今年も東海のフモトミズナラを見に行きました。

東海地方はシデコブシ、ハナノキ、ヒトツバタゴ、マメナシ、フモトミズナラなどの地域固有・準固有の植物(東海丘陵要素植物)が多く生育しており、植物地理学的にも興味深い地域です。

 

まず向かったのは、愛知県豊田市の愛知工業大学です。フモトミズナラがあると聞いたのですが、ここには殆どありませんでした。

しかし、キャンパス内の湿地でサクラバハンノキを見ることができました。

サクラバハンノキです。図鑑にもあまり掲載されていないマイナーな樹種で、私は2016年に春日井市の築水の森を訪れた時に初めて名を知りました。

日本では本州(岩手・新潟県以西)、九州(宮崎県高鍋台地)にやや隔離的に分布します。全国的には希少な樹種で準絶滅危惧種となっていますが、愛知県の湿地には比較的多いです。

名前の通り、葉はサクラに似ており、特にオオシマザクラに似ている気がします。葉だけ見るとオオシマザクラかと思ってしまいますが、果穂や花序がついていることからハンノキの仲間であることがわかります。葉とのギャップが大きいです。

東海地方(愛知・岐阜・三重県)は希少種が多いためか、自治体などが作成するレッドデータブックや植生誌などが充実しているような気がします。これらはネットでPDFとして閲覧することができます。東海丘陵要素植物は、市販の図鑑にはあまり掲載されていないので、情報収集に役立ちます。

 

航空写真を見ながら、フモトミズナラのありそうな場所を探します。八草駅の南西にも行ってみましたが、ここは川沿いでフモトミズナラは殆どなく、コナラ・アベマキ・アカマツなどの林でした。アベマキのどんぐりはまだ青かったので、9月下旬~10月上旬が最盛期でしょう。また、モリコロパーク東から陶磁資料館南駅にかけての道は、関係者以外立ち入り禁止でした。愛知県立大学まで歩きたかったのですが、仕方なく八草駅まで戻ってリニモで行くことにします。

 

昨年も訪れた愛知県立大学長久手キャンパスに向かいます。ここにはフモトミズナラの大群落があります。

しかし、殻斗やシイナばかりで熟したどんぐりは全く見つかりません。

枝にどんぐりをつけた木もありますが、昨年に比べるとずっと少ないです。写真のどんぐりも、シイナかもしれません。どうやら、今年は不作年のようです。2015年から毎年晩夏に、東海のフモトミズナラを見に来ていますが、ここまで不作なのは初めてです。また、不作年のどんぐりは特定の個体だけでなく、エリア内全体の個体が揃って不作になるというのも不思議です。

東海の丘陵地は貧栄養であるためか、フモトミズナラの樹高が低いです。北関東の土壌のある場所では樹高15mくらいありますが、東海では樹高10m以下の個体が多いです。フモトミズナラだけでなく、混生しているコナラやアカマツも同様です。写真のフモトミズナラも樹高3mくらいでした。

リニモの車内から見た、陶磁資料館南駅~八草駅の林です。この林の中にフモトミズナラの群落があります。

 

フモトミズナラが不作なのと、アベマキのどんぐりもまだ早いので、予定を変更して岐阜県中津川市の「坂本のハナノキ自生地(国指定天然記念物)」に行くことにします。

日本で最初に発見されたハナノキ自生地だそうです。中央線の美乃坂本駅から南に200mほど行った所にあり、駅から近いのでアクセスが良いです。

自生地の様子です。湿地内にハナノキの大木が幾つかあり、シデコブシやハンノキも見られました。ハナノキは絶滅危惧Ⅱ類、シデコブシは準絶滅危惧に指定されています。

この時期のハナノキは地味ですが、春の真紅の花と秋の紅葉は見事なものでしょう。愛知県の県木ですが、岐阜県東濃地方の方が自生は多いです。東濃地方は希少種の宝庫ですね。

 

東濃地方にもフモトミズナラが分布しているようですが、詳細な場所を私は知りません。ご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけると嬉しいです。

今回はフモトミズナラやアベマキのどんぐりが手に入りませんでしたが、関東とは異なる植生を見られて面白かったです。来年、シデコブシ・ハナノキ・マメナシなどの花の時期にまた来れたらなと思います。