小説:9話 小さくなって

 

 

 

    

 

 

 

 

 

言葉を失った僕は、バイクを止めます。

 

 

荷物をおろすようにして、

彼女を、バイクから、おろします。

 

 

でも、ほとんど人が通らない、

田舎道です。

 

 

そのうえ、日暮れです。

 

 

・・・僕が、ここに、

あなたを置いて行くのも、

あなたが

思考しているってことですよね?

 

 

青ざめて、彼女がうなずきます。

 

 

・・・私に、怖れがあるから

 

 

現実が思考なら、自分で帰れますよね?

 

帰れたって、思考すればいいんですから。

 

そうでしょ?

 

 

彼女が、悲しく首を振ります。

 

 

怖れって、

そんな生やさしいものではないのよ。

 

その怖れを克服するために、

現実は思考だと考える必要があるの

 

 

どう考えるかは、勝手だけど・・・

 

現実こそ、

そんな生やさしいものではないですよ

 

 

彼女は、砂利道に倒れたようにして、

僕を見上げます。

 

 

私が、こんな身体で生まれてきたのは、

これまでの人間を超えるためなの。

 

私は、脚が悪いから、

この現実からは逃げられない。

 

だから、超えるの。

 

超えるために、現実は思考だと考えるの

 

 

僕が、あなたを、

ここに置いて行くのは、

現実は思考なんかじゃないって

わかってもらいたいからです。

 

悪く思わないでください

 

 

悪くなんて、思わないよ。

 

私がしなくてはいけないのは、

私は、

まだまだ現実は現実だと信じているって、

気づくことだもの

 

 

僕には、馬鹿げて聞こえます。

 

 

それで、バイクに跨がると、

彼女を置いて、

帰ります。

 

 

バックミラーに映る彼女の姿が、

小さくなって、

消えて行きます。

 

 

ー つづく ー



彼女は、だいじょうぶでしょうかショボーンラブラブ

 

 

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