彼女と僕は、レジを分解し始めます。
ところが、
プラスのネジと、
マイナスのネジとが、
交互に、
使われています。
「・・・・これ、どうして、
全部、プラスのネジにしなかったんだろ?」
「プラスを支えているのが、
マイナスだからよ」
「支えているって?」
「プラスだけでは、
組み立てられないってこと」
「でしたら、僕、
プラスドライバーを持っているんで、
プラスのネジをはずします」
「じゃ、私は、マイナスね」
彼女が、
マイナスのドライバーを振って、
見せるんですけど、
しゃがんで、股を開いているので、
そっちの方に、びっくりです。
そのうえ、
やっぱりヘンな声を出すんです。
マイナスのドライバーを回すとき、
力がいるので、
声が出てしまうのかもしれません。
小さい声なんですけど、
艶(なま)めかしいです。
裸でいるので、余計です。
さらに、プラスのネジと、
マイナスのネジとが、
入り組んでいるので、
僕らも、どうしても、
絡み合う格好になります。
僕は、彼女の肌に、
火照(ほて)ります。
引かれるんです。
まるで、プラスが、
マイナスに引かれるように、です。
彼女が、
睫毛(まつげ)が触れて来そうな距離で、
見つめます。
「マイナスって、
壊れるイメージがあるでしょ?」
「・・・嫌なことが起こったときのことを
言っているんですか?」
でも、僕は、
彼女に、近寄られすぎて、
ポーっとなっています。
「でも、誤解なの」
「どんな誤解?」
「壊れるんじゃなくて、
戻るのよ」
「戻る?」
「あなただって、眠るでしょ?
ずっと起きていることなんて、
ムリでしょ?」
「・・・・ムリですね」
「ところが、すべては、
プラスとマイナスでできているのに、
マイナスを悪いことだと、
誤解しているの。
マイナスを、
欠けることだと、思っているのよ。
それで、補(おぎな)おうとするの。
だから、
何でも自分のものにしたがるの。
このレジのように、ね」
レジを叩いて見せるんですけど、
しゃがんで、
片膝をついて、
僕の目の前で、
やっぱり股を開いているんです。
ー つづく ー
そこが、
マイナスのネジのようにも見えます![]()
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