冬の終わり
近くに、梅林があって、花が咲いた頃だろって、お弁当を持って、見に行きました。
ところが、紅梅も、白梅も、まだ3分咲きです。
それでも、暖かな早春の日で、お弁当を食べ終えると、紅梅の花の下、芝生の上に寝転びました。
梅の花に、冬の終わりが、香ります。
ところが、誰かが、寝転んでいる僕の顔を、覗き込みます。
紅い着物を着た、若い女の人です。
あわてて、上半身を起こしました。
ところが、その女(ひと)が、僕に、古びた巻物を手渡そうとします。
「これには、この世界の滅亡と、それを回避する方法が記してあるの。
あなたに、あげるわ」
「すごいもの、持っているんですね?」
「だから、あげたいのよ」
「どうして、僕にくれるんですか?」
「あなたなら、読めると思って」
僕は、ただ、仲良くなりたくて、巻物を受け取りました。
巻物は、太さが5cmくらい、長さが20cmくらい、ずっしりとしています。
厚い木の皮のようなもので、巻かれてあります。
ところが、くるくる回してみても、まるで梅の木の枝みたいで、継ぎ目がありません。
「これ、どうやって開くんですか?」
そう聞いて、顔を上げると、目の前にあるのは、紅梅の木だけです。
キョロキョロしたんですけど、あの女の人は消えていたんです。
ー つづく ー
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