剰なエネルギーを摂取し続けると増えます。肥満者の場合は600億個以上にもなります。
『褐色脂肪細胞』の数は、成長するほど減り、出生時で150g、思春期には4050gとなります。
ですので、体重が増加すると『白色脂肪細胞』の量が増え、年を取るにつれ『褐色脂肪細胞』が減るため、痩せにくくなります。
 
「脂肪細胞」は脂肪を蓄えたり消費したりしているだけではありません。
『レプチン』や『TNF-α』というホルモンを分泌しています。
これらのホルモンは太れば太るほど多く分泌されます。
『レプチン』は「食欲を抑える」作用があります。また、適切な体重になった女性の思春期を開始させる役目もあります。
じゃあ、『レプチン』増やせば食欲無くなるんだろ?あれ?食えば痩せるの!?よっしゃ!食べて『レプチン』増やそうぜ!
なんてことを考えてしまいますが、肥満状態の人は『レプチン』を多く分泌しますが、摂食は必ずしも抑制されません。
その理由は、肥満にともない摂食中枢で「PTPRJ」という酵素分子が増え、『レプチン』の作用を効きにくくしている(レプチン抵抗性)からです。
 
TNF-α』は、筋肉、脂肪組織や肝臓での「糖の働きを抑制する」作用があります。
肥満時には増加し、糖尿病や動脈硬化などのリスクを高めます。
やはり、太りすぎは健康にも悪いのです。
 
現在、「PPARδ」という骨格筋にある核内受容体をある化学物質で活性化させた「PPARδ作動薬(GW501516)」を用いると、マウスの体重増加を抑えられるという結果が得られています。
で、「PPARδ作動薬」は単剤で肥満、インスリン抵抗性および高脂血症に対して治療効果を発揮する画期的な『メタボリックシンドローム治療薬』として期待されるそうで、実現すると寝たままで痩せることができる『究極のやせ薬』になるのではとまで言われています。
まだマウス段階ですが、この薬が完成すれば「飲めば痩せる」!?
とは言うものの、乱用も起こる可能性も否定できませんので、やはり怖いものですね。
 
太ったら「痩せたい!」と思うのは当たり前です。
しかし、いろいろダイエット方法を試したりしてもなかなか体重・脂肪が減らないのは、日本人は少燃料で低燃費なエコカーだからなのです。
やはり、肥満には食事をとりすぎず、適度な運動を心がけましょう!
 
参考資料:
体と病気の科学知識 日頃の不調や病気を正しく理解する(NEWTON 別冊)
教養で人生は面白くなる!おとなのための知的雑学(編・著:松本健太郎)
参考URL