3話 何か、面白いの?
ここまでのあらすじ
知らない男の人から、大きな花束を贈られたんですけど、その花束には、山猫が入っていました。
そのうえ、カンガルーまで入っていたんです。
私は、彼の手首をつかんで、走っていました。
彼が、私に引っ張られて、走りながら、その手の指で、道の先を指さしています。
そこには、気味の悪い男の人が、死神が持つような大きな鎌を、肩に担(かつ)いで、立っていたんです。
それで、私たちは、近くにあったレストランに逃げ込みました。
ところが、レストランのシェフが、その気味の悪い男の人でした。
ゾッとするような目付きで、私たちの前に、メニューを置きます。
私と一緒だった彼は、テーブルに置いてあったナイフを、手に取ると、死神みたいなシェフに向かって、ちらつかせています。
彼は、私を守ろうとして、ナイフを、シェフに向けているんです。
ところが、シェフは、本物の死神だったんです。
「彼の方は、お決まりのようですね。
それでは、さっそく、料理しましょう」
そう言うと、大きな鎌を、ゆっくりと、彼の首に回しました。
私は、神経まで凍って、身動き、ひとつ、できません。
死神は、彼の首を掻き切ると、その首を持って、厨房(ちゅうぼう)へと戻って行きました。
私の前には、首がないまま、彼がテーブルの席に、座っています。
ところが、首のない彼が、身振り、手振りで、私に、何かを、伝えようと、し始めたんです。
テーブルや、自分の太腿(ふともも)を叩いて、たぶん、大笑いしているんです。
でも、首がないんですから、私には、気持ち悪いだけで、笑えません。
彼は、椅子から、立ち上がると、スッキプしたり、跳ねたり、お腹を抱えたりしてみせるんです。
「・・・・・もしかして、何か、面白いの?
頭が、ないのに?」
彼は、うなずいているらしいんですけど、頭がないんで、ピクピク震えているだけなんです。
ー つづく ー

