1. 自動車:海外生産・輸入へのシフトの妥当性
ご指摘の通り、人口減少、国内市場の縮小、そして労働力不足は、日本国内での自動車「生産」を維持していく上で大きな足かせとなります。
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国内市場の需要減: 人口減と高齢化、都市部での車離れにより、国内での新車販売台数の大幅な減少は避けられません。そうなると、国内の自動車生産工場を大規模に維持する経済的な合理性が薄れます。
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労働力不足の深刻化: 2050年の人口ピラミッドを見ると、生産年齢人口の激減は、自動車工場での労働力確保を極めて困難にします。自動化が進むとはいえ、人間による品質管理や高度な作業は依然として必要です。
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グローバル最適生産体制への移行:
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すでに海外生産が主流: 日本の主要自動車メーカーは、既に北米、欧州、アジアなど主要な消費地で大規模な現地生産を行っています。多くのモデルは海外で生産され、一部が日本に逆輸入されている現実もあります。
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各国のニーズへの対応: 電動車シフト、自動運転技術の進化、MaaSの発展など、地域ごとの需要や規制に合わせて最適な生産体制を海外で構築する方が効率的です。
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為替・関税リスクの回避: 海外生産は、為替変動リスクや輸入関税などの貿易障壁を回避する上で有利です。
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国内の役割の再定義:
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日本国内は、研究開発、基礎技術開発、最先端技術のプロトタイプ生産、グローバル戦略立案の中枢としての役割に特化していくのが合理的かもしれません。
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少量の高付加価値モデルや、特殊車両などの生産に特化することも考えられます。
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自動車製造で培った精密技術や品質管理のノウハウを、他の成長産業(ロボット、AI、医療機器など)に転用していくことも重要です。
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2. 農産物:国内生産(内製化)強化の妥当性
食料安全保障の観点から、人口減少時代においても国内での食料生産能力を維持・強化することは、国家の存立基盤に関わる喫緊の課題です。
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食料自給率の低さ: 日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2022年度)と極めて低く、多くの食料を海外からの輸入に依存しています。
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地政学的リスクの高まり: 世界情勢の不安定化(紛争、貿易摩擦)、異常気象による不作、新興国の需要増大など、グローバルなサプライチェーンには常にリスクがつきまといます。これらのリスクが発生した場合、食料輸入が途絶えれば国民生活は深刻な打撃を受けます。
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国内産業の維持と雇用: 農業は第一次産業でありながら、食料加工、流通、販売など、関連する多くの産業と雇用を支えています。国内生産を強化することは、地域の活性化にも繋がります。
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国土保全と環境維持: 農業は単に食料生産だけでなく、国土の保全、水源涵養、生物多様性の維持など、多面的な機能を持っています。耕作放棄地の増加は、これらの機能の低下を招きます。
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新しい技術の導入: 農業分野もIT、AI、IoT、ロボット技術(スマート農業)の導入により、省力化、効率化、高付加価値化が可能です。これは、高齢化が進む農業従事者の負担軽減にも繋がり、若い世代の参入も促す可能性があります。
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高齢者の役割: 農業は、体力的に無理のない範囲で高齢者が生きがいを持って参加できる余地がある産業でもあり、地域コミュニティの維持にも貢献し得ます。
結論と課題
「自動車は外で作り、農産物は国内で強化する」という方向性は、人口減少と少子高齢化が進む日本の未来において、極めて合理的な戦略であると考えられます。
しかし、この方向性を実現するためには、それぞれに大きな課題が伴います。
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自動車産業: 国内雇用への影響、基幹産業としての地位の変化による経済構造の転換。海外生産拠点の安定性とリスク管理。
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農業: 政策的な強力な支援、スマート農業技術への大規模な投資、若手人材の育成と誘致、農地の集約化と効率化、国際競争力のある価格での生産。
これらの課題を克服し、実行していくためには、政府、産業界、学界が一体となった長期的なビジョンと、大胆な政策決定が不可欠です。
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