最近、足腰が悪くなり始めた母。

 
記憶はまだしっかりしているけれど
それでもいつ何が起きても、もう決しておかしくない年齢。
 
「今のうちにどこか連れていって」
という母のリクエストを叶えるべく、どこにしようかと考えた結果
思いついたのは、
私が小学生の時ずっと家族旅行に来ていた旅館に泊まることだった。
 
 
 
 
40年ぶりに訪れた旅館は、変わっていないところと、
リニューアルされているところとあって
 
あの頃の思い出が一気によみがえってきた。
その思い出を思い出すままに話し
 
家族みんなで
「え?そんなことあった?」
と驚いたり
「あれ?こうじゃなかった?」
と記憶違いをすり合わせたり
「あ~!思い出した!」
と一致させて盛り上がった。
 
 
私は家族に対して
長年いろいろな不満や苦しさを
ずっと抱えていたけれど、
 
あの頃は、みんなそれぞれ
それしかできなかったということ
私だけでなく、それぞれが
葛藤や迷いや不安を抱えて
それでもここまで必死に生きてきたということ
 
そんなことに気がついた。
 
 
孫がはしゃぐ姿に目を細める母を見て
 
ああ、今までも、何一つ間違っていなかったんだ。
そして、本当はもう全て終わっていたことだったんだ。
 
そう思えた旅行だった。