ナチスのような組織が出現する理由、あなたは考えたことはありますか?
なぜ、人はあのように残虐な行為に走ったのか?
なぜ、勢いを誰も止めれなかったのか?
ヒトラーの影響力がすごすぎたのでしょうか?
時代がそうさせたのでしょうか?
正常な精神であれば誰でも思うこの疑問の「理由」は、いったい何なのでしょうか?
1969年、アメリカに「ロン・ジョーンズ」という高校の歴史の先生がいました。
いつも通り歴史の授業をしていたジョーンズ先生、ちょうどその時の内容は「ナチスドイツ」に関する内容でした。
その授業で、ある生徒達から、
「何故、当時のドイツ人は『ナチス』を止められなかったのか?」
という質問が投げ掛けられます。
生徒たちは皆口々に言います。
「自分たちならこういう行為は『絶対にしない』し、『絶対反対』する。」
ジョーンズ先生も、その日生徒達に明確な答えを出すことができませんでした。
翌日、ジョーンズ先生は、その『答え』を出すために生徒達に提案します。
「このクラスだけの『独自の細かいルールを作り』、『それに従って行動』する」
というものでした。
「集団が生み出す力(強制力)を探る、考える」すなわち「ナチスのような疑似組織を作って、体験する」というのが目的で、生徒達はその実験に興味を抱きます。
『今日一日だけ』生徒達は気軽にゲームをするつもりで参加しました。
独自のルールと言っても、それほど特別なものではなく、
①姿勢を正す
②質問の前に許可を求める
③質問や答える時は必ず席の横で直立する
④発言の時は必ず最初に「はい、ジョーンズ先生」と言う
などでした。
「今日一日だけ」という約束で始まったこのゲームでしたが、生徒達は授業が楽しかったためか翌日になっても続けようとしました。
ジョーンズ先生は続けるべきか悩みましたが、集団の生み出す驚くべき力を知り、実験をしばらく続けることにしました。
生徒たちは規則を増やし、ジョーンズ先生を「指導者」として崇めはじめます。
そして、このゲーム(集団)を「ウェーブ」と名付け、独自の「挨拶(敬礼)」も考えます。
ゲームを始めて3日目。
「ウェーブ」メンバーも、20人から300人に膨れ上がっていきます。
共通の「腕章」や「旗」が作られ、「髪型」も統一されます。
『統一』の力は強く、このクラスの授業の効率や生徒の成績は格段に上昇しました。
そして、生徒達は『さらに厳しい、新しい規律』を欲しはじめます。
ジョーンズ先生は、この頃から危険を感じはじめます。
翌日、生徒たちの勢いはそれだけにとどまらず、クラス外にも影響し始めます。
「ウェーブ」への勧誘行為が始まり、活動はあっという間に学校中に広まっていきます。
勧誘を拒否する生徒には、「容赦なく攻撃をし、暴力、密告、制裁などの『ウェーブの暴走』が始まります。
ジョーンズ先生は生徒達の暴走を止めようとしますが、制御が効かない状態にまで発展していきます。
最終日(5日目)、
ジョーンズ先生は「ウェーブ」支持者たちを講堂に集めます。
ジョーンズ先生は「ウェーブ」リーダーと思われる生徒に、「君たちのリーダーは誰だ?」と聞くと、彼は「はい、ジョーンズ先生、もちろんリーダーはジョーンズ先生です」と答えました。
ジョーンズ先生は言います。
「いや違う、君たちの本当のリーダーは誰か、教えよう」
と言って、フィルムを回し始めます。
スクリーンに映し出されたのは、当初誰もが否定した、ナチスのリーダー「ヒトラー」でした。
生徒達自らが築き上げた「ウェーブ」は、「ナチス」同様の状態になっていた事実に気づき、衝撃を受けた生徒達の中には、涙を流す者もいました。
これは実際の事件で、「サードウェーブ」といいます。
この事件を知ったとき、私は、
「たった1日でこんなことになるなんて、いやいや、うそでしょ」
と思いました。
子どもと言っても高校生ですから、それなりの頭はあるはず。
しかし、このように1日で変貌を遂げていく様は、恐ろしささえあります。
独自のルール、マークなどは、誰でも考え付くものですが、それにより団結力が高まり、最悪、悪い方向へ行ってしまうのは、いつでも、普段の生活の中でもありえるのだということです。
人間は支配したいという気持ちを持ち、また反面、支配されやすく、そして支配しやすいがため、このような組織が生まれてしまうということが少しわかったように思います。
この事件を再現した映画「THE WAVE」があります。
映画らしく衝撃的に作り直されている箇所が少々ありますが、ほぼ再現されている映画なので、気になる方は見てください。
ラストは衝撃しかありません。
~「サードウェーブ」の推移~
・きっかけ:「ナチス」に対する生徒や先生の疑問
・1日目:1日限りの疑似体験を開始。独自ルールなどを設定する
・2日目:生徒達の希望により授業は続行。ジョーンズ先生を指導者として崇める
・3日目:共通の腕章や旗を作り、髪型も統一。学力など向上がみられる
・4日目:クラス外への勧誘行為、拒否者への暴力的弾圧。ウェーブの暴走が始まる
・5日目:これ以上は危険と感じ、授業の中止
参考資料:マンガ 実録!死ぬほど怖い 人体実験の世界史(著:闇の世界史研究所)
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