どうつながるのか?

 

 

 

 

   

 

 

  お婆さんが、わたしに、語(かた)ります。

 

 「私の母の口癖(くちぐせ)が、「こわいねぇ~」だったの

 

 

 わたし、隣りの家のお婆さんが、何かくれるって言うんで、来たんです。

 

 

 わたしのママが、「隣りのお婆さんには、身寄りがないんで、可愛がっていたあなたに、遺産をあげたいって言うんじゃないかしら」って、言うんです。

 

 

 なんでも、以前に、老人ホームに入居したいって、相談されて、ママが調べたら、入居費用が高額で、さんざん迷ったあげく、「やっぱり、サキちゃんに(わたし)会えなくなるのが淋しいから、サキちゃんに残そうかしら」って、話していたって言うんです。

 

 

そういう遺言を書いておくから」とまで言ったらしいんです。

 

 

 わたしが、まだ幼くて、毎日のように、隣りのお婆さんの家に、遊びに行っていた頃の話です。

 

 

 数年ぶりに会ったお婆さんは、一回(ひとまわ)りも、二回(ふたまわ)りも、小さくなったみたいです。

 

 

夏でも、すべての窓を閉め切って、鍵を掛けるの。

 

 

 エアコンなんてない頃よ。

 

 

 まるで蒸し風呂だったわ。

 

 

 母は、窓から誰かが入って来るって、思っていたらしいの

 

 

 わたしは、わたしで、その話が、遺産と、どうつながるのか?って、聞いていました。

 

 

とにかく、ニュースを見ても、何を見ても、「こわいねぇ~」しか言わない人だった。

 

 

 母は、心を病んでいたのかもしれなかったんだけど、私は、気づけなかった。

 

 

 弟が、ひとり、いたんだけど、働くようになって、心を病んでしまうの。

 

 

 精神病院にも入院するようになって、母も、そうかも・・・って、気づいたの

 

 

お婆ちゃんのお母さんは、入院しなかったの?

 

 

 お婆さんが、笑います。

 

 

信じられないくらい、がむしゃらに働くだけだったから。

 

 

 父と、飲食店をやっていたんだけど、父は、「母さんがいれば、誰も雇う必要がない」って言っていたくらいなの。

 

 

 でも、母を働かせていたのは、「こわいねぇ~」だったの。

 

 

 きっと、こわくて、仕方なかったのよ

 

 

 わたしは、首を傾げました。

 

 

 何の話を聞いているのか、わからなかったからです。

 

 

  ー つづく ー

 

 

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