4話 逃げましょ?
ここまでのあらすじ
男の人から、大きな花束をもらったんですけど、花束の中には、山猫が入っていました。
そのあと、彼と、レストランに入ったんですけど、そのシェフが、死神でした。
死神は、大きな鎌で、彼の首を、掻き切ったんです。
たぶん、死神のシェフが、料理しているのは、彼の頭です。
そんな料理、見たくないです。
それで、首のない彼に、言ったんです。
「今のうちに、逃げましょ?」
それで、私は、ドアを開けて、逃げたんですけど、彼は、頭がないんで、ドアが見えなくて、壁に当たって、引っ繰り返っているんです。
私は、あわてて、戻ると、彼の手をつかんで、ドアから、逃げました。
ところが、私たちを、追いかけてくるのは、花束に入っていた、あの山猫でした。
豹(ひょう)くらい大きな山猫です。
きっと、レストランから、ご馳走が、出てきたと、思っているんです。
山猫の駆ける速さが、凄まじいです。
すると、首のない彼が、立ち止まったんです。
私は、走っていたんで、手が離れて、ふらつくと、転びました。
彼が、そんな私を、振り返って見ているらしいんですけど、頭がないので、わかりません。
きっと、彼は、自分が食べられるために、立ち止まったんです。
もちろん、私を守るためです。
彼が食べられている間に、私を逃がそうとしているんです。
私は、叫びました。
「ダメ!」
でも、山猫が駆けてきて、彼に飛びかかったのは、あっと言う間でした。
私は、悲鳴をあげました。
ところが、山猫が彼に飛びかかると、山猫と彼は、転げ回って、じゃれ合っているんです。
山猫は、彼が、大好きらしいんです。
ー つづく ー

