シュッシュポッポ、シュシュポッポ・・・・ | Pure Wings Label

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音楽を愛する皆様はぜひ足をとめて耳を傾けてみてください。
「音楽」に関する色々な思いを持つ皆様、
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今、スタジオの中・・・

スタジオは自宅内にあり、
音が漏れないように、吸収材が入っている為、とても静か・・・。

今日は雪も降っているから、普段よりも一段と静かな気がする・・・。
まだ、私の街は白く積もってはいないが、空を見ると無数の雪が
まるで命を持っているかのように風であちこちに飛んで落ちてくる。

雪を見ると思い出すことがある。

小さい時に妹と手を繋いで、雪の中に買い物に出かけた。

二人とも手袋を持っていなかった。

私が小学校2年生、妹が幼稚園の時・・・

その日はとても雪が降っていた。
数日降っていた雪は、小さかった私の膝下まであったような気がする。

買い物をするものを頼まれ、私は妹と外にでた。

雪が降っていた。

以前はコンビニなどなかったし、デパートやスーパーも近くには無かった為、近所の商店街へ・・・

しかし、雪のために殆どの店が閉まっていた。

私は妹を連れ一軒一軒のお店へ、目的のものを見つけるため探し回った。

探し回って30分ほどすると、妹がぐずりだした・・・

「早くおいで。」妹に声をかけ、私は父に頼まれたものを早く探さねばと先を急いでいた。

「足が冷たい。」妹はそういうと、その場から動かなくなった。

「早く行かないと、怒られちゃうよ。」
妹をせかすが一向に動かず、その場ですねてしまった。

困った私は、妹をおんぶした。
妹は喜んで私の背中に乗ったが、足元に積もる雪で前へ進むことが出来ず。

妹は「おんぶしてくれないとヤダ!」と言い、
私は何度も妹をおんぶするが、歩こうとすると雪の中に膝をついて転んでいた。

コートも濡れてしまっていた。

体が冷えてしまっていた。

そこで考えたのは・・・

「ねえ、○○ちゃん(妹の名前)、シュッシュポッポで行かない?」

妹:「ヤダ。足も手もつめたいもん。」

私:「あったかいよ。ホラ!」

私のコートのポケットの中に妹の両手を入れ、私は商店街の中を
「シュッシュポッポ、シュッシュポッポ・・・」と、言いながら
父に頼まれたものを探し回った。

妹はどんな顔をしていたのかは、わからない。
もしかしたら嫌だったのかもしれない。

すでに日も暮れ真っ暗になってしまったが、目的のものは見つからなかった。

私:「全部見たけどなかったね。シュッシュポッポしながら帰ろうか。」

妹:「うん」

私:「ママに怒られるかもしれないね。」

妹:「うん」


真っ暗な道を、「シュッシュッポッポ、シュッシュポッポ・・・」と言いながら、妹と雪の中を進んでいった。

足も手も冷たさを通り過ぎ、痛みも感じず痺れたように何も感じなかった。

ただ、妹が私の背中にくっついていたので、とても暖かく感じられた。





家につくと、父は居間に黙って座っていた。

母が「早く家に上がりなさい!」と私たちを、居間にすぐにあげてタオルで頭や手を拭いてくれた。

靴の中もすでにグッショリと濡れてしまっていた。

歯はガチガチとなり、体の震えが止まらなかった。

母:「こんなに、冷え切ってしまって・・・可哀想に・・・」

私は黙っていた。妹は無邪気に居間を走り回っていた。



私は父から渡された、お金を父の前のコタツに置いた。

私:「お店閉まっていて、ビール買ってこれなかった。ごめんなさい。」

父:「・・・・・」

父は厳しい顔をしていた。

母:「じゅんこの手が真っ赤になってしまって・・・手も足もしもやけができてしまったじゃないの・・・」

母は涙ぐんでいた。




私は、小さいながらわかっていた。

父が、自分で自営業をはじめたとき、遠い親戚である近所のおじさん、おばさんが、父のトラックに色々な妨害をしていたこと。

ブレーキホースを切られた、タイヤをパンクさせられたなどなど・・・

始めは父も母も、同じような仕事をするその人たちを信頼し色々相談をしていたが、父の仕事が順調に進む中、その人たちが行う妨害に頭を悩ませていた、父と母・・・・

普段はお酒など飲まない父だった。
温和で優しく、子煩悩な父親だった。

しかし、雪が数日降り仕事にもいけない日々が続いた、その日に・・・

父は、朝からお酒を飲んでいた。

私は、父の様子がおかしい事に気が付いていた。
お酒が無くなり、私に買いにいくようにと言った。

まだ小さい妹が、家の中でストレスを発散するかのように、はしゃいでいたので、父は妹も連れて行くようにとわたしに言った。


4~6時間だっただろうか・・・
雪の中を彷徨い歩いた。

その時、私は父にビールを買っていってあげたかった。

辛い顔をして、座っている父が可哀想でならなかった。



普段は、とても厳しい母が、私の両手を手で包み、息をかけて手を温めてくれていた。
すごく嬉しかった。
ストーブの前に、手をかざしているときも、両手で手をこすっていてくれた。


次の日、私の足と手は紫色に腫れていた。
おばあちゃんが、洗面器にお湯とお水を用意してくれ、
「これでしもやけが治るんだよ。」と手当てをしてくれた。

母が妹に、「○○ちゃんは大丈夫だったんだね。」というと、
妹は、「○○は強いから!」と変身ポーズをとっていた。

私は、商店街の中を「シュッシュポッポ」しながら歩いた事を母に言わなかった。

言うと、何故だか父が母に怒られてしまいそうな気がしたからだ。