シーソーのように
彼女、人が行き交う道路で、倒れ込んだまま、泣いているんですけど、僕は、彼女のあまりのカワイクなさに、近寄れないでいます。
でも、彼女がカワイクないのは、僕が、絵が下手なせいです。
だからって、責任を取るのも、嫌です。
それで、僕、卑怯にも、逃げ出したんです。
ところが、彼女、泣きながら、追いかけて来ました。
醜さって、迫力です。
怖いです。
遠くに自転車が駐めてあったんで、あそこまで走って、なんとか、自転車で、逃げようと、思いました。
ところが、近づいてみると、自転車が大きいんです。
身長が3mくらいないと、乗れないような大きさです。
それでも、僕は、逃げたい一心で、ペダルに足を乗せて、漕ぎ出そうとしました。
子供が、親の自転車に乗るような感じです。
サドルにお尻を乗せないで(足が届かないので)、乗ろうとしたんです。
ところが、バランスを崩して、転んでしまいました。
そこへ、彼女が追いついて、僕に言うんです。
「これ、ひとりじゃムリよ。
私が、こっちのペダルを漕ぐから、あなたは、そっちのペダルを漕いで?」
それで、僕らは、右、左に、分かれて、ハンドルにつかまって、それぞれのペダルを漕ぎました。
まるで、シーソーのように、上下します。
それだけでも面白いんですけど、自転車が凄いスピードで走るんです。
僕は、自転車って、こんな乗り方ができるって、知らなかったので、左右でバランスを取って、走ることに、感動しています。
まるで遊園地の乗り物のようです。
それで、僕らは、走りながら、大笑いしていたんです。
ー つづく ー
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