恋の期待

 

 

 

 

さっきまで立ち止まってばかりだった

20歳くらいの女の子が、

ものスゴい勢いで登って行きます。

 

 

ずっと見守って、

一緒に登ってくれた彼が、

今度は、私と、仲良くなったように、

彼女には、見えるんです。

 

 

きっと、彼女も、

恋の予感に期待していたんです。

 

 

なかなか登らないでいたのも、

彼が待ってくれるのが、

面白かったのかもしれません。

 

 

そのお蔭で、

私は、彼に追いつけました。

 

 

もっとも、私は、私で、

彼が、彼女のあとを、

追いかけて登るのかと、

緊張しています。

 

 

落ち込むに決まっているからです。

 

 

心配して、彼を見ていると、

私を見て、苦笑いします。

 

 

あの登り方も、彼女の思いです。

 

思いが、現れているでしょ?

 

何かが気に入らない。

 

仲良くしようって気持ちがない

 

 

でも、私には、

彼女の気持ちが、わかります。

 

 

焼き餅を焼いていることを

わかってほしいんです。

 

 

追いかけて来てほしいんです。

 

 

そんな女心って、

男の人には、わからないんでしょうか?

 

 

追いかけてあげないんですか?

 

 

彼が笑います。

 

 

 

 

そのうち、その辺で、

引っ繰り返ってますよ。

 

あんな登り方したら、

バテるに決まってますから

 

 

女心って、男の人には、

伝わらないんですね。

 

 

でも、正直、

私は、ほっとしています。

 

 

でも、彼女は、若くて、

あんなにカワイイのに、

私は30歳で、

アトピー性皮膚炎です。

 

 

爛(ただ)れた皮膚の化け物です。

 

 

きっと、どこかで、

この恋の期待は捨てなければいけません。

 

 

彼女がバテて、

引っ繰り返っていて、

彼が介抱するときかもしれません。

 

 

引っ繰り返っていたって、

カワイイ子は、カワイイんです。

 

 

むしろ、わざと、

引っ繰り返っているかもしれない。

 

 

それも、女心です。

 

 

この捨てなければいけない恋の期待を、

捨てられないでいる私の心も、

女心なんです。

 

 

 

 

ー つづく ー

 

 

 

 

男なんて、雑ですから、

女心なんて、わかりませんウインクラブラブ