「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合、共同声明」Ⅱ

 

 

II. 環境

(1) 生物多様性

23. 昆明・モントリオール生物多様性枠組:2022年12月の生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)における昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の採択という歴史的成果を強く歓迎する。GBFは、持続可能な経済発展と人間の健康と福利を脅やかしている、かつてなく憂慮すべき速さで進行する生物多様性の損失に対処するための野心的な道筋を提供するものである。我々は、女性、若者及び先住民族を含む、全政府的及び全社会的アプローチを通じた、枠組の迅速かつ完全な実施にコミットする。我々は、全てのセクターにまたがって生物多様性を主流化する。この観点からCBD締約国であるG7メンバーについては、我々は GBF の迅速かつ効果的な実施に向けて、2023年内又はCBD-COP16に十分先んじて、生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAPs)を速やかに改定、更新及び提出し、又は GBFの該当する全てのゴール及びターゲットを反映した国別目標を伝達することをコミットする。我々は、他のすべての CBD締約国にもそうすることを求め、そのような努力を支援するための国内資源動員の重要性を再確認する。国際機関等と連携し、統合的アプローチを取り入れるためのマニュアル等の効果的なツールを提供するとともに、資源動員や他の実施手段の強化の途上国への支援に向けた共同のコミットメントを通じ、150以上の途上国の生物多様性国家戦略の改定・更新や生物多様性国家財政計画の策定を支援する。我々は、モニタリング枠組の指標群を含む、計画、モニタリング、報告及び、レビューのメカニズムの最終化に向けて、CBD締約国と取り組む。

24. ネイチャーポジティブな経済:自然と生物多様性が我々の経済、生活、そして幸福と健康を支えているという認識のもと、我々は、2021年に採択されたG7・2030年「自然協約」で決定した、社会変革の実現を含むネイチャーポジティブな経済への移行を推進することの重要性を再確認する。我々は、事業者が生物多様性への負の影響削減と正の影響の増大、生物多様性に関連するリスクの低減及び持続可能な生産パターンの確保を継続的に進めることを求める。政府として、GBFのターゲット15(a)に沿った適切な行動を取る。G7・2030年「自然協約」やその他の関連するコミットメントに基づき、ネイチャーポジティブな経済への移行を支援・促進するためのアクションを議論・特定する。我々はそのため、民間セクター及び市民社会、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)、既に情報開示要件を設けている国又は地域並びに関連国際機関及び関連パートナーと自発的に協力して、知識の共有や情報ネットワークの構築の場として、附属書に記載する、G7ネイチャーポジティブ経済アライアンスを設立する。同アライアンスは、すべてのセクターにおける生物多様性の主流化を重視する。我々は、2023年9月に発表予定のTNFDの最終版の枠組みに期待しており、GBFターゲット15の達成に重要な役割を果たすことができるその開発を支援するよう、市場参加者、政府、規制当局に強く要請する。我々は、セントラルフレームワークと生態系勘定を含む国連環境経済会計システムおよびその他の関連ツールに基づき、国家の環境経済勘定を定期的に公表することをコミットし、関連するデータ、指標、モニタリング枠組みにそった、経済・財務上の意思決定におけるその利用を促進する。我々は、環境経済統計及び自然資本勘定を中核的な国民経済統計に含めていく。

25. 30 by 30:我々は、2030年までに陸域及び内陸水域の少なくとも30%、海洋及び沿岸域の少なくとも30%を効果的に保全・管理するという目標(30 by 30)を国内及び世界で達成するというコミットメントを再確認する。個々の生態系間の連結性を考慮しつつ、保護地域や保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM)の指定を各国の状況に応じて推進する。GBFの30 by 30目標を達成するため、保護区や OECM のベストプラクティスを他国と共有する。我々は、30 by 30 目標の実施を支援するための協力・運用プラットフォームを目指す「自然と人々のための高い野心連合」の発展を支持する。2030年までに少なくとも30%という数値目標を達成しつつ、保全活動の影響のモニタリングや評価など、保護地域やOECMの管理を強化することで、生物多様性の保全と保護の質を向上させる。さらに、我々は、生物多様性と生態系の機能及びサービス、生態学的健全性及び連結性を向上させるために、2030年までに、劣化した陸域、内陸水域、沿岸域及び海域の生態系の少なくとも 30%の地域を効果的な回復下におくという世界的な目標にコミットする。我々は、2050年までに自然生態系の面積を世界的に大幅に増加させることにコミットする。

26. 侵略的外来種:侵略的外来種(IAS)は、IPBES地球規模評価報告書において、世界的な生物多様性損失の5つの直接要因の1つとされており、その負の影響は地球規模で増加している。GBFのターゲット6の実施を加速するため、我々はIPBES-10で最終決定されるIPBES侵略的外来種評価報告書から提供される主要な知見と有用な科学情報をもとに行動する。国境を越えた侵略的外来種の意図的・非意図的な移動の増加に対処するための国際協力強化の必要性を認識し、侵略的外来種に関するG7ワークショップを開催し、国・地域レベルでの情報共有、技術開発、民間参画を含む必要な措置を議論し、一連の推奨事項を作成する。

27. データ・情報・知識:我々は、自然環境保全と生物多様性の持続可能な利用を促進するために、自由意思による情報に基づく事前の合意を得た地域社会や先住民族の伝統知識を含む、入手可能な最善のデータ、情報、証拠、知識の取得の重要性を認識し、GBFや他の環境協定をより効果的に実施するためにこれらのデータ、情報、証拠、知識を活用し共有する。

28. 資源動員:我々は、自然に対する国内及び国際的な資金を 2025年までに大幅に増加させるというコミットメントを改めて表明する。GBFを実施するため、特に2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという我々の共同の野心の達成に向け、我々は、国内、国際、公共及び民間の資源を含む、効果的、適時かつ容易にアクセスできる方法で、あらゆる資金源からの資金の水準を大幅かつ段階的に増加させ、民間資金を活用し、革新的スキームを刺激し、気候資金との共通便益及び相乗効果を最適化し、全てのステークホルダーによる協調行動の役割を強化し、資源の提供及び利用における有効性、効率性及び透明性を高めることをコミットするとともに、他者に対しても同様のことを行うよう求める。特に、我々は、開発援助委員会(DAC)非メンバー国および南南協力に参加している国に対し、国際生物多様性資金の取り組みに貢献し、これをOECD DACに報告するよう求め、既にそうしている国の貢献に留意し歓迎する。我々は、2025 年までに我々の国際開発援助が自然を害することなく、人々、気候及び自然に対して全体としてポジティブな成果を与え、GBFと整合することを確実にする。我々はまた、すべての関連する財政及び資金の流れを GBF に整合させることをコミットし、すべての国および金融機関、特に MDBs 及び、適切な場合は IFIsに対し、同様のことを行うよう求める。我々は、生物多様性に有害な補助金を含むインセンティブについて懸念しており、すべての関係機関が、こうしたインセンティブの特定の支援等により、我々に協力することを求める。CBD締約国であるG7メンバーは、そのようなインセンティブを 2025年までに特定することにコミットする。CBD締約国であるG7メンバーはまた、遅くとも 2030年までに、それらのインセンティブを廃止、段階的廃止または改革し、生物多様性の保全と持続可能な利用のために有益なインセンティブを拡大することをコミットし、遅滞なく第一歩を踏み出し、すべての国と金融機関、特にMDBsに同様のことを行うよう求める。我々は、自然を活用した解決策が気候変動緩和に役立ち、気候変動適応に顕著な利益があることを認識しつつ、気候資金のうち顕著な金額を、適宜、気候変動危機と生物多様性危機への対処との共通便益や相乗効果を最大化するために提供する。また、他者にも同様ことを行うよう奨励する。我々はまた、地球環境ファシリティ(GEF)内の昆明-モントリオール生物多様性枠組基金(GBF 基金)の設立を含む、資源動員に関するCBD-COP15決定事項の実施を支援することにコミットする。我々は、GEFに対し、容易かつ効果的な資金アクセス手続きの確立を含め、資金の充実性、予測可能性及び時宜を得た流れを確保するために、その運営を更に改革することを求める。我々はまた、新しい基金へのあらゆる資金源からの拠出の重要性に留意し、2023年8月にバンクーバーで開催される GEF総会におけるGBF基金の立ち上げの成功に向けて協力する。我々は、MDBs、及び適切な場合には IFI と慈善団体に対し、自然・人・地球に関するMDB共同声明に沿って、できるだけ早く、それらのポートフォリオにおいて生物多様性条約の目的およびGBFのゴールとターゲットの達成に貢献する投資を特定し報告し、それらのポートフォリオと資金の流れを条約の目的に合わせ、2030年までにGBFのゴールとターゲットの達成を支援し、あらゆる資金源の活用や新しい革新的なアプローチを含む一連の手段の展開を通じ生物多様性資金を増加させ、生物多様性のための資金へのアクセスを簡素化することを求める。

29. ワンヘルス・アプローチ:我々は、人、動物及び生態系の健康の持続的なバランスと最適化を図り、特に気候変動、生物多様性の損失及びその要因、特に例えば土地利用変化等(だがそれに限ることなく)から生じる健康への脅威、特に人獣共通感染症の波及を低減するために、関連機関の関連決定及びイニシアティブを通じて、また、清潔な水、エネルギー及び空気、安全で栄養のある食料、気候変動に対する集団的な要求に対処しつつ、統合的ワンヘルス・アプローチの実施に係る関係省庁間の協力を強化・醸成することをコミットする。我々はまた、ワンヘルスハイレベル専門家パネルと四者会議の活動、特にワンヘルスに関する共同行動計画の実施を引き続き奨励する。我々は、ワンヘルス・アプローチに沿って、必要に応じて、適宜政府から独立した保健、食品・農業、医薬品の規制当局に責任を有する関係閣僚とともに、薬剤耐性に対処し、2024年の薬剤耐性(AMR)に関する国連ハイレベル会合に向けて、国際規格の策定と合意、知識のギャップを埋める努力を続ける。

30. 海洋:我々は、海洋生態系及び海洋の保護、保全、回復及び持続可能な利用が世界的に非常に重要であることを認識する。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)の下での、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)の保全及び持続可能な利用に関する国際的な法的拘束力を有する文書の交渉が妥結したことを歓迎する。我々は、国家管轄権外区域のガバナンスを強化するための、この国際的な法的拘束力を有する文書の重要性を強調する。我々は、国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用のために、その早期発効と実施を呼びかける。我々は、海洋生物多様性を効果的に保全・管理し、持続的な形で利用するために、海洋保護区(MPAs)を含む区域型管理ツール(ABMTs)を実施し、ABMTs の利用における協力と調整を強化し、海洋生物多様性と生態系の保護、保全、回復及び維持を図る。これにより、2030 年までに海洋の少なくとも 30%を、十分に連結され衡平に管理され、かつ生態学的な代表性を確保した海洋保護区とその他の生物多様性保全に資する地域のネットワークによって、効果的に保全、管理、又は保護することに貢献する。我々は、利用可能な最良の科学的証拠に基づき、世界の海洋生物多様性を保全・保護し、その資源を持続的に利用することをコミットする。この文脈で、我々は、利用可能な最良の科学的証拠に基づき、東南極、ウェッデル海及び南極半島西岸において海洋保護区を設置する提案を緊急に採択するという南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)の下での我々のコミットメントを再確認する。我々は、国際海底機構(ISA)の下で行われている、深海底鉱物の開発に関する規制の枠組みの策定に積極的に関与し続け、UNCLOSの下で求められているように、当該活動により生ずる有害な影響からの海洋環境の効果的な保護を確保する。我々は、深海底における海洋鉱物の採掘の可能性について、予防的アプローチをとることを再確認する。環境が深刻な被害を受けないことを示し得る、深海の海洋環境と深海鉱業活動のリスクと潜在的影響に関する確固たる知見の基盤は、環境が深刻な被害を受けないことを証明できるものであり、ISA理事会において我々の支持を検討する上で不可欠であり、将来の採掘許可の前提条件となるものである。我々は、G7メンバーによる漁業補助金に関する世界貿易機関(WTO)協定の迅速な受け入れを促進することを含め、IUU漁業の終結に対する我々のコミットメントを再確認し、全ての WTOメンバーに対し、その早期発効に努めるとともに、未決事項に関する交渉に建設的に関与するよう要請する。また、国連食糧農業機関(FAO)の違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA)の世界的な批准と効果的な実施を要請する。また、違法漁業防止寄港国措置協定(PSMA)の非締約国にも同協定への加入を奨励する。我々は、最近採択された「FAO転載自主的ガイドライン」との整合性を考慮し、転載活動を効果的にモニタリングすることの重要性を強調する。また、水産資源の持続可能な管理を促進することにコミットし、漁業が海洋生物多様性(生息地と種の両方を含む)の保全の目標に適合することを確保する。

(2) 循環経済・資源効率性

31. 循環性及び資源効率性の強化を通じた三つの地球規模の危機への対処:経済成長と環境劣化や一次資源の利用とのデカップリングの重要性を強調し、科学的データと知見に導かれたバリューチェーン全体における資源効率性及び循環性の向上が、一次資源の利用を減じ、三つの地球規模の危機に取り組む我々の努力を支援することを強調する。我々は、ライフサイクル・アプローチを踏まえた製品設計の強化、ライフサイクル評価、適切な場合には拡大生産者責任のスキーム等を含み得る様々なアプローチを通じ、バリューチェーンにおける循環性を高めるための幅広い政策措置と民間セクターとの協力を強化することによって我々の経済がより循環性及び資源効率性の高いものとなるよう努力する。我々は、野心的な気候や環境目標の実現のために資源効率性や循環経済の可能性を活用するべく協力する。

32. G7資源効率性アライアンスの下の協力:G7資源効率性アライアンスによる関連会合及びワークショップの開催を含む活動を評価する。我々は、アライアンスが、ベルリン・ロードマップを基礎とし、特定された影響が大きいバリューチェーンにおける資源効率性と循環性の向上を通じた気候・生物多様性・汚染にかかる便益など、ロードマップに挙げられた特定の活動において、G7メンバー間の協力と行動を強化するよう要請する。我々は、一次資源の使用量削減と廃棄物の最小化へのコミットメントを再確認し、食品ロスや廃棄物を含む廃棄物部門から2050年までのネット・ゼロに向けた努力を強化し、アライアンスによる関連ワークショップに期待する。

33. 循環経済・資源効率性原則:企業は、そのバリューチェーンを通じて、資源効率性及び循環経済アプローチの推進に重要な役割を果たすことができる。その重要な役割を認識し、我々は、企業が循環経済に関するイニシアティブの確立と行動の強化を招請し、政府および金融セクターとの協力を促進し、レジリエンスと競争力を強化し、循環経済及び資源効率性の自主行動を促進し、持続可能で包括的な経済成長と雇用創出を支援するため、添付された循環経済・資源効率性原則(CEREP)を採択する。我々は、本原則の活用と官民連携の促進のため、B7や他の民間ステークホルダーの関与及び協力を期待する。

34. バリューチェーン全体の循環性に関する透明性の向上:我々は、経済のレジリエンスと自律性に資する、資源効率及び循環性を高め環境への悪影響を最小限に抑える努力を続け、一次資源の利用削減が急務である旨を認識し、製造業者とリサイクル業者を始めとする主体間の連携を進め、3R(リデュース、リユース、リサイクル)及びその他の経済価値を維持するプロセスの強化に向け、循環性及び環境影響を測定し、バリューチェーン全体でデータを共有・活用する重要性を強調する。G7メンバー間のより良い連携がこのようなシステムの有効性を高めることを認識し、我々は、G7資源効率性アライアンスを通じた協力により、循環性の計測、バリューチェーン全体における循環性に関する情報の共有と活用、及び比較可能な指標に関する議論と調整を促進する。

35. 国際協力:我々は、G20資源効率性対話を含む二国間・多国間における国際協力を拡大し、気候変動、生物多様性の損失及び汚染に対応するため、G7内外の経済における資源効率性及び循環性向上のために連携を促進する。我々は、中低所得国が彼らの経済の資源効率性と循環性を向上させるとともに、環境上適正な材料・化学物質・廃棄物管理の喫緊のニーズに対応するため、ファイナンス・技術協力や民間投資を通じた支援の必要性を認識する。我々は、環境目標を達成するための手段として資源効率性と循環経済を強化するための資金を動員し、このアジェンダを主流化する上での、MDBs及びその他の金融機関が果たす重要な役割を認識し、一貫した行動を確保し相乗効果を高めるため、資源効率性及び循環経済のアプローチをそのポートフォリオに統合することを求める。

(3) 汚染

36. 汚染対策に取り組む決意:三つの地球規模の危機のひとつである汚染への対応は、持続可能な開発を実現するための重要な要素である。我々は、人々と環境の健康と幸福のために、汚染のない地球に向けて努力することをコミットする。このため、我々は、汚染のリスク及びあらゆる発生源からの汚染の悪影響を自然と人々に有害でない水準まで削減することをコミットする。特に、生物多様性条約の締約国であるG7各国は、GBFのターゲット7を2030年までに実施することをコミットしている。

i. プラスチック汚染

37. プラスチック汚染に関するG7目標:我々は、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心を持って、プラスチック汚染を終わらせることにコミットしている。これを念頭に、我々は、包括的なライフサイクル・アプローチ、プラスチックの持続可能な消費及び生産の推進、経済におけるプラスチック循環の増加及び環境上適正な廃棄物管理を踏まえ、我々の行動を継続し、発展させることを決意する。これらの行動は、適切な形で、可能な場合のフェーズアウト及び生産・消費の削減等の措置を通じた使い捨てプラスチック、リサイクル不可能なプラスチック及び有害な添加物を含むプラスチックへの対応、プラスチック汚染由来のコストの内部化のためのツールの適用並びにマイクロプラスチックの排出源や流出経路及び影響への対策を含む。こうした取組を通じ、我々はパートナーやステークホルダーと強固に関与し、彼らを参加させ続ける。こうした取組について、G7オーシャンディール、大阪ブルー・オーシャン・ビジョン、G20海洋プラスチックごみに関する実施枠組み、海洋プラスチック憲章、G20海洋ごみ対策行動計画、G7海洋ごみ対策行動計画を踏まえつつ、他の国々にも同様の取組を促し、支援していく。陸域由来及び遺棄・放棄された漁具(ALDFG)を含む海域由来の不適切な予防と管理等が主要な汚染要因であることを認識し、国際海事機関(IMO)による漁具のマーキング及び ALDFG の報告に関する交渉を引き続き支援する。我々は、報告及びモニタリングを含む、プラスチック汚染に関する科学的・技術的な知識を強化し、プラスチック汚染を終わらせることに貢献するプラスチックのライフサイクル全体にわたる既存及び革新的な技術やアプローチを促進する。関連する地域及び国際的な条約や文書間での協力、調整、補完性の重要性を再確認し、地域海洋協定および行動計画の下で海洋におけるプラスチック汚染を防止し、削減する現行の取組を強調する。主要な経済国やステークホルダーと、既存のフォーラムやイニシアティブを通じてベストプラクティスや教訓を共有することで緊密に連携する。

38. プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書に向けて:我々は、政府間交渉委員会(INC)の最初の会合が 2022年11月に開催され、海洋環境等におけるプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を策定するための交渉が開始されたことを歓迎する。我々は、政府、パートナー及びステークホルダー(地方自治体、事業者、学術界、科学者、NGO、市民、地域社会及び先住民族を含む)の包括的で効果的な参画の必要性を強調し、こうした参画が効果的な国際文書の作成に資するものであることを認識する。我々は、このプロセス全体で、特に 2023年5月にパリで開催される第2回会合において、建設的かつ包摂的な対話と協力を行うことにコミットしている。こうした観点から、我々は、交渉において重要な進展を遂げるために率先的かつ建設的な役割を果たすことにコミットし、プラスチックのライフサイクル全体に対する包括的なアプローチに基づき、拘束力のある及び任意のアプローチのいずれも含む、野心的な法的拘束力のある国際文書の重要な条文の明確化に近づくよう取り組んでいく。文書の目的達成を支援するため、我々は、プラスチック汚染の環境および経済への負の影響、人の健康に対する関連するリスク及び社会におけるプラスチックの重要な役割を認識しながら、INCがとりわけ義務、措置及び任意のアプローチの組み合わせ、バリューチェーン上の透明性の強化、モニタリング及び報告、定期的評価について検討することを期待する。我々は、法的拘束力のある国際文書の最終テキストが2024年末までに完成することを期待する。我々は、公的及び民間、国内及び国際的に、幅広いソースからの資金支援を動員することの必要性を認識しつつ、世界的にプラスチック汚染を終わらせるための国際的な協力の強化に向けて取り組む。

ii. 大気環境

39. より広範な国際協力による大気汚染への取組:我々は、大気汚染が人間の健康にとって主要な環境リスク要因であり、生態系への悪影響に寄与していること、大気汚染への対処が経済、生態系、気候及び人間の健康に複数の利益をもたらすことを認識する。我々は、大気汚染は国境の中にとどまらず、さまざまな形で地域に影響を与える可能性があることを認識し、世界中の大気質に関する地域協力を含む、より広範な協力を強化することにコミットする。

40. 地域間及び地域内の協力を促進するための行動:我々は、地上のオゾン、粒子状物質及び生態系の酸性化と富栄養化の要因になっている汚染物質等の健康と環境に影響を及ぼす汚染物質の排出を削減するための戦略の実施に関わる、大気質モニタリング、データ及び情報の共有並びに能力強化の促進に引き続き関与していく。我々は、大気汚染に関する国際協力タスクフォース(TFICAP)、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の大気汚染に関する地域行動計画及び国連欧州経済委員会(UNECE)の長距離越境大気汚染条約(LRTAP)等の国際的枠組みに基づいた活動を歓迎する。

iii. 化学物質

41. 化学物質や廃棄物の適正管理:我々は、地球規模の汚染の危機に対処するに当たって、化学物質と廃棄物の不適切な管理による生物多様性への影響を含む人の健康及び環境への悪影響の可能性を大幅に低減する観点から、化学物質と廃棄物の適正管理を実現する必要性を認識する。この文脈で、我々は、2023年9月にボンで開催される第5回国際化学物質管理会議(ICCM5)において、2020年以降の化学物質と廃棄物の適正管理に対処する、野心的な文書を採択するよう期待している。我々は、UNEA決議5/8の下で招集された特別公開作業部会による提案の策定を受け、化学物質と廃棄物の適正管理に更に貢献し汚染を防止するため、関連する多国間協定及び国際機関と緊密に協力し、科学・-政策パネルを設立することに引き続きコミットする。我々は、例えば内分泌かく乱化学物質の放出及び重大な懸念のあるペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)等の環境中での残留性が特に懸念される物質等によって引き起こされる化学物質汚染をより積極的に防止し、不可能な場合には最小化することをコミットする。我々は鉛汚染について大きな懸念を有している。我々は、環境中の鉛を削減するために、国内での対策と諸外国との協働を継続する。

42. バーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約及び水俣条約の実施:各条約の締約国であるG7メンバーは、バーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約及び水俣条約のそれぞれについて、国際的及び国内レベルでの実施及び各条約の下での措置を講じることに対する我々の継続的コミットメントを強調する。さらに、我々は、水銀に関する水俣条約の第1回有効性評価のプロセスが開始されたことを歓迎し、同評価を支援するための科学的データ及び情報を提供することにより、同プロセスに貢献することをコミットする。

43. 鉛の汚染と暴露を含む途上国の化学物質汚染への対応:我々は、多国間資金メカニズム、地域及び二国間技術支援を通じて、化学物質及び廃棄物の適正管理のための能力構築を支援することにより、途上国における汚染への対処に貢献するというコミットメントを再確認する。このような支援は、2022年11月の鉛に関するG7ワークショップの報告書の関連する要素を考慮しつつ、地域的及び世界的に、人間の曝露を含む鉛の汚染と曝露を最小化するための行動と主要な発生源に対する国際協力を強化するための行動を含み得る。そのため、昨年の我々のコミットメントを繰り返し、我々は、鉛の汚染と暴露を低減するための具体的な行動を更に検討するため、ドイツ、米国及び EUが共催する第2回専門家会合を歓迎するとともに、既存の国際的イニシアティブ及び文書との間で鉛に関する国際協力を強化する方法を引き続き特定する。

III. 気候変動及びエネルギー

気候・エネルギー危機の現状、行動の加速化

44. 気候の危機:我々は、IPCCの第6次評価報告書(AR6)の最新の見解によって詳述された気候変動の加速化及び激甚化する影響に対する強い懸念を強調する。世界の温室効果ガス(GHG)排出の即時、大幅、迅速かつ持続可能な削減を達成し、全ての人にとって住みやすく持続可能な未来を確保するためには、全てのセクターとシステムにおける迅速かつ広範囲な移行が必要である。現在実行可能で有効な適応の選択肢は、地球温暖化が進むにつれ、制約を受け、効果は低下する。我々G7は、科学的知見に基づき、我々の指導的役割を継続し、全てのコミットしたパートナーとともに、気温上昇を 1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるために排出量を削減し、気候の影響に対する強靱性を世界全体で構築するための即時かつ具体的な行動をとることをコミットする。我々は、この決定的に重要な10年間において、現時点の世界の排出量の軌跡及び現在の NDC と、気温上昇を 1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるために必要な野心と実施のレベルの間の大きなギャップを埋め、遅くとも2025年までに世界の温室効果ガス排出量(GHG)をできるだけ早くピークにし、遅くとも2050年までにネット・ゼロ排出を達成するために、全てのレベルの主体が一丸となり、全ての部門を通じて我々の経済を変革するために協働することを求める。我々は IPCC の最新の見解を踏まえ、世界のGHG排出量を2019年比で2030年までに約43%、2035年までに60%削減することの緊急性が高まっていることを強調する。

45. パリ協定の実施:我々は、グラスゴー気候合意及びシャルム・エル・シェイク実施計画で定められたコミットメントの実施を含む、パリ協定の実施を強化するための揺るぎないコミットメントを再確認する。 この目的のため、我々は、気温上昇を 1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるために排出量を大幅に削減し、気候変動の影響に対する強靭性と適応能力を強化し、資金の流れをパリ協定の目標に整合させるために、この10年間に緊急かつ野心的で包摂的な行動を拡大する我々のコミットメントを再確認する。我々は、更に、締約国以外のステークホルダーがパリ協定の長期目標の達成に向けた行動を強化することを奨励し、それが可能となるよう努力する。また、締約国と非締約国のステークホルダーとの間の国際協力や協調的なイニシアティブを強化するよう努める。

46. 緩和:我々は、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるため、自ら模範を示し、この決定的に重要な10年に、強力で野心的かつ効果的な緩和行動を実施し、強化する。我々は、NDC の目標達成に向けた国内の緩和策を早急に実施し、例えば、セクター別目標の設定又は強化、二酸化炭素以外の温室効果ガスに係る副次的目標の策定、厳格な実施措置の採用によるものを含め、我々の野心を高めるために昨年ベルリンで行ったコミットメントを再確認する。我々は、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(UNFCCC-COP28)に向け、我々の進捗を年間を通じて継続して発信していく。我々は、セクター別イニシアティブに反映されたものを含め、これまでのコミットメント及び目標を堅持し、UNFCCC-COP28の成功に向けて努力する。我々は、G7としての指導的役割を意識しつつ、この決定的に重要な 10 年及びその後数十年間における世界の気温上昇を抑える上で、全ての主要経済国が果たすべき重要な役割を認識し、この観点で、全ての主要経済国が、パリ協定以降、NDCの野心を大幅に強化し、既にGHG排出量のピークを迎えたか、遅くとも2025年までに迎えることを示し、特にNDCにおいて全ての温室効果ガスを対象とする経済全体の排出削減目標を含めるべきであったことを強調する。この観点で、我々は、2030年NDC目標又は長期低GHG排出発展戦略(LTS)が1.5°Cの道筋と2050年までのネット・ゼロ目標に整合していない全ての締約国、特に主要経済国に対し、可及的速やかに、かつUNFCCC-COP28より十分に先立って2030年NDC目標を再検討及び強化し、LTSを更新し、2050年までのネット・ゼロ目標にコミットするよう求める。我々は、さらに、全ての締約国に対し、UNFCCC-COP28において、世界のGHG排出量を直ちに、かつ遅くとも2025年までにピークアウトすることにコミットするよう求める。グローバル・ストックテイク(GST)に関し、緩和に関する成果は、2025年までに通報される次期 NDC に明確な方針を示すため、この10年間とそれ以降の締約国のNDCとLTSに情報を与えるべきである。また、次期 NDC は、全ての温室効果ガス、セクター及び分類を含む経済全体の排出削減目標と、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けることと整合すべく大幅に強化された野心が反映された形で、UNFCCC-COP30より十分前に提出されるべきであり、また、再検討され強化された2030年目標を含むべきである。シャルム・エル・シェイク緩和野心実施作業計画に関し、我々は、緩和ポテンシャルの高いセクター、排出源及びガスを優先し、変革を可能にする明確な成果をもたらすことで、この決定的に重要な10年における野心と投資戦略を強化するための具体的行動を導き出す、解決策に焦点を当てた主要なステークホルダーとの議論が重要であることを強調する。我々は、緩和作業計画の年次報告書を通じ、2030年までの野心に関するハイレベル・ラウンドテーブルへのインプットとして機能する、拡大した緩和行動の選択肢の重要性を強調し、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるために、この決定的に重要な10年における全体としての更なる行動に関する野心的なUNFCCC-COP28決定を採択することを目指す。我々は、締約国に対し、1.5°Cとのギャップを埋めるため、UNFCCC-COP26及び UNFCCC-COP27 で誓約されたセクターコミットメントについて、緩和作業計画等を通じた明確なフォローアップを求めると共に、セクター毎の行動強化を奨励する。

47. グローバル・ストックテイク:GST は、パリ協定の5年間の野心サイクルにおける重要な機会であり、パリ協定の長期目標の達成に向けた全体としての行動と支援の野心を強化しなければならない。我々は、第1回GSTにおける野心的な成果物を確保し、この決定的に重要な10年間及び、それ以降において、世界が気候行動を強化する必要性についての政治的な機運を構築するために、積極的に貢献することにコミットし、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(UNFCCC-COP28)議長国とハイレベル委員会に対し、この目的のために政治プロセスを推進することを求める。さらに、GSTの成果物は、COP28において、温室効果ガスについて低排出であり、かつ気候にレジリエントな開発に向けた経路に資金の流れを整合させることも含め、 緩和、適応、実施手段と支援にまたがる強化された、即時かつ野心的な行動を含む決定になるべきである。これには、パリ協定の目標に向けて全体として軌道に乗ることを確実にすべく、地方、国、地域レベルでの機会、優良事例及び解決策を特定することが含まれる。

48. エネルギー危機:我々は、ロシアのウクライナ対する侵略戦争により引き起こされているエネルギー価格の高騰、市場の変動及びエネルギーサプライチェーンの混乱によって特徴づけられる現在のエネルギー危機が、全ての経済に影響を与え、全ての国々のより貧しいコミュニティに不均衡な損害を生み出していることを、懸念を持って強調する。この危機は、クリーンエネルギーへの移行を加速すること及び我々のエネルギーシステムをより包摂的で、持続可能で、クリーンで、安全で、低廉なものに転換することの緊急性を強調し、化石燃料への依存を低下させること、2050年までのネット・ゼロ排出の目標と気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けることに整合的な形で、エネルギー部門における追加で必要な投資の動員と多様化をすること及びエネルギー市場の安定化を目的として、生産国と消費国の対話と連携の場を強化することが極めて重要であることを強調する。また、エネルギー危機は、政策、持続可能な技術及び資金調達を含め、広範な対策を推進することが極めて重要であることを強調する。

49. エネルギー安全保障とクリーンエネルギー移行:現在のエネルギー危機に対処し、2050年までにネット・ゼロ排出という共通目標を達成するために、我々は、クリーンで安全で持続可能で低廉なエネルギーを迅速に展開し、エネルギー効率を大幅に向上させることを含め、供給、資金源及びルートを多様化することにより、エネルギーセキュリティの向上とクリーンエネルギー移行の加速を同時に進めるための現実的かつ緊急な必要性と機会を強調する。 我々は、ネット・ゼロに向けて加速されたクリーンエネルギー移行が、世界のエネルギー供給の安全保障、安定性及び低廉さを改善するための鍵であることを強調する。我々は、世界規模での取組みの一環として、世界全体の平均気温の上昇を産業革命化以前の水準よりも1.5°Cに抑えるために必要な軌道に沿って、遅くとも2050年までにエネルギーシステムにおけるネット・ゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるという我々のコミットメントを強調し、他国に対して同様の行動を取るために我々に加わることを要請する。1.5°Cへの道筋に向けた変革において、ネット・ゼロ及び循環型産業サプライチェーンの新たな必要性の観点から、我々は、脱炭素化され、持続可能で、責任のある形で生産された非燃焼原料に関連する機会を認識し、この変革における、我々の労働者とコミュニティへの支援にコミットする。各国のエネルギー事情、産業・社会構造及び地理的条件に応じた多様な道筋を認識しつつ、それらがネット・ゼロという共通目標に繋がることを強調する。この点において、我々は、安全性、エネルギー安全保障、経済効率性及び環境(S+3E)を同時に実現することの重要性を再確認する。これに加えて、クリーンエネルギー移行のため、重要鉱物を含む地政学的リスクへの対応の重要性を強調する。このため、我々は、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクに一体的に取り組むことにコミットする。

排出削減と経済成長を実現するシステム変革

50. グリーン市場の実現:我々は、技術の進展を考慮しつつ、グリーンな製品やサービスの普及を支援するため、国際的に相互に合意されているルール、基準、及びベストプラクティスと整合的な、正確な排出量と経済データに基づいた政策アプローチを適切に計画し、実施する必要があることを強調する。我々は、市場に基づく施策、炭素価格付け、規制的手法、クリーンで持続可能な技術への投資、及びグリーン調達など、効果的に排出量を削減する、供給側及び需要側両方の措置を組み合わせることが重要であることを認識する。このような施策の推進において、我々は、民間及び公的主体両方が重要な役割を果たすことを強調する。

51. バリューチェーン全体での排出削減を実現する視点:我々は、気温上昇を 1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるために、様々な主体による、即時、迅速かつ持続的に自らの及びバリューチェーン全体におけるGHG排出を削減するための継続的な努力の重要性を強調し、優先する。我々は、民間セクター含めポジティブな気候行動を更に奨励し、事業者が、自らの及びバリューチェーン全体におけるGHG排出のネット・ゼロへの道にコミットすることを奨励する。我々は、特に民間のネット・ゼロ・プレッジの信頼性を含め、非国家主体のネット・ゼロ排出コミットメントに関する国連ハイレベル専門家グループの作業を認識する。また、ある系における脱炭素ソリューション提供による、ある事業者による他の事業者の排出削減への貢献、すなわち、「削減貢献量」を認識することも価値がある(参照:附属文書「産業の脱炭素化アジェンダに関する結論」パートB)。我々は、削減貢献量に関する信頼できるメカニズムが、ソリューションの展開を加速するための資金を動員し得ることに注目し、持続可能な開発のための経済人会議(World Business Council For Sustainable Development)が、3月に発表した削減貢献量に関するガイダンスの初版を、削減貢献量の主張に関する議論への民間セクターの貢献として注目する。G7産業脱炭素化アジェンダ(IDA)に関する結論で示された原則に沿って、消費者及び企業、投資家に効率的な排出削減を加速化するための力を与え、また、不適切に用いられるリスクを低減するため、我々は、様々な主体による環境パフォーマンスに関する主張が、信頼性、比較可能性、検証可能性を有するべきであることを強調する。

52. 炭素市場及び炭素価格付け:我々は、ネット・ゼロへの転換を促進し、費用効率の高い排出削減を推進し、資金フローとパリ協定の長期目標との整合性を高め、持続可能な経済成長を促進するための重要な措置として、炭素市場及び炭素価格付けが極めて重要な役割を果たすことを再確認する。我々は、ネット・ゼロへの転換において、誰一人取り残さないような形で、こうした施策を設計・実施することの重要性を強調する。IPCC 報告書では、炭素税や排出権取引から生まれる収益を低所得世帯の支援に利用する等のアプローチにより、炭素価格付けという手段の公平性や分配への影響に対処することができると言及されている。我々は、G7を超えたパートナーと、炭素市場と炭素価格の野心的な活用を拡大することに取り組む。

53. 需要サイドの行動:IPCCの第6次評価報告書(AR6)統合報告書の見解知見によれば、需要サイドの対策と新たな最終用途のサービスの対策提供により、最終用途分野部門における世界のGHG排出量をベースラインシナリオと比較して2050年までに40~70%削減することができ、また、政策、インフラ、及び技術に支えられた社会文化的な選択肢、行動やライフスタイルの変化は、最終ユーザーが複数の相互利益を伴う低排出量集約型が低い消費への移行を支援することができる。インフラの利用、設計、建築物の利用、最終使用技術の採用、及び消費者の選好などの需要サイドの変化を促進するためには、産業界やステークホルダーへの適切なガイダンス、及びより良い排出関連情報、適切な規制及び価格シグナルの提供を通じ、消費者の意識を高め、彼らの選択を支援することが重要である。我々は、デジタル化や消費者の選好に影響を与えるようなインセンティブの増加を含め、低炭素及びゼロ・エミッション製品やサービスの開発、及び省エネルギー達成を促進するための政策手段を拡充する。効果が高く、社会的に公正な施策を立案するためには、企業、地方自治体、社会団体、若者、及び市民と協力し、知識や経験を共有することが重要である。したがって、我々は「脱炭素で豊かな暮らし(ウェルビーイング)のためのG7プラットフォーム」を設立し、我々の気候目標に沿った持続可能な消費者の選好を奨励することに貢献するイノベーションのための官民パートナーシップの加速を目指す。我々は、低炭素及びゼロ・エミッション製品やサービス、及び需要サイドの政策に関する経験や優良事例を共有することで、他者を支援する。

54. イノベーション:国際エネルギー機関(IEA)は、世界のエネルギーセクターのための2050年ネット・ゼロ・ロードマップにおいて、2030年までの二酸化炭素排出量削減の大部分は、現在すでに市場に出ている技術によるものであるものの、2050年までに世界のネット・ゼロを達成するために必要な排出削減量のほぼ半量は、まだ大規模に商業化されていない技術によるものとなると推定している。従って、我々は、経済成長と高賃金の雇用創出を支援しながら脱炭素化を推進するために、技術の商業化とイノベーションを加速させる必要性を強調する。我々はまた、予測可能な政策、規制環境の構築、リード市場の開発、その他の新興ネット・ゼロ製品の需要を刺激するメカニズム、及び研究、開発、実証(RD&D)事業への共同資金提供等を通じ、発展してきているネット・ゼロ製品に対する需要を刺激する仕組み、及びネット・ゼロ実証プロジェクトへの共同資金提供を通じて、移行に向けたイノベーションへの民間セクターの投資を促進し、リスクを軽減する上で、政府が果たすことのできる補助的な支援する役割を認識する。我々は、これらの投資が、大規模なゼロ・エミッション技術のコストを削減し、それにより、全ての国が遅くとも2050年までに温室効果ガスネット・ゼロ排出を追求することを可能にすることを認識する。また、我々は、ネット・ゼロに向けたイノベーションと技術に貢献する、スタートアップ企業や中小企業(SMEs)の重要な役割を強調する。

55. 資金の流れを整合させ、動員すること:我々は、引き続き、サステナブル・ファイナンスを拡大し、官民及び国内外の資金の流れをパリ協定第2条1項cに沿った、温室効果ガスについて低排出型で気候に対して強靱な発展に向けた方針に適合したものにさせるための努力を倍加する。我々は、企業が信頼性のある気候移行計画に基づき、パリ協定の気温目標に沿ったネット・ゼロ移行を実行する必要性を強調する。我々は、OECDのトランジション・ファイナンスに関するガイダンスや他のグローバルなベスト・プラクティスに記載されているように、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続け、カーボン・ロックインを回避し、効果的な排出削減に基づいている限り、トランジション・ファイナンスがそういった取組みを支援できることを認識する。さらに、我々は、強力な環境整備、サステナブル・ファイナンスに関する政策や規制、革新的金融枠組や手段、ブレンデッド・ファイナンスなどの官民協力を通じて、民間資金の動員を大幅に増加する必要性を認識する。我々は、気候変動目標に沿った投資判断を可能にするため、いくつかのG7メンバーが立ち上げるために作業をしているものを含む、サステナブル・ファイナンスに関するタクソノミー等の手段の開発を歓迎し奨励する。

56. 気候関連財務情報開示:サステナブル・ファイナンスを加速させるためには、自らの排出削減量に着目し、パリ協定目標に沿った移行計画を含む気候関連情報の開示を、拡充することが不可欠である。我々は、市場関係者に対して一貫した、意思決定に有用な情報を提供する気候関連財務情報開示の義務化を促し、G7を超えたより多くのパートナーに、本取組に参加するよう求める。我々は、より野心的な開示要件に組込み得る、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに基づく、実用的で柔軟かつ相互運用可能なグローバル・ベースラインを策定する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の作業の重要性を強調し、気候及びその他の持続可能性に関する開示規則を実行する際に、各法域がISSB基準を考慮することを支持する。

57. 炭素市場と6条:我々は、2050年までにネット・ゼロ排出量を達成し、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるため、現在のレベルを超えることも含めた、2030 年 NDC の実施及び野心の強化に、十全性(質)の高い炭素市場が果たし得る役割を強調する。排出を回避、削減し、除去を増加させるための対策は依然として不可欠であり、炭素市場の活用は必要な排出量の削減の代替とはなり得ないことを強調しつつ、強固なセーフガードを備えた十全性(質)の高い炭素市場の活用・設計は、成果に基づく気候資金を含む官民セクター資金の動員、社会・環境の相互利益、クリーンで安全かつ持続可能な脱炭素技術の展開、さらには自然を活用した解決策(NbS)に対する投資において重要な役割を持つ。第6条4メカニズムのクレジット、承認、透明性、報告、レビューと追跡、及びインフラを含む第6条ガイダンスと規制の実施は、パリ協定に基づく炭素市場に、環境十全性を確保し持続可能な開発を促進する強固な枠組みを提供する。環境十全性を確保しつつ炭素市場の発展を促進させるため、我々は、添付のとおり「十全性(質)の高い炭素市場の原則」を採択し、炭素市場プラットフォームの議論を通じて経験を共有することを含め、カーボンクレジット市場において、その実施を促進する。第6条の強固で野心的な実施のための能力構築を強化するため、我々は、関心のある締約国に対し、報告を含む制度的取決めの策定、及び野心を支えるような協力的アプローチを確保する能力構築プログラムを実施するUNFCCC事務局の役割の重要性を強調する。我々は、第6条実施のための国家戦略を策定する際のホスト国を支援することの重要性を強調する。さらに、我々は、「パリ協定6条実施パートナーシップ」も含めて、能力構築に関連する様々なイニシアティブ間の国際協調の促進に協力する。パートナーシップにおける持続的な活動を提供するため、我々は、第6条に関する能力構築を支援するパートナーシップの事務局として、「6条実施パートナーシップセンター」を設立する日本のイニシアティブを歓迎する。

58. 共同の行動:我々は、国の状況を考慮して、多様かつ現実的な道筋を通じたネット・ゼロGHG排出への移行を支援することを含め、排出削減を加速するために、共同の行動、及び特にG20 の途上国及び新興国の関与が極めて重要であることを再確認する。特に、我々は、イノベーションのための、クリーンで再生可能なエネルギー解決策の開発、実証、普及の取組やその他の取組を支援するものを含む、分野別、課題別及び地域別イニシアティブが、本移行に重要な役割を果たすことを認識する。我々は、ブレイクスルー・アジェンダ、気候クラブ、クリーンエネルギー閣僚会議(CEM)、ミッションイノベーション(MI)などの包括的なイニシアティブと、これらのイニシアティブによる成果を歓迎する。ブレイクスルー・アジェンダについては、署名国は電力、運輸、鉄鋼、水素、農業のブレークスルーにまたがる2023年の優先行動に関する考えを共有した。我々は、建築/セメントのブレークスルーの立ち上げに向けた進捗を認識する。クリーンエネルギー閣僚会合/ミッションイノベーションでは、昨年9月にピッツバーグで開催された第13回クリーンエネルギー閣僚会合と第7回ミッションイノベーション閣僚会議の共同開催であるグローバルクリーンエネルギーアクションフォーラム(GCEAF)で、クリーンエネルギーの研究開発促進に関する議論が行われ、本年インドで開催予定の第14回クリーンエネルギー閣僚会合と第8回ミッションイノベーション閣僚会議で議論を進めることを期待する。我々は、分野/課題別イニシアティブとして、グローバル・メタン・プレッジ、国際航空気候野心宣言、エネルギー効率化ハブ、国際水素・燃料電池パートナーシップ (IPHE), ゼロ・エミッション・ビークル移行協議会を歓迎し、 また、都市気候金融リーダーシップ同盟(CCFLA)、気候投資基金の産業脱炭素化プログラム、エネルギー管理行動ネットワーク(EMAK)、ファースト・ムーバーズ・コアリション、建設・建築部門におけるグローバルアライアンス(Global ABC)、グローバル・カーボンプライシング・チャレンジ、産業高度脱炭素化イニシアティブ(IDDI)、国際メタンガス排出量観測所(IMEO)、化石燃料由来の温室効果ガス削減に関するエネルギー輸入者と輸出者の共同宣言、鉱物安全保障パートナーシップ、ゼロ・エミッション中・大型車に関するMOU、石油とガスに関するパートナーシップ2.0(OGMP2.0)、脱石炭同盟(PPCA)、Super-Efficient Equipment and Appliance(SEAD)、ネット・ゼロ政府イニシアティブ、Greening Government Initiative を認識する。我々は、公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)のような地域的及び世界的なアウトリーチを行うイニシアティブを歓迎し、南アフリカにおける投資計画の採択、及びそれぞれG20 バリサミット及び2022年12月にそれぞれ立ち上げられたインドネシア及びベトナムにおける JETPs の進展を歓迎する。我々は、JETPsの迅速な実施に向けた努力を継続することにコミットする。我々は、アジア・ゼロ・エミッション共同体(AZEC)構想、2050パスウェイ・プラットフォーム、ネットゼロ・ワールド(NZW)など、世界各国の脱炭素化とエネルギー移行を支援するために、単独で、あるいは他者とのパートナーシップで行う取組を認識し、1.5°Cへの道筋に整合したこれらのイニシアティブを通じた対応の重要性を強調する。

59. 気候クラブ:我々は、G7首脳が設立した開放的、強調的かつ包摂的な気候クラブを、国際的なパートナーと協力して進めることを期待する。気候クラブは、大幅なセクター別の産業の脱炭素化を実現するための条件を整備することで、経済の脱炭素化に向けた世界の努力を支援する。気候クラブの合意した範囲内で、我々は、特にリード市場を設立したり、自主的な協力とパートナーシップのためのプラットフォームを提供したりすること等により、時間をかけて、脱炭素化された産業生産を既定のビジネスケースとすることを期待する。

60. カーボンリーケージ:緩和政策の野心向上が急務である一方、他の要因の中でも気候変動政策の野心が一層多様になっていくにしたがって、カーボンリーケージのリスクが増大する可能性がある。我々は、排出集約度が、カーボンリーケージのリスクに対応する手段を実施するための重要な要素となっていることを認識する。また、我々は、そのような手段が、規制、税制、炭素市場及び炭素価格付けなど、各国が実施する多様な気候緩和政策アプローチを十分に考慮し、WTOルールや原則との整合性を維持し、貿易関係を支援し、世界の排出削減に貢献するべきものであることを強調する。また可能な限り、我々は、我々のリーケージ・リスクの評価とそれを軽減するための戦略を共有することも含め、潜在的な国際摩擦を軽減するよう努める。

61. メタン:我々は、2030年までにメタン排出量を削減するための更なる行動をとることの緊急性を強調する。我々は、グローバル・メタン・プレッジに沿って、共同で2030年までに世界の人為的メタン排出量を2020年比で少なくとも30%削減するために、国内での行動を起こしたり、他の国々と協働するという我々のコミットメントを再確認する。我々は、特に廃棄物、農業及びエネルギー部門において漸進的な行動をとり、メタン排出を削減するための国家行動計画、政策及び規制を確立することの重要性と、世界レベルでの人為的メタン排出データの収集、調整及び検証を含む、国家排出インベントリを通知するための排出量の測定、報告及び検証の継続的改善の重要性に注目する。我々は、化石エネルギー部門が、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続け、また、気候の転換点に達する可能性を減らすために、最も急速で、最も大幅な排出削減を達成しなければならないことを認識する。我々は、石油、ガス、石炭のバリューチェーン全体でメタンやその他のGHG排出量の測定、監視、報告、検証のための国際的に整合性のあるアプローチを開発し、最小化、フレアリング、ベント、利用可能な最善の漏洩検出及び修復解決策と基準の採用など、GHG排出を最小限に抑える国際市場を創造するために関係者と協力する。この国際的に整合性のあるアプローチは、貨物、ポートフォリオ、オペレーター及び地域レベルで排出データの正確性、利用可能性、及び透明性を改善することを目的とし、強固なデータ収集と報告を支援する独立した検証等、認められたプロトコル、標準、及びツールの検討を含む。我々は、また、化石エネルギーの生産、消費、及び国際取引から排出されるメタンやその他のGHG排出を削減するための政策、施策、及び業界の取組の策定を支援する。我々は、開発金融パートナーと協力し、途上国におけるメタン削減への支援強化に努める。

62. HFCs及びその他の非CO2気候汚染物質:我々は、モントリオール議定書のキガリ改正を締結していない全ての国に対し、同改正を批准するよう求める。我々は、少なくともキガリ改正に沿って、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の生産量と消費量の段階的削減を継続する。我々は、モントリオール議定書多数国間基金を通じて、HFC消費量の削減とHFC段階的削減に向けたエネルギー効率の向上を促進するための早期行動のための強固な行動を支援する。我々は、HFC排出量のさらなる削減と、新たに導入される省エネルギー冷暖房システムの便益を最大限に活かすため、機器の安全性を確保しつつ、冷媒選択と機器のエネルギー効率に同時に対応する。モントリオール議定書とは別に、我々は、フルオロカーボンの適切なライフサイクル管理を進めること、特に機器に含まれる冷媒を含むフルオロカーボンバンクに対応することの重要性を強調する。我々は、更に、代替物や対策の適用可能性を考慮しつつ、低コストで利用可能な技術を導入することで、アジピン酸、硝酸、化石燃料の燃焼によるものなど産業からのN2O排出を削減するための努力をしたり、N2O排出を抑制し肥料不足に対処するために肥料の使用効率を高めたりする等、亜酸化窒素(N2O)の排出を軽減するための協調的な努力に注力する。我々は六フッ化硫黄(SF6)の排出・漏えいの削減のため、特にG7内外の電力部門において、その代替製品の利用可能性と適用可能性を考慮しながら、新たな機器におけるSF6の使用の削減やその廃止に向けた検討を行うこと、また、規制や標準化によって既存のSF6スイッチギアの適切な保守や廃棄管理を確保することなどの様々な措置をとる。我々は、SF6の更なる廃止を支援するための送配電技術の開発について、各国内で、及び各国間の協力において、その機会を追求する。我々はまた、ブラックカーボンを含むその他の温暖化物質についても、高い地球温暖化係数を有していること、気温上昇を1.5°Cに抑えることを射程に入れ続けるためには、その緩和が重要であることから、排出・漏えいを削減する行動をとる。